July 2, 2019 / 2:33 AM / in 4 months

アングル:米国移民問題の裏にある中米「コーヒー危機」

[ラコロニア(ホンジュラス)/カモタン(グアテマラ) 27日 ロイター] - 2018年も終盤に差し掛かったころ、ホンジュラスのコーヒー農家、マリオ・ロペスさんは、故郷の経済的苦境を脱して米国に渡ろうと、コヨーテと呼ばれる密入国請負業者に代金を支払った。

6月27日、2018年も終盤に差し掛かったころ、ホンジュラスのコーヒー農家、マリオ・ロペスさんは、故郷の経済的苦境を脱して米国に渡ろうと、コヨーテと呼ばれる密入国請負業者に代金を支払った写真は4月、エルサルバドルのベルリンで、かつてコーヒー農場だった土地を眺める男性(2019年 ロイター/Jose Cabezas)

11月中旬、ロペスさんは12歳の娘を連れ、メキシコを縦断する35日間の危険な旅に出発した。コーヒーの国際価格が急落し、一生かけて取り組んできたコーヒー生産のビジネスがダメになったためだ、と、ロペスさんの妻はロイターに話した。

「夫は借金を抱えており、コーヒー生産だけでは満足に食べ物を買うこともできなくなったので、移民せざるを得なかった」と、妻のカルメン・アンディノさんは、ホンジュラス中部の町ラコロニアにある質素な干しれんが造りの自宅玄関で話した。

クリスマスの直前、ロペスさんは娘1人とともに米国に到着した。

それ以降、ロペスさんはラコロニアに残った妻と3人の子どもに仕送りを続けている。ラコロニアは、同国最大の輸出品であるコーヒーの生産が盛んだ。

「価格が今のような水準では、できることは何もない」

アンディノさんは、かつて一家を支えてくれたコーヒー農園を眺めながら言った。農園はいま、耕作する人もなく、放棄されている。

コーヒーの国際価格は5月、この13年で最低の水準まで下落した。価格はその後やや持ち直しているが、下落の主な原因はブラジルとベトナムの生産拡大だ。

ロペスさん一家の状況は、ロイターが取材した、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、そしてニカラグアから米国を目指す数十のアラビカコーヒー農家に共通したものだ。こうした国々からの移民が米国境に押しかけ、トランプ米大統領をいらだたせている。

米国の会計年度が始まった2018年10月から8カ月間で、メキシコ国境で米国への入国を拒否されたり拘束された移民の数は、すでに57万人を超え、前年度1年間を上回った。

こうした移民の大半は、中米諸国の出身だった。

高品質でエスプレッソなどに用いられるアラビカコーヒーのうち、中米は10%を生産している。コーヒー産業は、ホンジュラスの国内総生産(GDP)の約5%を占める。

コーヒー価格の下落は、米州諸国の一部最貧国の、多数の雇用を抱えた産業を直撃しており、当局者らはその影響を今も検証中だ。

<危険な旅>

「今年はコーヒーを売ることができていない。この業界で働く人は誰も利益を得られない(価格水準)だ」と、グアテマラ南部のコーヒー産地であるカモタンのコーヒー農家、ダビド・ラミレスさん(55)は言う。

2019年初め、ラミレスさんはコヨーテに2000ドル(約21万6000円)を支払い、末娘のデルミさん(17)を米国に密入国させるよう頼んだ。デルミさんは、地元では職を見つけられなかったのだ。

「コーヒー危機のせいで金がない。そのこともあり、娘のデルミは出て行った。だが彼女は、米国で病気になり、死んでしまった」

ラミレスさんは、しおれたコーヒーの木に囲まれた泥レンガの自宅前でこう話した。

ラミレスさんは今、借金を返すためにトウモロコシを栽培している。近所には、ましな未来を求めて米国へと旅立った人もいる。だがほとんどの農家は、子供たちを米国に送り出す一方で、コーヒー価格の回復を願って土地を耕し続けているという。

ホンジュラス政府は、コーヒー農家向けの経済支援と新しい機材の供与を検討しているが、業界関係者は、農家の借金を増やすだけになるリスクがあると指摘する。

「農家が必要としているのは、自分の農地を肥やすことと、家族を食べさせるためのお金だ」と、ホンジュラスのコーヒー協会(IHCAFE)のダゴベルト・スアゾさんは言う。

メキシコ南部とパナマに挟まれた「乾燥回廊」と呼ばれるこの貧しい地域において、コーヒーは長年、経済と社会発展の柱だった。だがこの「乾燥回廊」は近年、激しい干ばつに襲われている。

同地域に広がるコーヒー生産地の半分近くが、25年以上コーヒー生産が続けられている、生産者が言うところの「古い」農地だ。コーヒー生産者団体は、新たな農地の開拓を訴えている。

だが、現役農家が立たされている苦境を目の当たりにした次世代の子どもたちは、将来を考え直している。

6月27日、2018年も終盤に差し掛かったころ、ホンジュラスのコーヒー農家、マリオ・ロペスさんは、故郷の経済的苦境を脱して米国に渡ろうと、コヨーテと呼ばれる密入国請負業者に代金を支払った。写真は4月、エルサルバドルのベルリンで、かつてコーヒー農場だった場所にある水くみ場から水を運んで帰る親子(2019年 ロイター/Jose Cabezas)

「子供たちはもう、コーヒーに生涯を捧げたいとは思っていない」と、グアテマラのコーヒー生産者団体アナカフェのルイス・フェルナンダ・コレアさんは言う。

「親が成功していないことを目にした子供たちは、この産業に関心を持たない。別の仕事を探したがる」と、コレアさんは付け加えた。

(翻訳:山口香子、編集:久保信博)

Reporting by kyoko yamaguchi

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