March 18, 2019 / 5:11 AM / 5 months ago

焦点:中国革命の「聖地」で不動産ブーム、地方リスクを露呈

[延安(中国) 13日 ロイター] - 集合住宅の建築模型がずらりと並ぶ中国北西部の地方都市・延安のショールームでは、たくさんの間取り図を眺める若いカップルが、難しい決断を迫られている。

 3月13日、集合住宅の建築模型がずらりと並ぶ中国北西部の地方都市・延安のショールームでは、たくさんの間取り図を眺める若いカップルが、難しい決断を迫られている。写真は延安で1月撮影(2019年 ロイター/Yawen Chen)

北京や上海といった大都市では、住宅価格に沈静化の兆候が見受けられるが、延安など多くの中小都市では価格高騰が今も続いている。Jia Luyuさん(30歳)夫妻のような購入希望者は、今買わなければ手が出なくなってしまうというプレッシャーにさらされている。

思い悩んだ末、この夫婦は、虎の子の貯金をはたいて3寝室あるマンションを110万元(約1830万円)で購入することを決意した。場所は、延安を取り巻く黄土の丘陵に新たに造成された地区だ。

警察署で事務員として働くJiaさんは、購入契約書にサインしながら、「この辺りでは値上がりが急すぎる」と語る。初めての出産を予定する夫婦として、住宅確保は大切だと彼女は言う。

ここ10年で最長となった不動産ブームを抑制しようと、中国政府は大都市における不動産価格の沈静化に努めているものの、延安のように経済基盤の弱い都市については放置したままだ。

国内経済の減速が、対米貿易紛争によってさらに深刻化する影響を懸念する中国政府は、延安など数百もの中小都市における不動産価格については、急騰するままに任せている。

金融緩和政策と不動産市場への公的介入によって、価格急騰がさらにあおられている。これにより、地方政府がある種の住宅バブルを生み出す一方で、中央政府の抑制方針にもかかわらず、地方の債務負担を膨らませているのではないかとの懸念が広がっている。

小規模な地方都市を中心とした336都市を調査対象とする中国の不動産協会によれば、そのうち200を超える都市で昨年、不動産価格が2桁の上昇を記録。延安も12月、前年同月比で15%を越える上昇を記録した。

一部の新規プロジェクトの価格は昨年、2倍近くに上昇したと、ロイターが取材した10数人の住宅購入者や不動産仲介業者は語った。

建設ブームによって、延安はここ数年のあいだに、1930年代の中国共産主義革命の中心地として有名だった小さな町から、200万人の人口を抱える活気に満ちた都市へと変貌を遂げた。

だが、繁栄する中国沿海部の地域から800キロ以上も離れた同市は、価格下落に苦しむ原油生産に大きく依存したままであり、成長の鍵は不動産セクターだと、地元当局は考えている。

延安市当局は、住宅市場に介入。融資の解禁や、老朽化住宅の取り壊しによる在庫削減で、新築住宅の販売を促進しようとしている。

また市当局は、延安の新地区開発にも巨額の投資を行っている。Jiaさん夫婦が、建設の進む新しい学校や病院に魅せられてマンションを購入したのも、この新地区だ。Jiaさんが勤務するオフィスも、多くの政府機関とともに、延安旧市街から新地区に移転した。

「少し前なら、このあたりで家を買おうなどと思う人など、ほとんどいなかった。価格は今の半分以下だったのに、皮肉な話だ」とJiaさんは言う。

需要拡大の原因を探れば、延安が全国規模で行われているスラム街の再開発計画に加わったことに突き当たる。計画資金はもっぱら中国開発銀行(CDB)などの政策銀行が提供。これによって、延安では過去2年間で9万戸以上の住宅が取り壊された。

取り壊しの対象となった住民には、数十万元から数百万元の補償金が提供されたことが、延安市民への取材と、ネットで公開されている市政府の提案書で明らかになった。

32歳のタクシー運転手、Li Xingさんは、農産市場の裏にあった泥壁の自宅が今年取り壊される予定であり、その補償金を新しいマンションの頭金に充てようと計画している、と語る。

Wangという姓だけ明かしてくれた市の住宅局職員は、延安の住宅在庫は「ほぼゼロ」になったと語る。この職員は、延安市は現在の住宅政策を続けるだろうと話した。

中国指導部は12月、不動産市場の下降リスクが高まっているため、今年は都市レベルでのさらなる政策緩和が容認されるだろうと示唆している。地元の事情に基づいてそれぞれの不動産市場を「安定させる」任務が各都市に与えられるとしている。

とはいえ、延安市は不動産ブームが目立たないよう配慮しているようだ。住宅局は9月、住宅価格の月次データ公表を中止。政府系メディアの人民日報は、延安市の住宅価格上昇が陝西省で最も激しかったと報じたが、市住宅局はコメントを拒否した。

<ブーム維持は「政府次第」>

価格上昇につれて、延安新地区などの開発プロジェクトにはデベロッパーが群がるようになった。陽光城集団(000671.SZ)はこの地域で住宅開発プロジェクトの建設を進めており、その規模はサッカー用グラウンド70面ほど、価格は1平方メートル当たり平均8600元だ。

融創中国控股(1918.HK)や新城発展(601155.SS)などの大手デベロッパーも、同地域内の用地取得入札に積極的に参加しており、数百戸のマンション建設を計画している。

延安の新城発展で24人の営業チームを率いるZhang Ning氏は、昨年10月以降は販売ペースがやや鈍っているが、楽観していると話す。

「年末までには完売すると思う」と語るZhang氏の新城発展は、約800戸のマンションを計画している。延安新地区の住宅用地価は、2015年以来約5倍に上昇したという。

多数の新築住宅販売を認めたことは、明らかに地元経済にとってプラスに働いた、と市当局は言う。不動産セクターは延安市の2017年の経済成長率を0.4ポイント押し上げ、他の関連産業にも「明らかにポジティブな影響」を与えたと指摘する。

2018年の不動産投資は倍増した。ロイターが中指研究院のデータを基に計算したところ、1─11月の土地売却額は総額28億元に達し、前年比で450%以上増加している。

「このブームを市場が維持できるかどうかは、政府が財政難に陥るかどうかにかかっている」とZhang氏。「少し調べれば、この新地区建築に市政府がどれだけ債務を重ねたかは想像できるだろう」

「急速に市況が冷え込む兆候が見えたら、彼らは確実に不動産市場の安定を維持しようとするだろう」と彼は言葉を加えた。

延安市政府にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

<内在するリスク>

中国人民銀行(中央銀行)の顧問を務めるSheng Songcheng氏は、1月開催されたフォーラムで、中小都市のリスクを懸念している、と発言。住宅価格の対所得比で見ると、中国の住宅バブルは、1990年代に崩壊した当時の日本のバブルより大きくなっているという。

「オーバーシューティングのリスクがあるのは確かだ」と中国民生銀行研究所の金融センター(北京)でディレクターを務めるWang Yifeng氏は言う。

中国人民銀行に近い当局者はロイターに対し、同中銀は不動産リスク抑制に努めていると述べ、「地方政府は、不動産購入者に抜け道を与え、高価格を維持できる方法を常に見つけるだろう」と認めた。

だが、CDBのLiu Yongチーフエコノミストは、不動産市場の減速が地方経済の成長を阻害するとの懸念を一蹴。CDBの各支店は状況を監視しており、プロジェクトの再評価と政策調整を行っている、と述べた。

「どんな状況にも通用する万能のアプローチはない」とLiu氏はロイターに語った。

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リスクがあるとはいえ、住民の多くは、中国共産党の伝承における延安の役割を考えれば(習近平国家主席も、若い頃、この地域の村で10年近く働いていた)、不景気とは無縁でいられると感じている。

延安でマンション2戸を民泊仲介のエアビーアンドビーを使って運営しているYang Quanさんは、今年は市内に新たな住宅を買う予定だと語る。「習近平氏が権力を握っている限り、延安の不動産価格は上がり続けるだろう」

(翻訳:エァクレーレン)

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