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焦点:日米欧中銀、インフレ警戒せず

[フランクフルト 1日 ロイター] - 世界の主要中銀はインフレ率が上昇しても喜んで受け入れるとみられ、果敢にも早めの金融刺激策打ち切りに賭けている投資家は、ほぼ確実に肩すかしを食らうだろう。

 3月1日、 世界の主要中銀はインフレ率が上昇しても喜んで受け入れるとみられ、果敢にも早めの金融刺激策打ち切りに賭けている投資家は、ほぼ確実に肩すかしを食らうだろう。独フランクフルトで1月撮影(2021年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日銀の3行は過去10年にわたりインフレを警戒することなく過ごしてきた。今も金融緩和を継続する理由には事欠かかないばかりか、政策の枠組みを書き変え、物価上昇率が目標からオーバーシュートすることさえ容認しようとしている。

仮に中銀が動くとすれば、景気刺激策をわずかながら強化する可能性の方が高く、ユーロ圏は特にそういう状況だ。成長率が少なくとも新型コロナウイルス流行前の水準に安定的に戻るまで、借り入れコストを低位に安定させてインフレタカ派の声を無視するだろう。

オーストラリア準備銀行は既に予想外の債券買い入れオペを通告し、ECBは投資家に対し、同行の1兆ユーロに上る資産購入と戦いたくなければ利回りを押し上げ過ぎるべきではないと繰り返し警告を発している。

インフレ警戒派の主張は、いったん経済が再開すれば政府の大規模な景気刺激策によって繰り越し需要が喚起され、過去数十年見られなかった支出けん引型の物価圧力が解き放たれるというものだ。

有力エコノミストは両方の主張を精査しているものの、実際に政策を左右する人々はそろってインフレの脅威を退けているようだ。

FRBのパウエル議長は「インフレの力学は長期的には確かに変化するが、急に変わるものではない」と指摘。「財政支援策や支出の一時的拡大が(中略)、何年も続くものではない拡大が、そうしたインフレの力学を本当に変えるかどうかは分からない」と述べた。

主要中銀がいずれも2%の物価目標を達成できていない今の状況では、インフレが加速するかどうか大いに疑わしい。しかし、たとえ加速したとしても、金融引き締めを早まることの方が、出遅れるよりも害は大きいと見られている。

第1の理由は、足元の物価上昇の大半が石油価格の反発や1回限りの景気刺激策、前年同期の物価低迷によるベース効果など、一時的な要因で起きているということだ。つまり今回の物価上昇は、政策当局者が望む持続性を備えていない。

また、金融引き締めは成長の首を絞める恐れもある。最悪の場合、借り入れコストが上昇し、債務負担の重い南欧諸国や新興市場国全体では特に、債務の持続性を巡る懸念が高まるかもしれない。

最後に、FRBとECBはいずれもこの十年間、拙速に引き締めに動いた後に方向転換して信用を損なった経験があり、こうした事態の二の舞はどうしても避けたい。

<問題は雇用>

FRBが発するメッセージは、ぶれがなく鮮明だ。景気が完全に回復するまで月1200億ドルの債券買い入れを変更せず、利上げはそれよりさらに先になると表明している。

日銀とECBのメッセージも同様で、景気刺激策を長期間、おそらくは何年間も維持するとしている。

中銀3行が最も気にかけているのは雇用だ。

米国ではなお1000万人分の雇用が失われており、ユーロ圏の失業率は政府の補助金によってなんとか低く抑えられている。

FRBは既に低所得層を中心に、雇用創出への取り組みを強める方針を打ち出しており、昨年はインフレ率のオーバーシュートを容認すると明確に約束した。

ECBと日銀は雇用に関する責務を課されていないが、現在進めている政策枠組みの見直しで社会状況、特に雇用をより重視することになるだろう。

ECBは既にインフレのオーバーシュートを許すことの利点について議論している。

オックスフォード・エコノミクスのタマラ・バシック・バシリエフ氏は「労働市場は実際の経済活動に6カ月程度遅行する傾向があり、事業統合や経営破綻、レイオフの波が押し寄せるのはこれからかもしれない」と述べた。

<利回り上昇は本物か>

利回りの上昇で市場は大騒ぎだが、過度に上昇してはおらず、むしろ過度の低水準から戻っただけかもしれない。

米10年国債利回りは年初から56ベーシスポイント(bp)上昇したが、新型コロナ流行前の最低水準に戻ったにすぎない。日本の10年国債の利回りの上昇幅は14bpにとどまっている。独10年国債の利回りは依然としてマイナス0.25%だ。

ベレンベルグのエコノミスト、ホルガー・シミーディング氏は「債券利回りは超低水準から持ち直しているが、これは世界のほとんどの地域で景気が力強く回復し、企業利益が着実に増加した結果でこそあれ、これらを阻害するものではない」と指摘した。

政策当局者も利回り上昇を重くは受け止めていない。米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は、利回り上昇は心配するに当たらず、FRBの対応が必要とは思わないと述べた。

ECBの政策当局者は、利回り上昇の一部は経済の基礎的諸条件の改善を反映しており、ECBは利回りの水準について特定の目標は設けないと述べた。

一橋大学の下田知行・国際・公共政策大学院特任教授は「日銀が最近の利回り上昇に強い懸念を抱いているとは思わない」と述べた。「日銀は必要に応じて資産買い入れを増やす余地が十分にある。望ましくない利回り上昇は100%阻止できる」と言う。

(Balazs Koranyi記者、Howard Schneider記者、Leika Kihara記者)

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