February 15, 2020 / 11:02 PM / 2 months ago

焦点:新型肺炎、新薬開発の中国投資熱に冷や水

[12日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大が、中国で活発化していた新薬臨床試験の妨げになり始めた。中国が持つさまざまな潜在力を利用しようと、これまで数十億ドルを投資してきた世界的な大手製薬会社にも、誤算が生じかねない事態だ。

2月12日、新型コロナウイルスの感染拡大が、中国で活発化していた新薬臨床試験の妨げになり始めた。写真は10日、武漢の病院で新型ウイルスに感染した患者を移動させる医療従事者。提供写真(2020年 ロイター/China Daily)

中国ではこれまでに新型コロナウイルスの感染者が4万4000人を超え、死者も1100人を上回った。

米国の臨床試験データベースに登録されている臨床試験の500件近くは、今回の感染源となった武漢市にある研究施設1カ所で行われていた。グローバルデータ社によると、世界全体の臨床試験のうち中国で行われている割合は5年前がおよそ10%だったが、今や20%前後まで高まっている。

中国政府は現在、武漢市を事実上封鎖し、湖北省全域や他の一部都市での移動も厳しく制限している。

昨年12月に感染が確認された今回の新型コロナウイルスが、製薬業界の臨床試験に及ぼす影響を完全に把握するにはまだ早過ぎる。しかし、今の状況がもっと長く続くようなら、業界が掲げてきた中国戦略は齟齬(そご)を来す公算が大きい。

問題は2つある。製薬会社のため臨床試験を実施する研究機関2カ所と、地元の製薬会社と医師に取材したところでは、ウイルス感染拡大防止のための中国政府の措置により、被験者が臨床試験を受けるため病院にたどり着くのが難しくなっている。その上、被験者は病院に通って自分が感染するのを不安に思っている。

中国市場向け医薬品の開発を手掛けるエベレスト・メディシンズのイアン・ウー社長兼最高財務責任者(CFO)は「病院は目下、臨床試験に注力していない。彼らにはほかに専念すべき問題が山ほどある」と指摘した。

新型コロナウイルスの感染拡大により、新たな試験の開始が遅れている上に、dメッド・バイオファーマシューティカルズのような研究機関は、試験施設に監督要員を送り込めないと話す。

関係者の医師らによると、ノバルティス(NOVN.S)の希少血液疾患治療薬や百済神州(ベイジーン)(6160.HK)のがん治療薬、天士力(タスリー)(600535.SS)の脊椎関節炎治療薬などの試験が影響を受けている。

北京を拠点とするベイジーンは、武漢市で20を超える試験を続けており、試験の遅れや混乱を最小化するよう努力しているとしながらも、新型コロナウイルス問題が同社の試験や中国での商業化の進展状況に具体的にどう波及するか、考えるのは「時期尚早」だとくぎを刺した。

ロシュ(ROG.S)、ザイ・ラブ(ZLAB.O)、和記中国医療科技(ハチソン・チャイナ・メディテック)(HCM.L)など中国で試験を手掛ける他の製薬会社も、まだ影響を見極める段階ではないとの立場だが、実際には痛みを感じている。

武漢市での試験に携わっているタスリーのShenghao Tu氏は、病院での研究がストップしたと述べ、「これは(われわれが)過去に遭遇したことがない問題だ」とお手上げの様子だった。

これは武漢市に限った話ではない。北京市と広州市でベイジーンのがん治療薬の試験を進めている2人の医師は、当局のウイルス対策が被験者の確保や収容能力を阻害していると打ち明けた。実際、試験を行う病院は現在、感染拡大防止のために患者1人に1つの病室を割り当てているため、迎え入れられる人数が減っている。

中国政府は、国内医薬品産業を「内製化」し、外国との競争力を持たせたいと期待しているが、足元の試験の遅れはそうした構想に水を差しつつある。

<外国企業による巨額投資>

一方でアストラゼネカ(AZN.L)、ロシュ、アムジェン(AMGN.O)、ノバルティスといった世界的な製薬大手は、中国に巨額の資金を投じてきた。中国の安価な臨床試験コストや、多くの被験者を確保できること、アジア市場向けの新薬を発見できる点などをメリットとみなしたからだ。

アムジェンは昨年、27億ドルでベイジーンの株式25%を取得し、中国市場向けのがん治療薬を開発することに合意した。その数週間後、臨床試験の拠点を主に中国に置く、がん治療薬を開発する製薬会社として初めて、米当局から承認を取得していた。

アムジェンの研究調査責任者デービッド・リース氏は当時、ベイジーンは中国に最優秀クラスの臨床試験の基盤を築いており、規制当局などとのつながりも強いと評価していた。

ロイターがグローバルデータの情報を分析したところでは、2015年に約32億ドルだった外国製薬会社と中国バイオテクノロジー企業の合弁やディールの規模は、昨年は少なくとも100億ドルに膨らんた。

<長期的な期待>

外国の大手がこうした投資に動いたのは、中国の規制当局が何年もかけて、医療施設を国際基準レベルに整備し、欧米の新薬承認に際して中国の臨床試験が果たす役割を高めてきた結果だ。

中国医薬品産業の動きに連動するファンドを立ち上げたロンカー・インベストメンツのブラッド・ロンカー最高経営責任者(CEO)は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、目先はディールが先送りされる恐れがあるとの見方を示した。

しかし、長い目で見れば、ウイルス問題は、医薬品・ヘルスケアセクターを真の意味で近代化するという中国の計画の「加速」を後押しすることを投資家らは期待しているという。

アムジェンは、ベイジーンの事業に混乱は見られないと強調。ノバルティスは、状況を注視、いかなる混乱にも対処すると明言した。タスリーはコメントを拒否した。

特に、今年これから始めることになっていた試験や、現在進行中で終わるまで何年もかかる試験にとっては、ウイルス感染拡大がいつ終息するかが重要になる。

和記中国医療科技のクリスチャン・ホッグCEOは楽観的だ。「これは比較的新しい現象だが、中国は資源豊富な国だ」と語っている。

昨年、上海に研究開発センターを開設したロシュは、世界全体の市場に届ける新治療薬を得る同社の戦略で、中国は鍵を握っていると主張。同センターの責任者Jing He氏はロイターに「(中国には)被験対象になれる患者が大勢いると想像できるはずだ。だから被験者をより素早く集められる」と説明した。

(Tamara Mathias記者、Roxanne Liu記者、Manojna Maddipatla記者)

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