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コラム

コラム:中国「5%前後」成長目標は容易か、深刻な問題反映

[香港 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国は2023年にGDP(国内総生産)を「5%前後」成長させることを目標としている。これは昨年実績の3%がここ数十年で最も低いパフォーマンスであったことを考えると、低く見えるかもしれない。しかし、5日に出てきた演説や政策文書を総合的にみると、深刻な問題が垣間見える。

 3月6日、中国は2023年にGDP(国内総生産)を「5%前後」成長させることを目標としてい。写真は1月、春節の帰省客で込み合う上海の駅(2023年 ロイター/Aly Song)

国会に相当する全国人民代表大会(全人代)と国政助言機関の人民政治協商会議(政協)を合わせた「両会」は今年、短期開催となり、設定された目標も比較的簡潔なものだった。プレナム・チャイナのチェン・ロン氏によると、政府活動報告では未来への言及が昨年の22ページに対してわずか6ページにとどまった。

これは報告を行った李克強首相が他の改革派と共に引退することになっているからかもしれない。習近平国家主席への忠誠心が強く、あまりパッとしない経歴の持ち主が後任となる。政府は目標を保守的にし、達成方法を通常よりあいまいにすることで、新任者が失敗しづらくしている。

これは賢明なことだ。年初に製造業とサービス業が回復したのは厳格な新型コロナウイルス規制が突如終了したことが主因だ。従って、持続可能性には疑問がある。人々がこの3年間に蓄積した1兆ドル近い余剰貯蓄を23年に旅行や飲食、衣類に放出すれば、消費ブームに拍車がかかるだろう。一方、家計の富の70%は不動産が占めていると推計される中、大部分の都市で住宅価格は依然下落しており、輸出部門が低迷を脱したわけでもない。

ただ、中国は所得を上げることで家計の支出を増やすとのコミットメントを繰り返すばかりだ。財政赤字は今年、GDPの3%に設定され、22年からわずかな上昇にとどまり、「大きな買い物」を促進する以外に消費を押し上げる直接移転計画はなく、既存の需要を前倒しにするだけだ。同時に、当局は不動産投機の抑制になお力を注いでおり、この産業が成長をけん引する能力は制限されることになる。

制約は現実にある。債務危機に直面している地方政府は、銀行や債券保有者に対して約9兆ドルの債務があり、おそらく何らかの救済策を講じる必要がある。その際には国内の金融機関だけでなく、海外の債権者も犠牲になるだろう。最近になって中国人民銀行(中央銀行)幹部の汚職が問題になり、国営メディアが「享楽的」な金融関係者を取り上げる記事を出しているのは、これが背景かもしれない。

市場は今年の両会を野心が特に欠けていると判断。6日は国内の株価指数が全て下落して始まった。人事交代やさまざまな課題がある中、政府は安全策をとり、あいまいな政策方針にとどめている。投資家は何ともつまらない状況だと思うかもしれないが、現実はそうとも言えないのだ。

背景となるニュース

*中国の第14期全国人民代表大会(全人代)が5日、北京の人民大会堂で開幕した。李克強首相は政府活動報告で、2023年の経済成長率の目標を5%前後とし、昨年の目標(5.5%前後)より低く設定した。昨年の中国の成長率は3%だった。

*23年の財政赤字目標は対国内総生産(GDP)比で3.0%とした。昨年の目標は2.8%前後。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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