[香港 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の街角では買い物客が目に見えて増えており、こうした状況は経済指標にも表れている。3月の小売売上高は10%超急増し、第1・四半期の中国国内総生産(GDP)は予想を上回る4.5%増を記録した。
不動産も安定化の兆しを見せている。ただ、需要には依然ばらつきが大きい。今回の良好なGDPは新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためのロックダウン(都市封鎖)により前年の経済成長が低かったことも影響しており、こうしたベース効果は今後薄れていくことだろう。
リスクは、消費回復が高級品と生活必需品に二分され、中間が振るわないことだ。例えば、ポルシェは、中国販売が好調で、第1・四半期の販売台数が過去最高の増加を記録した。一方、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)は第1・四半期決算で、同社のアプリによる決済が低価格の消費財に集中していると明らかにした。中国の家計貯蓄は第1・四半期に10兆元(1兆4000億ドル)増加し、支出するより貯蓄に励む姿勢が鮮明になっている。
GDPの4分の1程度を占めるとされる不動産については、富裕な都市では住宅価格が回復しているのに対し、危機は内陸部に集中している。不動産の建設・投資は依然として低調な状態が続いている。
インフレ率が0.7%にとどまる中、回復を拡大し定着させるために政府が的を絞った景気刺激策を講じる余地はある。問題は、それをどう使うかだ。インフラへの財政支出は成長と雇用をもたらす。しかし、経済的に困難な地域に地下鉄などを建設することはリターンが小さいため、地方債危機を悪化させる。ゴールドマン・サックスの調査によれば、投資家は中国の地方債務を米中関係に次いで懸念している。
金利調整は習近平国家主席が嫌う不動産投機に流れる可能性があり、ビジネス界はとにかく信用より売り上げを懸念している。新規銀行融資は第1・四半期に10兆6000億元と過去最高を記録したが、民間の固定資産投資には結び付かず、ほとんど成長していない。工業部門企業利益は1─2月に前年比約23%減少した。
中国人民銀行(中央銀行)の金融政策委員会のメンバーであるCai Fang氏は3月の講演で、弱い所得の伸びを補うため4兆元を家計に直接移転することを提案した。しかし、第1・四半期GDPが予想を大幅に上回ったことを踏まえると、財政ストレスに対する財政省の懸念と相まって、実現の可能性は極めて低い。だから、中国株はGDP統計をはやさなかったのだろう。もし、一見バラ色の第1・四半期GDPが誤解だった場合、中国の経済再開ブームは急速にしぼみかねない。
●背景となるニュース
* 中国国家統計局が18日発表した第1・四半期のGDPは前年同期比4.5%増加した。伸び率は昨年第4・四半期の2.9%から加速し、1年ぶりの高水準を記録。ロイターがまとめたアナリスト予想の4.0%も上回った。
*3月の貿易統計によると、輸出は前年比14.8%増と、予想外に増加。輸入は1.4%減で、1─2月の10.2%減少よりは小幅なマイナスにとどまった。
*3月の小売売上高は前年比10.6%増加した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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