[ロンドン 26日 ロイター] - 中国は人民元の再切り下げを迫られ、人民元の下落率は20─50%に達する──。ごく一部の有力ヘッジファンドがこうした大胆な予想に基づいてポジションを構築しつつある。
欧州債務危機を見ぬいて数億ドルの利益を稼いだテキサス州に拠点を置くコリエンテ・パートナーズは少なくとも昨年9月終盤以降、「ローデルタ」のオプション買いを増やしている。これは最大で50%の人民元安という非常に確率の低い事態への賭けを意味する。
コリエンテの見立てでは、中国政府がいくら3兆3000億ドルという膨大な外貨準備を保有していても、国内の個人資産家や企業による海外への資金シフトは当局が食い止めたりコントロールできないほど強力だという。
ロンドンを本拠とするオムニ・マクロ・ファンドも2014年初め以降人民元安に賭ける取引を続けているほか、市場関係者によると46億ドルを運用するムーア・キャピタル・マクロ・ファンドなどの米ヘッジファンド勢の影もちらついている。
より劇的な人民元安を見込むこれらのファンドの予想が正しいかどうかは、春節(旧正月)休暇明けの2月第2週に海外への資金流出が再び活発化するかどうかではっきりするとの見方が多い。
一連の動きは、ジョージ・ソロス氏が率いるファンドが1990年代初めに欧州各国に対して通貨売りを仕掛けて勝利したケースも彷彿(ほうふつ)させる。
コリエンテの運用担当者マーク・ハート氏は今月のテレビ番組で「中国は非常に急激な通貨切り下げができる機会を得ている。迅速にそれを実行するのが賢明だ」と語っている。
<少数派>
人民元安の予想自体はもはや少数意見とはいえないが、大きく見方が分かれるのは下落ペースと下落率だ。
コリエンテやオムニは、中国当局が人民元の下げ圧力に抵抗を続ければ、外貨準備が目減りしていくので今年中に一度に大幅な切り下げを迫られる可能性があるとみている。
だからこそローデルタのオプションを買うという行動につながる。
一方で正反対の立場にあるのは、中国が落ち着いたペースで人民元安を誘導できると考えるファンド勢で、彼らは緩やかな人民元の下落に賭けるオプションを購入しながらローデルタを売ってヘッジしている。
実際、ファンドマネジャーの中で、年内に人民元が10%以上下落すると想定する向きは乏しい。
ハーミーズ・インベストメント・マネジメントの新興国市場責任者ゲーリー・グリーンバーグ氏は「一挙に人民元を切り下げても何の解決にもならず、事態を悪化させるだけだ」と話す。コリエンテのハート氏も「多くのマクロ・ファンドは中国が緩やかな人民元安を管理していく方向に賭けている」と認めた。
それでもコリエンテやオムニの行動は変わらない。彼らによると、中国政府は1月に外貨準備を新たに2000億ドル使用した可能性があり、そのペースなら年内に介入原資がほとんど「弾切れ」となり、人民元はさらに18─20%下がるだろうという。
(Patrick Graham記者)
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