July 30, 2014 / 4:27 AM / 5 years ago

焦点:食肉問題は「氷山の一角」、穴だらけの中国食品検査

[上海/香港 30日 ロイター] - 期限切れ食肉を出荷していた問題で、ファストフード業界を巻き込む世界的な食品スキャンダルの震源地となった中国企業、上海福喜食品。問題発覚前に同社の工場を検査官が訪れた時には、衛生的な服装の従業員が肉を処理し、管理者が処理工程を厳しく監視していたように映った。

 7月30日、大手外食チェーンに影響を与えた期限切れ食肉問題は、急拡大する中国食品業界での安全検査の難しさを浮き彫りにした。江蘇省にある食品工場で1月撮影(2014年 ロイター)

しかし、従業員の1人がロイターに明かしたところによると、その前日に抜き打ち検査が行われていれば、期限切れ肉が詰まった青いビニール袋が床に積み上げられているのを検査官は目の当たりにしたはずだという。

同従業員は匿名を条件に「翌日には(古い)肉はなくなっていた。誰かが処分したに違いない。上長は検査だと言っていた」と語った。生産量を増やしてコストを削減するために古い肉を加工ラインに戻すのは、現場では慣例的に行われていたという。

上海福喜は、米食品卸売大手OSIグループを親会社に持つ。上海のテレビ局が潜入取材で同社のずさんな安全管理の実態を明らかにした今月20日、当局は問題の工場を閉鎖した。警察はその後、同社トップや品質管理の責任者を含む5人の身柄を拘束した。

米マクドナルド(MCD.N)やケンタッキーフライドチキン(KFC)を運営する米ヤム・ブランズ(YUM.N)など大手外食チェーンに影響を与えた今回の問題は、急拡大する中国食品業界での安全検査の難しさを浮き彫りにした。中国はヤムにとって世界最大、マクドナルドにとっては店舗数で世界3位の巨大市場となっている。

中国の消費者は、こうした外資系外食ブランドでは相対的に品質の確かな食事が提供されると考えて足を運ぶが、明るい店舗の裏側にあるサプライチェーンは、規制や監視が行き届かない多くの加工工場に依存している。ヤムは、中国国内だけで約650の業者から供給を受けている。

中国では2008年にメラミンが混入した粉ミルクを飲んだ乳幼児6人が死亡する事件があったが、1兆ドル規模に上る食品加工業界はそれ以降、信頼回復を果たせていない。中国国家食品薬品監督管理局(CFDA)の責任者は今週、英字紙チャイナ・デイリーに対し、食品安全の状況は「依然厳しい」とし、既存の監視システムは「効果的ではない」と語っていた。

中国の食品検査業界には5000社以上が存在し、来年までには80億元(約1320億円)を超える産業になるとみられる。しかし関係業界の幹部らは、監督体制は「薄っぺら」だと表現する。

中国食肉協会のGao Guan副事務局長はロイターに対し、食品の安全に関する法律が不完全で監督責任の所在も曖昧なことが、規制当局の職務遂行を難しくしていると指摘。「先進国では人は交通規則に従い、信号が赤なら渡らない。しかし中国では、これは当てはまらない。他の人が渡っていれば渡り、誰も信号など気にしない。この環境下では、上海福喜のようなケースを避けるの非常に難しい」と話した。

<全体像は把握できず>

上海福喜の親会社である米OSIは、フォーブス誌の民間企業ランキングでは62位に位置し、年間売上高は60億ドルに迫る。同社は今週、上海福喜が生産した全ての製品を市場から回収すると発表、中国国内の工場すべてを見直す方針を明らかにした。生産工程の常時監視を含む「徹底的な監査実施」に向け、専門家をくまなく配置するとした。

上海福喜のスキャンダルによって露呈したのは、大手外資系ブランドが中国で傘下のサプライチェーンや加工工場を監視することの難しさだ。

グローバル・サプライ・チェーン・カウンシルの上海事務局長を務めるマックス・ヘンリー氏は「品質管理監査をめぐる問題は、工場は通常(事前に)知っていて準備していることだ」と語った。

複数の監査関係者はロイターに対し、過当な価格競争などにさらされている中国の供給業者は、工場の一部しか見せなかったり、偽工場に案内することで不透明な慣行を隠そうとしたりすることがあり、コンプライアンスの全体像はめったに把握できないと説明する。

監査会社ビューローベリタスのエベリン・マザリーラット氏は「彼らは顧客に工場の最高の姿を見せたいので、何か問題があれば隠さないといけない」と語った。

米農務省(USDA)が2004年と2010年に実施した調査では、上海福喜にも「お墨付き」が与えられていた。しかし、食品安全問題の専門家からは、USDAの監査方式に批判の声も出ている。

<穴だらけのシステム>

確かに、監査課程に不備があるのは、中国に限ったことではない。

「破綻したシステムだ」。監査体制をこう批判するのは、食品業界のコンサル会社、米IEHラボラトリーズ・アンド・コンサルティング・グループのマンスール・サマドポア最高経営責任者(CEO)。通常の監査はあらかじめ予定され、公表されているアンケートに沿って行われているため、「自分たちが売っている食品の安全に対する責任を放棄する方法になっている」と語った。

ヤムやマクドナルドのような大手企業は、大量仕入れによる低価格での調達で事業を展開しており、供給業者側は薄い利益をめぐって激しい競争を繰り広げている。

上海福喜の問題は氷山の一角に過ぎない。

米国の裁判資料によると、ヤムの株主は昨年に同社を相手取り、中国の鶏肉供給会社に対する監督が不行き届きであり、中国での成長を見誤らせているとして4件の訴訟を起こした。ヤム側は、サプライヤー1社につき、少なくとも年1回は監査を実施していると主張している。

上海にあるビジネススクール、中欧国際工商学院で非常勤教授を務めるリチャード・ブルベーカー氏は「西側企業は明らかに穴の開いた管理体制を導入した。最も多くのサプライヤーを抱えるKFCが最大の問題を抱えているのだろう」と述べた。

(Adam Jourdan記者、Clare Baldwin記者 翻訳:宮井伸明 編集:伊藤典子)

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