March 10, 2018 / 1:57 AM / 2 months ago

アングル:「一帯一路」の中国、外銀撤退のブルネイで存在感

Praveen Menon

 3月5日、石油・天然ガス資源は20年以内に枯渇すると予想されているブルネイでは、一帯一路構想を中国が存在感を増している。首都バンダルスリブガワンで2017年11月撮影(2018年 ロイター/Ahim Rani)

[バンダルスリブガワン 5日 ロイター] - 南シナ海のブルネイ北端沖に浮かぶ小さな島では、数千人の中国人労働者が働いている。彼らが建設しているのは、石油精製・石油化学複合プラント、そしてこの島と首都バンダルスリブガワンを接続する橋梁だ。

中国の恒逸集団がこのマアーラ・ベザー島で操業を予定する複合プラントは、第1フェーズの総工費が34億ドル(約363億円)に上り、竣工すればブルネイ史上最大の外資プロジェクトとなる。

しかも、それは石油資源に依存するブルネイが最も必要としているタイミングに行われる。

同国の石油・天然ガス資源は20年以内に枯渇すると予想されている。産出量低下とともに、石油会社はすでに既存施設向け投資を抑えており、産出量のさらなる低下を招いている、と業界アナリストは指摘する。その結果、ブルネイ政府のすべての歳出を事実上支えている石油収入が着実に減少している。

若年層の失業率が上昇する中で、ブルネイのボルキア国王は経済改革を急いでおり、収入源の多角化をめざす一方で、汚職対策と反体制派の取締りに忙しい。

ブルネイにおける状況変化は同国の金融産業に反映されている。

HSBCHSBC.Lは昨年ブルネイから撤退。シティバンク(C.N)も2014年、同国における41年間に及ぶ活動を終えた。一方、2006年12月には中国銀行(601988.SS)はここに最初の支店を開設した。

地元メディア報道によれば、マアーラ・ベザー島のプロジェクトは1万人以上の雇用を生むことが確実視されており、その少なくとも半分は大学新卒者になる見込みだという。

だが、複合プラント建設のために数千人の中国人労働者が運ばれてきているという主張が、一部の地元住民の怒りを買っている。

「われわれには仕事がないというのに、なぜ中国人のために仕事を作るのか」と首都に住む地元店主は疑問を投げかけた。

<海のシルクロード>

精製プラント建設に携わる現地法人の恒逸産業にコメントを求めたが、回答は得られなかった。同社は2011年に設立され、バンダルスリブガワンに本社を置いている。同社ウェブサイトによれば、マアーラ・ベザー島の石油精製・化学複合プラントの第1フェーズは今年末までに竣工の予定となっている。

恒逸産業が先月発表したところでは、第2フェーズの総工費は120億ドルで、精製能力を28万1150バレル/日に拡張し、年間150万トンのエチレン、同200万トンのパラキシレンを生産するユニットを建設するという。

アメリカン・エンタープライズ研究所の中国グローバル投資トラッカーによれば、中国による対ブルネイ投資は、現在総額41億ドルに達していると推定される。

中国が「一帯一路」構想を強化していく中で、この数字もほぼ確実に増大していくだろう。21世紀版「海のシルクロード」とも呼ばれるこの構想は、港湾、道路、鉄道、産業団地からなる複雑なネットワークを介して、中国と東南アジア、アフリカ、欧州をつなごうと試みるものだ。

対照的に、米国のブルネイにおける累積投資額は、国務省から入手可能な最新データによると、2012時点でわずか1億1600万ドルだった。

中国グローバル投資トラッカーによれば、中国は2010年から2017年にかけて、東アジア地域に約2050億ドルを投資している。

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中国はこのような投資を増やす一方、南シナ海の小規模な島嶼(とうしょ)や環礁の領有権をめぐって、ブルネイを含む東南アジア4カ国との対立を続けている。

「ブルネイと良好な関係を築き、巨額の投資を行うのは、南シナ海の問題に関してコンセンサスが生まれないように東南アジア諸国を分断しようという中国の戦略の一環だ」と、ブルネイに関する著作もあるマラヤ大学(クアラルンプール)のジャツワン・シン准教授は語る。

「ブルネイは経済多角化のために投資促進に力を入れており、この意味で中国からの投資は(同国にとって)重要だ」と同準教授は言う。

<切り詰められる福祉>

原油価格が1バレル100ドルを超え、ブルネイ国民が精製所の雇用のことなど、気にしなくてよかった時代は、それほど昔のことではない。

ボルネオ島でマレーシアの2つの州に挟まれるブルネイは、42万人の国民に対し、「ゆりかごから墓場まで」式の社会保障を提供してきた。税率はゼロ、住宅取得には補助金が与えられ、教育や医療は無償だった。

だが、3年連続の景気後退に見舞われたことで、国王はこうした福祉の一部を縮小し、国家財政を引き締めざるを得なくなっている。

君主として世界第2位の在位年数となる71歳のボルキア国王は先月、再び内閣改造を行い、任命から数年しか経っていない主要閣僚6人を交代させた。理由は説明されていない。

ボルキア国王が望んでいるのは、汚職を根絶し、福祉制度の後退と予算削減、失業に対して多数派であるマレー系ムスリム住民が抱いている不満に対処することだと政府に近い関係者や他国の外交官は語る。

入手可能な最新の公式報告では、2014年の失業率は6.9%だった。非公式の数値は、若年層の失業率が15%に達している可能性が示されている。

「ブルネイ国民の多くは、政府部門や国とのつながりのある企業、あるいは石油・天然ガス部門に就職することを期待している。だが、いずれもかなりの打撃を受けている部門だ」と西側外交官は言う。

首相を兼任するボルキア国王は、国防、財政、外交といった主要分野を掌握している。5日開催された通常国会において、ボルキア国王は、政府が石油・天然ガスへの依存を減らし、経済成長に向けた他の道を開拓しなければならないと説いた。

「世界需要は増大し、石油価格は回復しつつあるが、経済成長は依然として低いレベルにある」と、国王は閣僚や国会議員に向けた演説で述べた。「したがって、われわれは引き続き、短期と長期ともに財政収支をコントロールする必要がある」

ブルネイ国民のあいだで国王の人気は依然として高く、昨年10月には在位50年を迎えた。首都ではきらびやかな馬車に乗っての壮麗な祝賀パレードが行われ、熱心な王制支持者の歓呼に迎えられた。

だが、長期的には、しぼみ続ける単一の収入源に支えられた経済は、支配者とその臣民との関係を損なっていく可能性があると、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの元研究員で、ブルネイ民主化を主張しているマウング・ザルニ氏は指摘する。

「だからといって、街頭での抗議行動が起きるということではない。ただブルネイ国民は、王室系の新聞やテレビ局が伝えるほど状況がバラ色ではないことに気づいている」とザルニ氏は言う。同氏は2013年「学問の自由がなかった」ことを理由として、ブルネイ・ダルエスサラーム大学を辞職している。

    (翻訳:エァクレーレン)

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