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コラム:日本の失敗に学べ、中国の銀行不良債権問題
2015年5月26日 / 04:04 / 2年後

コラム:日本の失敗に学べ、中国の銀行不良債権問題

[シンガポール 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本は中国にとって重要な教訓を持っている。現在の中国同様に、日本は1990年代前半に制御不能な債務の膨張と格闘を繰り広げた。重要なのは、不良化しつつある債権を抱える銀行に対して、必要なら融資延長をするべきだが事態が健全だと装ってはならない、と伝えることだ。

 5月25日、もしも中国が金融システムが脆弱な状況にあると迅速に認めるなら、日本よりもうまく事態に対応し、失われた20年を招かなくても済むのではないだろうか。 写真は中国の国旗。北京の金融街で昨年11月撮影(2015年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

このメッセージの前半部分は既に実行に移されている。中国の規制当局と人民銀行(中央銀行)は最近、資金繰り難に陥っている地方政府の資金調達機関が債務の利子や元本を返済できない場合は、融資延長をするべきだと各銀行に提言した。

そこで、日本の経験が思い起こされる。日本では株価と不動産のバブルがはじけた後、企業は借金を減らした。だがそうしたデレバレッジングは長期化し、銀行は債務負担に苦しむ借り手が返済し続けられるように新規融資を続けた。

こうした不良債務を生かしたままにしておくこと自体は、悪い戦略ではない。1993年初めの東京の商業不動産価格は2年前のピークから22%下落した。中国と同じく日本でも土地が借り入れの主な担保だった。もしも当時、銀行が企業に土地を売却して債務を返済するよう強制していたなら、あっという間に90年代の日本の企業セクターの総価値は約20%が消え去っただろう。実は地価が最終的に20年間で80%下がった点からすれば、この見積もりでさえ保守的といえる。こうした痛みを一度に引き受けなければならなかったとすれば、日本社会が大規模な富の喪失にもかかわらず何とか維持してきた繁栄は続かなったかもしれない。

中国の状況も似たようなものだ。フィッチ・レーティングスが分析対象としている中国の14の銀行グループ全体の不動産向け与信は20兆元(3兆3000億ドル)で、2008年の4倍に膨らんだ。このうち企業融資の担保としての不動産保有がおよそ半分を占める。ちょうど日本の90年代がそうだったように、すべての中国の銀行が不動産価格が暴落して出た損失を吸収できるだけの資本を確保しているかどうかはわからない。

日本において本当に有害だとわかったのは、銀行は穏やかなデレバレッジングさえも支えられないほどの資本不足状態にある、という現実を政策担当者がなかなか受け入れようとしないことだった。

健全なふりをすることは融資延長よりもはるかに致命的だ。1993年初めまでの3年間で、日経平均が56%下落したことで邦銀は大幅な含み損を抱え、資本不足が明らかになった。その結果、彼らは経営効率が相対的に高い企業から「貸しはがし」をしてゾンビ企業の延命に資金を回さざるを得なくなった。

これが日本経済全体の生産性低下と、20年にわたる成長の停滞につながった。民間セクターへの投資がなくなり、生産と雇用は過度に公的支出に依存するようになるとともに、政府債務が膨れ上がった。適切な時期に公的資金を銀行に資本として注入していれば、こうした事態のほとんどは避けられただろう。しかし実際には、日本はほぼ10年間は自らの課題に正面から取り組もうとしなかった。

そして中国は日本が犯した「健全なふり」がもたらした教訓を無視しかねない状況にある。

経済成長が急速に減速する中で、フィッチの分析で総与信額が国内総生産(GDP)の242%に達し、今年の利払い費用が対GDP比で15%に達しようかという段階で、銀行融資のわずか1.4%だけが不良債権化したという情報を信じるまでになっている。

もっとも銀行の不良債権は大した意味を持っていない。なぜならフィッチの推計では総与信に絡むリスクの38%は、銀行セクターの外に存在するからだ。

それでも最悪の不良債権がシャドーバンキングに潜んでいるからというだけで、こうした債権で生じる損失が銀行に跳ね返ってこないとは限らない。

中国の多くの銀行はこれまでに市場で資本を調達し、損失吸収能力を高めているという点で今後の事態への対応としては良い滑り出しを見せた。ただ、実際に銀行に損失が生じた際に経営効率が比較的高い借り手が立ち行かなくならないようにするには、さらなる増資が役立つかもしれない。当局としては銀行の融資上限を預貸率75%としている法令を再検討する必要も出てくるだろう。

不良貸出先企業を「突然死」させずに「仮死状態」のまま市場で存続させるのを許せば、失業と社会不安の発生を最低限に抑えられるとはいえ、そのコストをより生産的なセクターに負担させてはならない。

純粋思考では、融資延長は健全なふりをするのと同じぐらいよろしくないのかもしれない。経済が新たなスタートを切るための創造的破壊を阻むからだ。

だがそれは現実的ではない。中国の政策担当者は、1930年代の米国における急激なショックではなく、1990年代の日本が経験した不快な状態が長引くことを模倣しようとしているのは明らかだ。

もしも中国が金融システムが脆弱な状況にあると迅速に認めるなら、日本よりもうまく事態に対応し、失われた20年を招かなくても済むのではないだろうか。

●背景となるニュース

*中国政府は15日、地方政府が推計16兆元(2兆6000億ドル)を間接的に借り入れるのを支援してきた関連金融機関に対して銀行が闇雲に貸しはがしや融資ストップなどを行うべきではない、と表明した。

*この政府発表によると、銀行は期限到来時に利子や元本を支払えないプロジェクトへの融資延長ができる。プロジェクトを終了させる上で融資だけでは不十分な場合は、地方政府の直接支援も可能になるという。

*国務院と人民銀行、中国銀行業監督管理委員会は共同声明で、建設プロジェクトの「秩序ある振興」を確保する必要があると訴えた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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