[台北 21日 ロイター] - 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業(2317.TW)は21日、台湾総統選挙に出馬した郭台銘(テリー・ゴウ)会長(68)の後任に、同社の半導体部門トップの劉揚偉氏(63)を指名したと発表した。
ホンハイはこの日、台北市内で年次株主総会を開催。郭氏は会長職を退任し、同社の経営を新設された運営委員会に委ねると表明した。郭氏は取締役にはとどまる。
中国に大規模な生産拠点を置き、アップル(AAPL.O)などの米企業を顧客に持つホンハイが、米中の貿易戦争が繰り広げられる中で難しい舵取りを迫られている状況下のトップ交代となる。
郭氏は「向こう4年間、私が過去40年で培ったものを(台湾に)捧げたい」と述べ、「私に4年を、そして台湾に復活のチャンスを与えて欲しい」と訴えた。
郭氏は、対中融和路線の野党・国民党の予備選に立候補している。同氏は台湾経済の状況を、成長が阻害されていると指摘した。
台湾経済は、世界的なハイテク需要の減少や米中貿易戦争のあおりで成長が減速。輸出受注は7カ月連続で前年割れとなり、台湾中央銀行は20日に2019年の成長率予想を再度引き下げた。
<劉氏「中国以外で生産能力高める計画ない」>
劉氏は郭氏の特別補佐として2007年にホンハイに入社。郭氏の信頼厚く、2017年から半導体部門のトップを務めていた。
劉氏は、株主総会終了後ロイターに対し、現時点で中国以外で生産能力を高める計画はないと語り、顧客から中国生産拠点の移転要請は来ていないとの認識を示した。
投資家の間では、ホンハイがアップルなど向けの生産ラインを調整するかが焦点となっている。日経アジアレビューは今週、アップルが、主要取引先に対し、中国における同社向け生産の15─30%を海外に移転するコストを見積もるよう要請したと伝えた。[nL4N23Q2L9]
ホンハイは前週、中国以外に十分な生産能力があり、米中貿易戦争の影響で生産ラインの調整が必要になっても対応可能としている。
複数のアナリストは、劉氏の会長指名は事業戦略の大きな変化の兆候にはならず、郭氏は自身が45年前に創業した同社の支配を続ける可能性が高いと指摘している。
台北を拠点とするアナリストは「劉氏への引き継ぎは形式的なものに過ぎない」とし、「郭氏は取締役にとどまっており、ホンハイの大半をコントロールすることが引き続き可能だ。助言を行ったり提案を拒否したりすることができる」と述べた。
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