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焦点:中国の新たなネット検閲、「1984」と新興IT企業が融合
2017年10月17日 / 01:44 / 1ヶ月後

焦点:中国の新たなネット検閲、「1984」と新興IT企業が融合

[天津(中国) 29日 ロイター] - 中国天津のトレンディな一角にあるガラス張りの高層ビルでは、何百人もの若い男女がコンピューター画面に向かい、共産党の方針に反する動画やメッセージをインターネット上から削除している。

 9月29日、中国の新たなネット検閲の世界にようこそ──。ここでは、ジョージ・オーウェルが「1984」で描いた世界と、米シリコンバレーの新興IT企業が融合している。写真は7月撮影(2017年 ロイター/Thomas White)

習近平国家主席についてのコメントは綿密にチェックされる。指導部メンバーに対する滑稽なニックネームも同様だ。性的な暗示や暴力的な内容と同様に、1989年の天安門事件に関する言及も、即座に削除される。

中国の新たなネット検閲の世界にようこそ──。ここでは、ジョージ・オーウェルが「1984」で描いた世界と、米シリコンバレーの新興IT企業が融合している。

「監査人」と呼ばれる天津オフィスの若き検閲担当者の勤務先は、北京のバイトダンス・テクノロジーだ。同社はむしろ、急成長する人気ニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」でよく知られている。

麺料理店や建設現場に囲まれた、検閲担当者が働く「Wisdom Mountainツインタワービル」は、必ずしもオーウェルの描いた世界には似つかわしくない。

従業員は、iPadを使った認証をして、明るいオフィスに入っていく。世界各地の新興企業でよく見られるチームビルディング会合があり、服装規定はカジュアルだ。

「われわれの企業文化はとてもよい。たとえば毎日午後にはお茶の時間がある」と今日頭条のオフィスで働く検閲担当者は言う。経営構造が「水平的」とは、「一般の従業員が自身が抱える問題について直接CEOにメッセージを送れる」ということを意味する。

「全般的に、この会社はクールな職場だと思われている」という。

今日頭条の天津「監査」センターは、中国当局がオンラインコンテンツの監視を強化するなかで急速に拡大している大規模な検閲体制の中核を占めている。

国営メディアサイトBeijing Newsが発表した数値によれば、政府省庁と民間企業に勤務するオンラインコンテンツ監視員は、2013年時点で約200万人だった。この数字はその後急速に増加したと専門家は考えている。

習主席による権力基盤強化が予想されている10月の党大会を控え、政府は動画投稿サイトやチャットサービス、ソーシャルメディアに対する統制を厳格化しつつある。

ますます多彩になるウェブサービスが人々に新たな自己表現の場を与えるなかで、習主席率いる政府は、ネット言論の統制に向けた努力を拡大している。

「これまでも統制は盛んに行われていたが、党大会に向けて本当に厳しくなっている」と香港中文大学の徐洛文(Lokman Tsui)教授(ジャーナリズム論)は語る。取り締まりは党大会後以降も長く続くと見られ、広範囲に「萎縮効果」が生じていると指摘する。

これに対応すべく、今日頭条をはじめとする企業は多数の労働者を雇って、1億2000万人に上る自社のネットユーザーに提供されている動画、ブログ、ニュース記事を監視している。

「2年前には、従業員数は30─40人ほどだった。今は1000人近くが検証・監査作業に当たっている」と今日頭条の検閲担当者は、匿名を条件にロイターに語った。

ビルの警備・受付担当者によれば、天津オフィスは急速に拡張されたという。「ここでは全員が監査業務に当たっている」と受付担当者は言う。「1年前は1フロアだったが、今では10フロアだ」

先月ロイターが報じたように、今日頭条は新規の資金調達ラウンドで少なくとも20億ドル(約2260億円)を調達し、企業価値は200億ドル程度となった。コンテンツ「監査」を含めたチームを急速に拡大してきたと同社は言う。

「質の低いコンテンツ、虚偽のコンテンツを排除するため、先進的な人工知能(AI)分析ツールと厳格なコンテンツ管理プロセスの開発に投資してきた」と今日頭条は声明で述べた。同社は、何人の検閲担当者を雇用しているかについては回答を拒んでいる。

<NGワードは天安門や指導者のニックネーム>

今日頭条の検閲担当4人、それ以外のスタッフ4人にロイターが取材したところ、中国の政治指導者に何か動きがある時期には検閲の業務作業量は急増するという。

コンテンツ検閲業務は昼夜2交代のシフトで行う。検閲のピークは午後6時から午後9時にかけてだ。動画、ユーザーによる投稿、ニュースを閲覧した上で、検閲担当は政治批判を一掃する。

 9月29日、中国の新たなネット検閲の世界にようこそ──。ここでは、ジョージ・オーウェルが「1984」で描いた世界と、米シリコンバレーの新興IT企業が融合している。写真は7月、人気ニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」のロゴ。南京市で撮影(2017年 ロイター)

また、暴力から薬物中毒、不倫、カルト宗教に至るさまざまな主題を検閲の標的としており、これらはすべて6月に発行された長大な指針のなかでブラックリストに載った。

「過度に低俗だったり、暴力的、流血沙汰や、その他人々に嫌悪感を与えるものはダメだ」と語るのは、もう1人の検閲担当者で、今日頭条の北京本社で勤務している。「あらかじめ決められたルールはない。担当している者の裁量的な判断による部分の方が大きい」

一部のトピックには特に気を遣う。習主席に関するコンテンツは、コンピューターが自動的にフラグを立てる。他は完全に禁句となっているものだ。1989年6月4日に起きた天安門広場での学生による抗議行動に対する弾圧の日に言及した「六四戦車事件」や「国家指導者に関するさまざまなニックネーム」も自動的にブロックされるという。

検閲担当者のほとんどは、自分の仕事は公務だと語る。

「人々の目に触れない多くの邪悪さや汚染がインターネットにはある。われわれは人々を守る手助けをしている」と天津で働く3人目の検閲担当者は言う。

だが彼らの努力は、ネット上では、投稿を削除された人々や中国における検閲拡大に異を唱える人々から強烈な批判を浴びることが多い。

「友人の投稿を探したら、すべて削除されていることが分かった」。Jue Nianというハンドルネームの微博(ウェイボ)ユーザーはそう投稿している。「数年もすれば、あまりにも多くの歴史が書き換えられ、反対意見を示す場所など無くなっているだろう」

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<党とのつながり>

政府は今年、ネット関連企業が自社サービス上のコンテンツに対して行う自主検閲に関するルールを強化。騰迅(テンセント・ホールディングス)(0700.HK)、百度(バイドゥ)(BIDU.O)、微博(WB.O)といったウェブ最大手が十分なコンテンツ浄化を行っていないとして罰金を科した。

これらの企業の社内検閲担当者は、政府系の検閲担当者とは別に動いている。政府系の検閲担当者は国営メディアや地方政府の宣伝部門で活動し、民間企業と連携している。

ウェイボと、人気のチャットサービス「微信」を運営しているテンセントにコメントを求めたが、回答は得られなかった。バイドゥはコメントを拒みつつも、8月に出した「自社サービス上の悪意ある情報への対処に力を入れている」との声明を示すにとどめた。

オンラインニュースや動画ポータルサイトを運営するV1 Groupの会長を務めるZhang Lijun氏によれば、同社の人件費の20─30%は、コンテンツ検閲に消えているという。これはビジネス上の必要経費なのだ。

「疑いなく、共産党との緊密な関係を維持する必要がある」とZhang会長は言う。「党の構築、社内に適切な党組織を作ることで、ニュースを円滑に発信し、事業経営の安全を守ることができる」

<「ニュースや時事ネタ好き」求む>

今日頭条はコンテンツ検閲のために人工知能システムを使っているが、AIは必ずしも投稿の雰囲気を理解してくれるわけではない、と前述した北京勤務の検閲担当者は語る。「われわれはAIを鍛えている。現状はそれほど賢くない。最終的にこの仕事を全部処理できるようになってくれればいいのだが」

だが今のところ、生身の人間がまだ必要とされている。

天津外国語大学の学生向け求人ページに、今日頭条が今月掲載した求人広告では、「コンテンツ監査」要員として新卒者100人を募集しており、給与は月4000─6000元(約6万8000円─10万2000円)だ。

採用は「ニュースや時事ネタが好き」なことが条件だが、同時に「政治的な判断力があり」「インターネット統制に関する法令を理解している」ことも求められる。

9月、求人広告サイトLagou.comに投稿された「フォーラム監査人」の求人広告では、採用された者は、中国の強力なインターネット検閲当局である中国サイバー管理局(CAC)の指示に従って勤務する責任を負う、とされている。

CACにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

求人広告の大半は、一般的にこのような職務条件を受け入れやすい大学新卒の若者を対象としている。「大学を卒業したばかりの人は、白紙のようにまっさらな状態で、われわれの企業文化を受け入れやすい」と天津で働く検閲担当者は語る。

(翻訳:エァクレーレン)

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