[香港 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国国家統計局は2022年の成長率が3%だったと発表した。市場の予想は上回ったが、5.5%前後という政府の目標は大幅に下回った。消費を抑制する政策が終了し、成長の足かせが取り除かれつつあるが、財政資金が少なく、債務が増大しインフレが上昇する中、成長を促進する手段が不足している。
予想を上回る成長に寄与したのは、第4・四半期の強さだ。この期間に新型コロナウイルス感染対策は目まぐるしく変化した。感染力の強いオミクロン株が広がり、地方政府は当初ロックダウン(都市封鎖)を強化、その影響で消費が冷え込んだ。その後、中央政府は突然、ゼロコロナ政策を廃止した。感染防止措置が緩和される一方で、感染者が急増した。北京大学の推計では、1月11日時点で推定約9億人が感染しているとされた。このため、エコノミストの中には、第4・四半期に国内総生産(GDP)が当局の発表通り前年比で2.9%増加したのか疑問視する向きもいる。
とはいえ、ゼロコロナ政策の終了は不動産開発業者や大手民間テック企業への取り締まりなどの緩和とあわせ、23年の回復の基礎になっている。しかし中国の回復には、足かせを取り除くだけでは十分でない。生産の4分の1を占める不動産市場は依然低迷。昨年の不動産向け投資は、99年の統計開始以降で初めて減少した。国際決済銀行(BIS)のデータによると、昨年第2・四半期時点の非金融部門債務はGDP比300%近くとなり、政府の削減努力にもかかわらず債務が膨張している。
このような状況下で金融・財政の選択肢は限られている。中国のコアインフレ率は0.7%と落ち着いているが、エネルギー・食料価格はそうでない。米連邦準備理事会(FRB)は引き締めを続けている。地方政府が打ち出せる景気刺激策は限られており、昨年1─11月の歳入は3%減少、土地売却収入は22%減少した。政策当局者は今年の財政赤字をGDP比3%とみているとブルームバーグは伝えている。22年は2.8%だった。
これでは市場の自信をとても回復できない。GDP発表後、中国の株価指数は下落した。国有企業への傾注がさらに強まる可能性もある。たとえば中国人民銀行は昨年、1兆元(1480億ドル)を中央政府に納付、成長に向けた資金となった。いずれにせよ、第4・四半期のアウトパフォームが輝きが失うのにそう時間はかからないだろう。
●背景となるニュース
*中国成長率、22年3%で政府目標大幅下回る 人口減など課題山積
*〔ロイター調査〕今年の中国成長率4.9%に持ち直す見通し、政府のてこ入れ期待
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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