February 8, 2016 / 4:41 AM / 4 years ago

コラム:中国資金流出めぐる一問一答、当局は阻止できるか

[北京 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国からかつてないほど急速なペースで資金が流出している。昨年の外貨準備高は5130億ドル減って3兆3300億ドルと、20年にわたる外貨準備の増大の流れが逆転した。これが人民元の下げ圧力となり、金融市場を動揺させ、さらなる資金流出を促している。

 2月5日、中国からかつてないほど急速なペースで資金が流出している。写真は、ドルと人民元の紙幣。北京で1月撮影(2016年 ロイター/Jason Lee)

BREAKINGVIEWSは資金流出の背後にあるさまざまな要素に目を向け、次に何か起こりそうかについてQ&A方式で以下に記した。

─西側諸国はかつて中国の外貨準備増大に不満を表明していたのに、なぜ縮小に懸念を抱くのか。

これまでずっと、中国の外貨準備の蓄積は人民元が人為的に低く抑えられていた結果だった。2012年まで国際通貨基金(IMF)は人民元が過小評価されていると主張していた。しかし実際には14年半ばまでの10年間に、人民元はドルに対して25%上昇している。通貨高と高成長、相対的に高い金利水準が相まって、海外投資家の資金を引き寄せていたのだ。同じ理由から中国企業は海外での借り入れを積極化した。

ところが今、このプロセスが逆流している。中国企業や投資家が人民元をドルに転換するにつれて、国内の流動性が低下した。資金流出によって当局は、減速を続ける経済をてこ入れするために利下げをしたり、銀行預金準備率を引き下げることが難しくなっている面もある。

一方で外国投資家は、急激な通貨切り下げが各国間の通貨安競争を招くのではないかと心配している。

─外貨準備の減少を見れば、中国からどのぐらいの規模で資金が出て行ったかが分かるか。

正確には分からない。外貨準備減少の一部はユーロ安など保有通貨の減価によるものだ。株安や債券価格下落も外貨準備を目減りさせる。中国国家外為管理局(SAFE)によると、この2つの要因で昨年の外貨準備は1700億ドル減少した。中国は依然として大幅な貿易黒字を計上しており、これは逆に外貨準備を押し上げた。

資金流出については、4つの要因が働いている。それは(1)中国企業による海外での買収(2)外貨建て借り入れの返済(3)外国投資家の資金引き揚げ(4)中国人による旅行や海外資産投資のための人民元売り──だ。

いずれも先進国なら冷静な動きができるが、中国の場合はパニック的な資金流出へとつながる恐れがある。

─中国政府が事態は全面的にコントロールされていると表明しているのに、何が資金流出に拍車を掛けているのか。

人民銀行(中央銀行)が昨年8月、人民元の対ドル相場の2%下落を容認した切り下げを実施したことが、不安を巻き起こした。これは人民元をより市場メカニズムに基づいた値動きにしていく政策の一環とみなされていたが、実は8月以降、人民銀行が元下支えのために4050億ドルも費やしてたというのが国際金融協会(IIF)の見積もりだ。外貨準備は12月だけで1100億ドル減少している。今年1月はもっと急激に減少したかもしれない。国営メディアはジョージ・ソロス氏のような国際的な投資家に対して、緊張を高めるだけの役割しか持っていないと批判している。

本当のところ、中国の外貨準備をこれまで減らしてきた最大の要素は、企業によるドル建て債の返済だ。国際決済銀行(BIS)によると、昨年9月末時点で期間1年以内の対外借り入れ額は6260億ドルで、14年半ばの8580億ドルから減った。対外融資は7─9月期だけで1190億ドル減少した。

─それでは中国の外貨建て債務返済が一段落して、外貨準備が安定化するのはいつになるのか。

まだドル建て債務の残高はかなり大きい。短期のローンは最大で5000億ドルに上るかもしれない。そして海外からの投資という別の要素もある。IIFの推定では、昨年の中国に対する外国直接投資(FDI)は2290億ドルで、依然として流出額の1170億ドルを上回っている。もっともFDIが鈍化する一方、中国企業の海外投資は活発化しつつある。中国化工集団(ケムチャイナ)がスイスのシンジェンタを430億ドルで買収する提案をしたのはその一例だ。

HSBCによると、中国では企業と家計の資産に占める海外比率は2%弱と、韓国の14%前後などと比べると非常に低く、資産を分散化させる動きが強まっている。共産党が汚職取り締まりを続けているため、富裕層はより安全な海外に資金を移そうという心理が一層高まっている。

─外貨準備はどのぐらいで枯渇するのか。

中国の外貨準備高はなお3兆ドル余りと世界最大で、人民銀行が通貨防衛のために毎月1000億ドルを使い続けても、すべてなくなるには3年近くかかる。だが外貨準備における流動性の高い資産の割合ははっきりしていない。いずれにしても当局は取引フローを規制し、通貨の急変動を避けるためのバッファーを必要としている。つまり外貨準備が消え失せる時期はずっと早くなるだろう。

─海外への資金流出防止に向け当局は何ができるか。

相当多くの手がある。人民銀行は国境を越える資本取引の規制を幾分緩めたとはいえ、まだ多くの規制が残っている。かつては規制の適用も手ぬるかったが、今は変わりつつある。規制当局は沿海地方の銀行に対して、外為取引のチェックを厳しく行うよう命じている。一部外銀はオンショア外為取引を禁止され、香港では投機筋の人民元売りを抑えるために人民元の借り入れ金利が押し上げられた。

為替管理自体を厳格化するのは難しいだろう。例えば当局は、国民が海外に持ち出す外貨上限額を現行の毎年5万ドルから下げようと思えば下げられるが、国民の不安感を助長するだけになる。外国投資家の資金引き揚げを制限すれば、新規投資を遠ざけてしまう。

─人民元のコントロールは有効か。

最終的には機能しない。当局は海外への資金移転手続きをより面倒にすることで資金流出のスピードを遅くすることは可能でも、あらゆる経路で資金流出を止めようとすれば、貿易に打撃を与えたり、自ら経済の先行きに自信がないと認めることになる。

貿易業者はこれまで輸出入のインボイスを水増しすることで、資本規制をすり抜けてきた。個人もマカオにギャンブルに行くか、国内の口座とリンクしているクレジットカードで海外の製品を買ったり、もっと単純に人民元紙幣を詰め込んだスーツケースを持ち出せば、海外に資金を移動できる。

─中国当局はほかに何ができるか。

1回で大幅な切り下げを実施すれば、人民元が過大評価されているとの懸念には対処できる。しかしこれは多額の対外債務を抱える中国企業を苦しめ、世界の市場を大混乱に陥らせる。ともかく政策担当者にとって自分たちの信認と人民元の安定が一蓮托生である以上、切り下げは人民元のコントロールをより困難にしてしまいかねない。

代わりの手段は、人民元の緩やかな下落を誘導し、投資家がさらなる下落を予想するのに合わせる形で、外貨準備を使うことだ。資金流出が主に中国企業の外貨建て債務返済と国内から海外への投資増加に起因する限りは、人民元の下げ圧力は許容できる。ただし、国民が自らの手元資金を大量に海外に移し始めると、すべての想定は崩れ去ってしまうだろう。

●背景となるニュース

*SAFEは4日、昨年の外貨準備高の減少額5130億ドルの約3分の1は、通貨と資産の価格変動によって説明できるとの見方を示した。それによると3423億ドルの減少は貿易・投資面の取引が原因だったが、1703億ドルの減少は通貨・資産の価格変動がもたらした。保有外貨のバスケットの価値は、ドル高に伴って低下した。

*SAFEが発表した昨年の経常収支(速報値)は2930億ドルの黒字、資本・金融収支は1610億ドルの赤字だった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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