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焦点:急転直下のオラクル提携 TikTok決断の内幕

[15日 ロイター] - 中国の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の親会社、北京字節跳動科技(バイトダンス)の創業者兼最高経営責任者(CEO)の張一鳴氏は、米マイクロソフトMSFT.Oへのティックトック米国事業の売却を諦め、米オラクルORCL.Nとの提携案を残すことを決断した。事情に詳しい複数の関係者によると、これは、バイトダンスが米中双方の政府をなだめられる合意を模索する一方で、株主からいかに圧力を受けたかを物語るという。

9月15日、中国の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の親会社、北京字節跳動科技(バイトダンス)の創業者兼最高経営責任者(CEO)の張一鳴氏は、米マイクロソフトへのティックトック米国事業の売却を諦め、米オラクルとの提携案を残すことを決断した。写真はTikTokとオラクルのロゴ。14日撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

<MSに心証害した張氏>

関係者によると、セコイア・キャピタルやゼネラル・アトランティックといった主要株主の間では、ティックトックの米国事業が本来の評価額よりも低く売却された場合に自分たちが被る金銭的な打撃への懸念が強く、これが張氏に完全売却ではなく、オラクルへのごく一部の売却案に向かわせた。

これはリスクを伴う戦略だ。ティックトックの米ユーザーのデータが中国共産党政府に渡される可能性があるとの米安全保障当局者の懸念を背景に、トランプ大統領はティックトックをどこかの米ハイテク企業に完全売却するのが望ましいと明示してきた。これにバイトダンスが従わなければ、9月20日にも米国でティックトック事業を禁止すると脅してきた。

中国も8月になって、この問題に関与。ティックトックのコンテンツ推奨アルゴリズムなどの技術が海外企業に移転されることを念頭に、輸出管理規則を改定し、中国政府の承認が必要になるようにした。中国の当局者は、バイトダンスが米政府から事業の合意を強要されるべきではないとも発言してきた。

関係者によると、この1週間ほど、ティックトック米国事業への200億ドル(約2兆1080億円)を超す買収提案にバイトダンス側が反応しなくなってきた。そのためマイクロソフト幹部は焦りを強めた。同社からの買収提案にはティックトックの業績に基づいた将来の支払い分も盛り込もうとしていたという。

この提案は、バイトダンスの投資家の期待には物足りなかった。トランプ政権や米国の法律専門家と買収案を巡って議論する中で、マイクロソフト側が張氏の心証も悪くしたとされる。消息筋によると、マイクロソフトがティックトックの安全保障上のリスクは解決可能だという言い方をしたためだ。バイトダンスは、同社がティックトックのオーナーであることは何のリスクも意味しないと一貫して主張していた。

一方で、セコイアとゼネラル・アトランティックは完全売却を回避する代替案について、オラクルと協議していたという。

バイトダンスが関わりを避けようとしていると懸念したマイクロソフト側は、バイトダンスに対し、ティックトックの米国事業を巡るレースで自分たちは負けたのかと問いただしたという。消息筋によると、マイクロソフトはバイトダンスに対し、提案をオラクル案と同等な内容に修正してもいいかとも問い合わせていたという。

バイトダンスは、マイクロソフトがオラクル並みに内容や条件を修正して提案し直しても、オラクルを選ぶと回答した。関係者によると、オラクルは既に数週間にわたってバイトダンスの投資家と合意案を話し合っており、オラクルとの提携の方がより安心だとティックトック株主や張氏に感じさせていた。

マイクロソフトは13日、同社のティックトック米国事業への買収提案をバイトダンスが退けたと発表した。

こうした説明は、消息筋6人へのインタビューに基づいている。

バイトダンスとマイクロソフトはコメント要請に応じていない。オラクルはコメントを拒んだ。ゼネラル・アトランティックとセコイアもコメントを拒否した。

<売却ではなく「事業再編」>

関係筋によると、バイトダンスはそれまでの数日、米政府の安全保障上の懸念に対処しつつ、ティックトックの少数株を持ち続けられる合意を熱心に模索していた。張氏は他のバイトダンス幹部との議論の場で、今回の取り決めを「事業再編」と表現していたという。関係者の1人はオラクル案について、合弁事業に近いとの見方を示した。

関係者によると、ティックトック米国事業でオラクルは、過半数には満たないが、そこそこの規模の株を保有することを交渉中。残りをゼネラル・アトランティックやセコイアなどのバイトダンスの大口投資家が保有する方向という。オラクルは米国でのティックトックのユーザーデータの管理も引き継ぎ、データ管理を巡る安全性に責任を持つという。

オラクル案でのティックトック米国事業の評価額は明らかになっていない。米国事業のユーザー数は1億人規模だ。

関係者によると、この提案は対米外国投資委員会(CFIUS)に対し、ティックトックの米国法人の取締役会メンバー、さらに主要取引業者との関係を承認するよう求めている。香港が本拠のレノボによる2005年のIBMパソコン事業買収や、ソフトバンクグループによる13年の米スプリント買収で、CFIUSが実施した取り決めと似たものになるだろうとしている。

ロイターの13日の報道によると、バイトダンス側はCFIUSが2年前に中国泛海控股による米保険会社ジェンワース・ファイナンシャル買収を承認した事例を持ち出し、これがオラクル案の前例になると主張する計画という。中国泛海はジェンワースの米保険契約者データの管理で、米国に拠点を置く第三者のサービス会社を使うことに同意した。似たような合意をオラクルと結ぶことで、ティックトックの米国ユーザーデータの安全を保証できるとバイトダンス側は主張する意向だ。

<雇用増も提案>

関係者によると、バイトダンスはトランプ氏にアピールするため、他の譲歩もした。ティックトックの米国内の雇用を現在の1000人超から2万5000人にするという提案だ。

バイトダンスは、オラクル創業者のラリー・エリソン氏がトランプ氏への大口献金者であり、同社CEOのサフラ・キャッツ氏も4年前にトランプ氏の政権移行チームを支援していたことが、成功の可能性を高めると期待している。

ホワイトハウスとしてはこれまでのところ、バイトダンスとの協議には関わらないという立場で、オラクルの提案が進展するかはなお不明だ。ムニューシン財務長官は14日、CFIUSが週内に提案を検討し、それからトランプ氏に勧告すると述べた。

ホワイトハウスはコメント要請に応じなかった。

ロイターは先週、中国政府はティックトックの米国事業について、売却を強制されることになるぐらいなら、米国事業閉鎖の方が良いとの考えだと報じた。

消息筋によると、オラクル案ならばバイトダンスはティックトックのアルゴリズムを巡り、輸出認可を中国当局に申請する必要がないという。

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