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情報BOX:暗号資産が急速普及、発行急がれる中銀デジタル通貨

[ロンドン 15日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)が有力な決済手段として地位を確立しようとする流れが加速している。こうした中、主要中央銀行に対しては、中央銀行デジタル通貨(CBDC)発行計画を前進させ、従来の貨幣制度が民間によって脅かされる事態を防ぐ圧力がさらに強まりつつある。

2月15日、暗号資産(仮想通貨)が有力な決済手段として地位を確立しようとする流れが加速している。写真はビットコインの模型と米ドル紙幣。2020年1月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

最大の仮想通貨ビットコインは、かつて金融取引の片隅にひっそりとたたずんでいたが、今や大手の投資家や企業、あるいは一部の自治体さえも積極的に受け入れる存在になった。電気自動車(EV)メーカーのテスラがビットコインへの15億ドル(約1580億円)の投資を表明すると、ビットコイン価格は過去最高を更新して5万ドルの大台に迫った。フェイスブックが主導するデジタル通貨ディエム(旧称リブラ)は年内の発行を目指している。

主要7カ国(G7)の中銀は昨年10月、デジタル通貨に求められる基本的な機能をまとめたものの、その後この問題での取り組みはあまり進展していない。先週のG7財務相会議の声明でもデジタル通貨への言及はなかった。

中央銀行デジタル通貨を巡る最新の状況は以下の通りだ。

◎中央銀行デジタル通貨とは何か

文字通り、電子的な形式で発行される貨幣だ。従来の紙幣や硬貨と同じく、所有者は商業銀行を介さず、直接中銀に権利を請求できる。中央銀行デジタル通貨も政府・中銀の信用に裏付けされているため、やはり「リスクフリー」である上に、所有者はオンライン決済に利用が可能。これまで実物貨幣以外での中銀との取引は金融機関に限定されてきたが、一般に対象を広げることで、実体経済と金融システムに多大な影響を及ぼすとみられる。

◎中銀が中央銀行デジタル通貨を必要と考える理由

中銀は世界の決済システムをコントロールする力が、概して中央機関による統制が働いていない仮想通貨、あるいはディエムなどの場合のフェイスブックのような民間企業によって失われていく事態を恐れている。

そんな事態になると実体経済に金融政策効果を波及させる主な手段である通貨供給量(マネーサプライ)の調節力は弱まりかねない。実際に経済でさまざまなデジタル通貨の利用が急速に広がっているだけに、こうしたシナリオの現実味は増している。

大手機関投資家の資産管理を手掛けるBNYメロンやクレジットカードのマスターカードは先週、暗号資産取引の支援サービスを提供すると発表。米フロリダ州マイアミ市は、給与払いや納税、手数料支払いなどにビットコインの使用を認めようとする方向に動いている。

実物貨幣の使用が減少するとともに、中央銀行デジタル通貨は民間の暗号資産に代わる、より安全なデジタル決済手段になっていくだろう。

◎どのような形になるか

まだ考え方は集約されていない。スマートフォンないしプリペイドカードなどに保存されるトークン形式にして、オフライン取引を簡単にするというのが1つの案だ。あるいは銀行などの仲介機関が管理する口座に置き、当局の監督に役立て、利息を付けることができるようにする構想もある。

こうした構想はいわば暗号資産への対応策として生まれたわけだが、暗号資産を支えるブロックチェーン技術とは必ずしも連動していない。中国人民銀行(中央銀行)が発行を目指すデジタル人民元は、ブロックチェーンに頼らないという。

◎先行している中銀は

中国人民銀は、主要中銀で最初に中央銀行デジタル通貨を正式に発行することを目標としている。人民元の国際化推進や、ドルが主役である決済システムへの依存を減らすという基本政策の一環という位置付けだ。地元メディアによると、中国国営の各銀行は既にデジタルウォレットのアプリを試験導入している。電子商取引企業の京東商城(JDコム)は昨年12月、中国のオンラインプラットフォームでは初めてデジタル人民元を受け入れると明かした。

欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(BOE)は中央銀行デジタル通貨に関する市中協議文書を公表したが、ECBのラガルド総裁は先月、「デジタルユーロ」を実際に発行するのはまだ何年も先になると述べた。日銀と米連邦準備理事会(FRB)は後発組に属する。

スウェーデン中銀は「eクローナ」の実証実験を開始しており、カナダ中銀も発行に向けた作業のスピードを速めている。

主要国以外の小国も前に進みつつある。バハマは昨年、世界で初めて全土で中央銀行デジタル通貨を導入した。

◎付随するリスクは

中銀が心配しているのは、実物貨幣から中央銀行デジタル通貨への大規模な移行が起きた場合、商業銀行の空洞化が進み、彼らにとって安価で安定的な資金調達手段となっている個人預金などを失う展開だ。金融危機などに際しては、顧客が安全性の点から中銀が保証する口座に資金を置きたがるのに伴って、銀行からは資金が流出しやすくなる。

そうした理由から、ほとんどの中央銀行デジタル通貨の制度設計では、個々の消費者の保有できる金額に上限を設定することを想定している。利息も保有意欲を弱める意味で低めに設定されるかもしれない。

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