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フォトログ:マスク氏の通信衛星、チリの寒村にネット接続の恩恵

ソトモの住民は何十年にもわたり、海で獲れたムラサキイガイや魚を、舟で往復5時間かかる市場で売り、生計を立ててきた。

8月19日、吹きさらしの道を歩き、岩山に囲まれた入り江を船で渡ることおよそ半時間。ディエゴ・ゲレロ君は、チリ南部の寒村にある学校に到着する。 写真はソトモの自宅で、携帯電話でビデオを見るゲレロ君。8日撮影(2021年 ロイター/Pablo Sanhueza)

だが、今やソトモでは1年間無料でインターネットを利用できる。スペースXのCEOで富豪のイーロン・マスク氏が主導するパイロットプロジェクトの拠点として、チリ国内で選ばれた2カ所のうちの1つだからだ。

<マスク氏の宇宙開発構想の鍵に>

スペースXの1部門であるスターリンクは、世界中に高速のブロードバンドインターネットサービスを提供できる低軌道衛星ネットワークの一部として、1万2千個の衛星打ち上げをめざしている。特に重視しているのが、地上インフラでは到達が難しい僻地へのインターネット接続サービス提供である。

(2021年 ロイター/Pablo Sanhueza)

昨年10月から、スターリンクは米国内の加入者に対して「ないよりマシ程度のベータ版」と称するプログラムを提供する一方、他の諸国でもパイロット試行プログラムを実施している。チリでは、不毛の北部砂漠地帯に近い小さな漁港のカレタ・シエラに、2基めのアンテナが設置される予定である。

この計画は、スペースXが必要としている資金を生み出すための鍵である。何しろイーロン・マスク氏には、月への顧客を載せた商業飛行、最終的には火星での植民地建設の試みを可能にする新しいロケットの開発という夢があるのだから。

(2021年 ロイター/Pablo Sanhueza)

夢といえば、7歳のディエゴ君にとっては、安定したインターネット自体が十分に夢のような話だ。

「インターネットは大好きだよ、宿題ができるから」と彼は言う。「接続が速いから、勉強もはかどる」

ロイターではスターリンクにコメントを求めたが、回答は得られなかった。スペースXのグウィン・ショットウェル最高業務責任者(COO)は、チリでのパイロットプロジェクトに関して7月に出した声明の中で、「スターリンクは、カレタ・シエラやソトモのような遠隔地のコミュニティーのために設計された。高速接続はそうしたコミュニティーに桁違いのインパクトをもたらすだろう」と述べている。

<高速ネットで広がる視野>

ディエゴ君の得意な学科は算数だ。めざす職業は船乗りで、父カルロスさん(40)の漁船で海に出るのが大好きである。

(2021年 ロイター/Pablo Sanhueza)

カルロスさんが息子に託す夢はもっと壮大だ。新たなインターネット接続によって世界に開かれる窓が、息子の視野を広げてくれると信じている。

カルロスさんはディエゴ君を毎日船で学校へ送っているが、その途中で風雨に悩まされることも多い。

(2021年 ロイター/Pablo Sanhueza)

「自分は学校に行くなど夢のまた夢だった。だから、お前はどんな環境でも、天気が良かろうが悪かろうが、パンデミックだろうが、どんな苦労をしても学校に行きなさい」と彼は言う。

「良い教育が受けられれば、つまりその機会が与えられ、本人がやる気を出せば、父親なら誰もが抱く希望を持つことが可能になる。たぶんいつの日か、ソトモのすべての子どもが尊敬すべき仕事につけるようになる、という希望をね」

(2021年 ロイター/Pablo Sanhueza)

在学する7人の生徒は、教育省から提供されたタブレットを使い、オンライン教材を利用し、動画を視聴し、美術館をバーチャル見学し、他校の子どもたちへのテレビ電話ができる。

ソトモの学校「ジョン・F・ケネディ・スクール」のただ1人の教師、ハビエル・デ・ラ・バッラ先生は、インターネットを職業訓練にも利用できないかと期待している。

(2021年 ロイター/Pablo Sanhueza)

電波を受信するのは学校の屋根に設置された衛星アンテナで、Wi-Fi経由で校内のほとんどの設備や校庭に届くようになっている。最終的には、集落の他の地域にも拡大される予定だ。

インターネットを使えるのは正午から深夜まで。ソトモに電力を供給する発電機への軽油の供給が限られているからだ。

それでも、現状で住民が窓から身を乗り出したり、湾内に漕ぎ出て、ようやく携帯に入ってくる途切れ途切れのインターネット接続にくらべれば大きな進歩だ、とデ・ラ・バッラ先生は言う。

(2021年 ロイター/Pablo Sanhueza)

<デジタル・デバイド解消に期待>

スターリンクのアンテナは7月に設置され、今月の初旬には、グロリア・ヒュット運輸・電気通信大臣も列席して開通式典が挙行された。

ヒュット氏は、スターリンクが、チリに限らず広く南米地域におけるデジタル・デバイドを解消する鍵になることを期待していると述べた。デジタル・デバイドの問題は新型コロナウイルスによるロックダウンによって表面化した。良好なインターネット接続を得られない人々は仕事や学習で困難に見舞われてしまうからだ。

政府統計によれば、チリは南米で最高レベルのインターネット普及率を誇る。2021年3月時点では、1900万人の人口に対して、モバイル回線によるインターネット契約件数は2100万件だった。

(2021年 ロイター/Pablo Sanhueza)

だが、ソトモの家庭の例に見るように、モバイル接続の契約を結んでいても、常に電波が拾えるわけではない。

「ここでの暮らしは大好きだ」とカルロス・ゲレロさんは語る。「静かで、家族はストレスとは無縁だ。とはいえ、通信手段も、道路や電気、上水道も十分ではない」

「こうしたサービスすべてが、限られた場所だけでなくコミュニティー全体に広がり、誰もが利用できるようになったら、なんて素晴らしいことだろう」

(翻訳:エァクレーレン)

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