November 22, 2018 / 1:29 AM / 25 days ago

アングル:「商用EV革命」迎える中国、メーカー各社が熱視線

[北京 16日 ロイター] - 中国の電気自動車(EV)スタートアップ企業「奇点汽車」には、壮大な計画がある。年間最大5万台のEVバンを生産し、中国で起きている「eトラック」需要の波に乗るというものだ。

 11月16日、世界最大の自動車市場である中国で増える一方の自動車メーカーにとって、今こそEVトラックやバンに投資する好機が到来している。写真は、北汽福田汽車の自動運転トラック。北京で10月撮影(2018年 ロイター/Thomas Peter)

世界最大の自動車市場である中国で増える一方の自動車メーカーにとって、今こそEVトラックやバンに投資する好機が到来している。汚染規制の強化や手厚い補助金に加え、活況な消費者向け電子商取引(eコマース)が後押しする軽量トラック需要が牽引している。

「中国で商用EV革命が起きようとしている、と考えている」。奇点汽車の共同創業者、沈海寅氏はロイターとのインタビューでそう語った。「EVの未来は、多くの点において、自家用車よりも商用車の方が、早く訪れるかもしれない」

南部湖南省で新工場を起工したばかりの奇点汽車は、来年半ばまでに、同社初のEVを発表する計画だ。2020年にはEVトラック生産工場を稼動し、早期に年5万台の生産を目指す。沈氏は、eコマースや物流企業の興味を引くであろう2つの主要モデルを思い描いている。1つは、フォードの「トランジット」やトヨタの「ハイエース」程度の大きさで、市内配送用の小型バン。そしてもう1つは、2トン未満の配送トラックだ。

eトラックの成長機運は、最初は中国そして世界へと広がっていくEV市場の転換点となる可能性がある。そうなれば、米テスラ(TSLA.O)などのEVメーカーが自家用車で実現しようとしている大量普及の後押しになるかもしれない。

「これは新たなゲームだ」。元クライスラー幹部で上海のコンサルティング会社オートモビリティのトップ、ビル・ルッソ氏はこう語る。「輸送・物流サービス向け車両として配備されてこそ、EVの強みが発揮できる」

高価格のバッテリーや面倒な充電ニーズといったEVにつきものの障害は、トラックの場合、全体の運営コストがガソリン車やディーゼル車よりも安くなるため、解消される可能性がある。

配送ルートが予測可能で、充電ステーションの配置や配送日の予定も戦略的に立てられるため、バッテリーの小型化が実現できる。また、トラックは24時間体制で稼動することが多いので、スケールメリットも達成しやすいとルッソ氏は指摘する。

北京汽車集団(BAIC)(1958.HK)の子会社であり、6トン未満の軽トラック製造で中国最大手の北汽福田汽車(600166.SS)も、配送用EVバンへの参入を目指している、と事情に詳しい複数の人物が明らかにした。

北汽福田汽車の一行は8月、東京銀座に近い低層ビルにある簡素なオフィスを訪れた。魅力的な配送用EVミニバンを開発すべく、日本の自動車メーカーを退職した高名なエンジニアのアドバイスを求めてやって来たのだ。

この場に居合わせた人物2人によると、北汽福田汽車の一行は、低コストのバン製造にとって、日本の小型車技術がよい土台になると考え、5万元(約82万円)という低価格販売を想定した設計について、アドバイスを求めていたという。

「昨年後半から、これで2度目の訪問だ」と1人の人物は匿名で語った。「彼らは真剣だった」

北汽福田汽車はコメントしなかった。同社は商用EVをすでに販売しているが、その規模は小さく、昨年の販売台数は約800台だった。

<箱型で実用的>

EVトラックは、テスラのEVのように世間の想像力をかき立てないかもしれないが、多くの自動車専門家はその出現を推奨していた。

EV業界が長距離向け自家用車に参入する利点について、専門家は懐疑的だ。EVバッテリーは重く、走行距離に限りがあるため、この技術は短距離用トラックの方が向いており、とりわけ、あらかじめ決められた、あるいは少なくとも予測可能なルートを往復する市内配送用バンやトラックに適している、と彼らは考えている。

中国では、完全なEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を合わせた小型商用EVの販売台数は昨年、約20万台に達した。これは、6トン未満のトラック市場の約6%に当たる。

中国でEVトラックを開発する世界的な自動車メーカーの1つである日産自動車(7201.T)は、軽量EVトラック需要が今後4─5年で4倍に増えるとみている。日産と東風汽車集団(0489.HK)の中国合弁企業「東風汽車有限公司」は、2022年までに商用EVの販売台数を現在の6倍、9万台に増やすことを目標としている。

日産と連合を組む仏ルノー(RENA.PA)も同様だ。華晨汽車集団と合弁会社を設立し、来年から2年以内に配送用EVバンを3車種発売する計画だ。

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が出資する中国自動車メーカーの比亜迪汽車(BYD)(1211.HK) (002594.SZ)や浙江吉利控股集団[GEELY.UL]もEVトラックやバンを販売しているが、その売り上げはまだかなり小さい。

EVトラックの成長は、中国の中央・地方当局のEV奨励策のおかげでもある。当局は、内燃エンジン技術で世界のライバル企業に遅れを取っている国内自動車産業を活性化させ、国民の不満の原因となっている大気汚染を削減しようとしている。

中央政府からの最大10万元(約160万円)の補助金だけでもEVへの転換を加速させている。日産で最も人気の高いEV商用車「東風D94」の場合、中央政府と地方当局から最大で計8万元の補助金を受けることができる。これにより買入価格の3割削減が可能となる。

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北京、上海、広州など約20都市は、化石燃料トラックによる市中心部への走行を制限している。北京は昨年、午前6時から午後11時まで、大型トラックが市中心部に入ることを禁止した。来年には、ディーゼルトラックや他の一部商用車向けの規制が強化される。

「われわれはeトラックに賭けている。近い将来、eトラックとeバンしか市の中心部に入れなくなるからだ」と、日産の中国幹部は言う。「成長を続けるeコマースによって、配送用EVバンの未来は明るいとわれわれは考えている」

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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