September 23, 2018 / 11:43 PM / 24 days ago

焦点:野放しの中国賃貸市場、北京で平均家賃が2割アップ

[北京/杭州 14日 ロイター] - 中国の習近平国家主席が昨年、賃貸住宅の供給を拡大すると約束したとき、数百万人の中国の若者は、ついに手ごろな家賃で住まいを借りられるようになると期待した。だがこの政策により、予期せぬ副作用が生じた。

9月14日、中国の習近平国家主席が昨年、賃貸住宅の供給を拡大すると約束したとき、数百万人の中国の若者は、ついに手ごろな家賃で住まいを借りられるようになると期待した。北京の住宅地区で2017年1月撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

不動産投資家が大挙して賃貸市場に参入し、家賃が劇的に値上がりしたのだ。

今夏、中国の主要都市では家賃が2桁の伸び率で上昇し、習氏が救済を誓った、主にホワイトカラー労働者や新卒者などの層が、より狭いアパートや人気のない地区への引っ越しを余儀なくされた。

投資家からの出資で潤沢な資金を持つ「自如」や「我愛我家」000560.szのような企業はこの1年、数十万戸もの賃貸住宅を積極的に開発した。

だが、供給が増えても、こうした住宅の家賃は安くなっていない。

中国房地産業協会(中国の不動産業協会)のデータによると、北京では8月、平均家賃が前年同月比21.16%上昇した。昨年同月は、同3.12%だった。中国の他の主要都市でも、同様の傾向が見られた。

Wang Zhiluさん(23)は昨年、北京の中間所得層が多く住む地区に月3000元(約4万9000円)で部屋を借りた。いま彼は、同じような地区で部屋を借りるのに4500元払っている。

都市部での生活費の上昇は、多くの人の賃金上昇ペースを上回っており、家賃の急騰で市民の不満が大きく広がっている。

「家賃の支払いは月給の3割程度を占めるほどになった。その一方で、私の住宅環境は悪くなっている」と、北京のオフィスマネジャーTian Enyuさん(35)は言う。

協会によると、今夏は少なくとも19の省都で家賃が急上昇しており、中でも四川省成都では、8月の家賃が前年同月比32.95%と最も上昇率が高かった。

<積極的に拡大>

投資家は、賃貸住宅セクターにこぞって参入している。

中国の不動産ブローカー鏈家のZuo Hui会長が所有する自如は1月、インターネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)(0700.HK)、投資会社ウォーバーグ・ピンカス、投資ファンドのセコイア・キャピタルなどから、40億元を調達した。

シンガポール政府投資公社(GIC)は5月、ノバ・プロパティー・インベストメントと共に、43億元を投じて北京や上海などの都市で賃貸アパートを取得するベンチャーを立ち上げた。

米投資会社タイガー・グローバル・マネジメントは6月、北京の賃貸アパート運営会社「蛋殻公寓」のために、7000万ドル(約78億円)の資金調達ラウンドを行った。

自如は、中国に約50万戸の賃貸物件を抱え、2017年末の市場占有率は30%だったことが、不動産情報サイトMeadin.comの4月のリポートをロイターが分析したところ明らかとなった。

我愛我家傘下の賃貸部門「相寓好房」が、同27%で2位だった。

Meadin.comによると、昨年末の時点で166万戸の賃貸物件が賃貸会社か開発会社に所有または運営されていた。

自如や相寓好房は、所有者から物件を入手し、リフォームした上でプレミアムを上乗せして貸し出すことが多い。これは、賃借人にとって「強制アップグレード」だと呼ぶ専門家もいる。

「こうした企業は今年、とても積極的にアパート物件の確保に動いている」。今年5月、北京に所有する寝室が2つあるアパートを、相寓好房の提案を蹴って自如に月額7800元で貸し出したYu Runzeさんはそう話す。

過去に我愛我家で不動産エージェントとして働いていた山西省太原のZhang Yongjingさんは、相寓好房が物件を貸し出す際の家賃は、同社が所有者に支払う額の倍程度になることが多いと話す。

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自如と我愛我家からコメントは得られなかった。

<ゆるい規制>

大手の不動産賃貸会社が価格を吊り上げているとして批判される一方で、規制がないために、規制当局の既存ルール遵守を徹底させる力が制限されていると指摘する不動産アナリストや政府筋もいる。

中国政府の住宅監督当局は8月、不動産賃貸会社に対し、銀行や他の金融機関から調達した資金を使って市場価格を上回る価格で物件を入手しないよう求めた。

しかし、そうした行為を行っているとみられる企業に対して行動を起こすことはなかった。

公式な家賃観測の仕組みはないものの、「状況を注視している」と当局筋は話した。

家賃高騰の原因は、恒常的な賃貸物件の不足にあると指摘するアナリストもいる。

政府が資金を出す公営賃貸住宅の数は限られている。また、中国の主要都市では、人口流入に対する取り締まりが厳しくなるなか、土地の供給量全体が縮小している。

我愛我家の副社長だったHu Jinghui氏によると、北京には理論上90万件の賃貸物件があるはずだが、中国の不動産所有者は物件価値の値上がりを待って、空室のまま遊ばせておくほうを好むという。

中国政府は、公式な空室率を公表していない。住宅監督当局や統計当局は、コメントの求めに応じなかった。

<破産事案>

わずかな規制しかない分野で急成長が起きたことで、予期せぬ金融リスクも生じている。

今年8月、浙江省杭州の賃貸会社「鼎寓」が破産した。同社の経営者は破綻の理由について、市場が急速に拡大したためと説明。これが、同セクター初の大規模倒産となった。

物件の調達を確実にするため、鼎寓は、後で貸し出す際の家賃よりも高い賃料を物件所有者に支払っていた。Luと名乗る女性はロイターに対し、鼎寓から今年借りた部屋の家賃は月4700元だったが、鼎寓はその部屋の所有者に5600元支払っていたと話した。

ロイターは鼎寓に接触できなかった。

Luさんは、消費者金融会社の愛上街と、1年間の消費者ローン契約を結んで家賃を支払うことを鼎寓に求められたという。

鼎寓が破産した後、Luさんの部屋の所有者には賃料が入らなくなり、Luさんにも残高2万3500元のローンが残された。

習近平主席が賃貸セクターへの取り組みを宣言したことを受け、政府が賃貸市場に介入するかは不透明だ。

中国4大銀行の1つに勤める関係筋は、賃貸セクターへの貸し出しを厳しくしろという指示は受けていないと話した。

政府に近い複数の人物は、ロイターに対し、リスクが高まるなかでも大きな政策変更があるとは把握していないと話した。

「市場には、バランスも透明性もない」と、国土資源省のある人物は話し、それでも「習主席が何かせよと指示しない限り、担当部局は動かない」と付け加えた。

(Yawen Chen記者、Shu Zhang記者、John Ruwitch記者、翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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