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アングル:中国の炭鉱都市、サービス産業移行に厳しい教訓

[楡林(中国) 22日 ロイター] - 中国北西部、陝西省楡林市を走る万里の長城で観光ガイドを務めるGao Jingさんは、経済改革の一環として同市が呼び込もうとしていた外国人観光客の増加を期待して、英語を習おうとしたと話す。

 8月22日、中国陝西省楡林市の経験は、経済改革を試みる他都市の教訓となる。つまりそれは、活気あるサービスセクターを確立するには時間を要し、その間はこれまでの主力産業を捨てるわけにはいかない、ということだ。写真は同市の新しい経済区域。6月撮影(2016年 ロイター/Sue-Lin Wong)

だが、かつて石炭や石油、天然ガスで栄えたこの町に外国人観光客がやって来ることはなく、Gaoさんは英語を忘れてしまったという。

「観光業を発展させるという話は確かによく言われるが、実行するとなると、それはまた別の問題だ」と、10年間ガイドをしているGaoさんは語る。

楡林市の経験は、経済改革を試みる他都市の教訓となる。つまりそれは、活気あるサービスセクターを確立するには時間を要し、その間はこれまでの主力産業を捨てるわけにはいかない、ということだ。

経済が成熟するにつれ、中国は輸出・投資主導の経済モデルから、より持続可能な国内消費に基づくモデルへとかじを切ろうとしている。

楡林市は、そうしたモデル転換を加速させようとするためのシンボルとなり、メディアは他の地域が研究するに値する経済改革の一例として取り上げた。

天然資源から離れて経済の多様化に成功した楡林市を持ち上げる記事があふれる中、陝西省政府は2013年、経済改革を行うための27段階に及ぶ計画を発表し注目を浴びた。

しかしそれ以降、事態は計画通りには運んでいない。

減速する経済は、楡林市経済の新たな原動力として陝西省政府が選んだ観光や再生可能エネルギーのような産業の足を引っ張っている。

「石炭ブームがピークのころから、われわれはすでに経済改革の方法、消費に基づく成長モデルへの移行について考えていたが、期待していたようにはうまくいかなかった」。同市で投資を統括する部門の担当者は語った。

<成長への教訓>

楡林市はサービス産業に移行し、国有企業に支配される経済から脱却、そして、民間企業を中核として、より高い価値を持つ石炭や石油、天然ガスを生産する経済への転換を目指していた。

同市の経済においてサービス産業の占める割合は、2015年は3割を超えるにすぎなかったが、省政府は2020年までに4割近くまで上昇させるという野心的な目標を掲げている。

楡林市の市内総生産(GDP)伸び率は、2008年の23%から2015年は4.3%に急落した。ただし国レベルでは、そうした公式データが実体経済の本当の姿を反映していると見ることに懐疑的な人たちもいる。

「公式統計を成長の指標としてみるのは意味のないことだ」と、同省の商業当局者は匿名でこう語った。

引退した国有企業の元社員もGDPのデータには懐疑的な見方を示し、「問題は、経済成長を刺激するため、サービス産業を当てにするのに十分な人材がいないことだ」と述べた。

公式統計によると、2016年上期の楡林市の財源は前年比21.2%減少。サービス部門への投資は2015年、36.6%削減した。

<目玉となる観光地の欠如>

楡林市が抱える問題を悪化させるかのように、内モンゴル自治区のオルドス市や包頭市のような、やはり従来の産業に依存する近隣都市は、同じような種類の投資プロジェクトを誘致し、観光業のような産業を発展させようとしている。

「観光業を発展させるのは難しい。われわれには西安のような歴史がない」と、前述の国有企業元社員は、古都の遺跡で発見された兵馬俑(よう)で有名な陝西省省都の西安に言及してこう語った。

「楡林には一度来れば、半日で市全体が見て回れる」

豊かな太陽の光と風に恵まれ、再生可能エネルギー産業の発展が期待されているものの、不動産セクターが低迷する中、エネルギーと電力の需要も落ち込んでいる。

楡林市が経済ブームを巻き起こした産業を放棄していないことは明らかだ。実際のところ、石油や石炭会社の競争力を強化する取り組みの一部は功を奏し始めている。

楡林石炭貿易センターは、物流や品質管理から、完全なサプライチェーン提供へと業務内容を変えたという。

顧客は中国全土におり、その大半は騰訊控股(テンセント・ホールディングス)傘下のスマートフォン向けメッセージアプリ「WeChat」のような人気オンラインプラットフォーム上で同社を見つけている。

社員10万人を抱える同社の業務担当者は、楡林市の高品質な石炭を低品質なものと替えるようなことはしないという安心感を顧客に与えられるほど十分に大きな会社だと強調し、「競争におけるわれわれの強みは、顧客のカネを持ち逃げしないことだ」と語った。

(Sue-Lin Wong記者 翻訳:伊藤典子 編集:高橋浩祐)

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