[北京 11日 ロイター] - 中国が新型コロナウイルス検査施設を何百も作り、検査件数を積み上げつつある。健康な人さえも対象にした検査態勢を増強するためで、国内の感染はほぼ押さえ込めている形だ。ウイルス検査を国内のどこでも、誰に対しても行うようにするのが当局の狙い。文書や当局の各種通知は、政府が検査能力を急拡大させており、既に世界最大級の態勢を津々浦々に広げようとしていることを示している。
国家衛生健康委員会は8日、新型コロナウイルス核酸検査を標準化させると発表。「検査したければ全員検査してもらえる」とぶち上げた。
新型コロナの流行が最初に確認された湖北省武漢では先月、9億元(1億2700万ドル)を投じ、10日間余りで約600万人を検査した。
他の多くの国と異なり、中国では広く検査が受けられる。香港大学の感染症専門家のベン・コーリング氏は、中国の多くの組織機関が職員に定期的に検査させるとみる。「検査は高価だが、中国ではたぶん、それほどかからない。検査試薬や機器が中国で生産されていることが多いからだ」と指摘。「把握されないうちに流行が発生し、地域や都市全域が封鎖される事態に比べれば、負担は軽い」と述べた。
<全国的広がり>
各省の病院や疾病対策予防センター(CDC)による今年5月初め以来の調達入札文書では、新設の検査施設向けの調達品がリスト化されており、全国規模の迅速な計画を物語る。
最も高額な品目はPCR検査機器で、文書によると価格は最大9万9000ドルのこともある。リストによると、中国内の検査機関が過去30日間に購入したPCR設備は257。過去1年間では1カ月当たり平均21だった。こうした数字は全体のごく一部にすぎない。すべての計画が公開文書で詳述されているわけではないからだ。
武漢では今年1月の新型コロナ患者確認から2週間余りの間、110万人の都市人口に対し、検査機器を備えた病院はゼロだった。
新しい検査施設の大半は現在、病院内に併設され、設置費用はほぼ10万-300万元(1万5000-42万ドル)だ。
一部の医療機関はすべての機器が中国製になるように要請していたが、それ以外は特定の外国製品を要望していた。スイスのロシュROG.Sや米バイオ・ラッド・ラボラトリーズBIO.Nなどの製品だ。
<価格統制>
中国政府は同国の検査キット生産能力は1日当たり500万個としている。地方政府は製造業者に厳しい価格統制を課している。
5月9日の発表によると、湖北省は大量注文と引き替えに製造業者に納入価格を下げさせており、核酸検査は1キット当たり16.78元、抗体検査で12.9元もの低価格のこともある。
同省によると、医療機関は政府レベルで協議された価格を請け合う数社からのみ納入できることになっており、これに従わないとウイルス検査ができなくなる。
中国は検査数のこれまでの実績を公表していないが、他国を大きく上回っているとの見方が一般的だ。米疾病対策センター(CDC)の発表によると、米国の6月5日時点での検査実績は2000万件余りだ。
大学生のル・メイピンさんは今月、北京の大学に戻り、一定の隔離措置と検査プログラムを受けることになっている。「誰もが何回でも検査を受けると思う。そのまま家での自主隔離が続くことを望む人はいないだろうから」と話した。
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