August 31, 2018 / 8:42 AM / 2 months ago

焦点:ダム撤去で環境に舵切る中国、国有水力発電は手付かず

[楽山(中国四川省) 31日 ロイター] - 中国南西部にある四川省の山間部では、新たに設置された自然保護区における違法開発を解消するため、当局は今年、川沿いにある7基の小規模ダムを取り壊した。

8月31日、中国南西部にある四川省の山間部では、新たに設置された自然保護区における違法開発を解消するため、当局は今年、川沿いにある7基の小規模ダムを取り壊した。3日、大雨のなか四川省の大渡河にある瀑布溝ダムで行われた放水(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

これは、小さくボロボロなものも多い何百もの国内ダムや原動機を閉鎖することで、長年の無秩序開発に終止符を打ち、中国の巨大な水力発電セクターに秩序をもたらそうとする、国家的な取り組みの一環だ。

今回撤去されたダムは、流れが急で氾濫しやすいことで知られる大渡河の、名もない支流に設置されていた。大渡河は、アジア最大かつ最長の長江に流れ込んでおり、中国政府は、長江水系の数千カ所に上る小規模な水力発電プロジェクトによる「不規則な開発」によって、環境が破壊されたと説明する。

大渡河の瀑布溝ダム近くのトンネルで雨宿りする男性(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

だが、最も影響が大きいとみられる国営の大規模ダムが、今回の対象外とされているため、必ずしも環境を守る結果にはならない、と環境保護団体は主張している。

支流の1つ、周公河の流域では、農民のジャンさん(70)が、大規模ダムによって環境に壊滅的なダメージがあったと語る。

周公河でとった魚を指し示す農民のジャンさん(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

フルネームを教えてくれなかったジャンさんは、自らを「水力発電移民」と呼ぶ。10年前に国が建設したダムによって、自分の土地が水没したからだ。

ジャンさんによると、周公河の流れや温度がダムによって変化したことで、川に住む魚類が壊滅的な影響を受けており、特に四川省生まれの指導者、故トウ小平氏が愛した魚は全滅してしまったという。

周公河沿いの地すべりが起きた道に打ち上げられた魚(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

「ここの魚はすっかりまずくなってしまった。犬のエサにしかならない」。ジャンさんは自分が捕まえたハクレン3匹を指さし、そう語った。上流の貯水池が氾濫し、押し流されてきたものだという。

中国は20年前、産業を発展させ、電力網のない貧しい地方に電力をもたらそうと、積極的なダム建設の推進政策を打ち出した。

投資家が大挙して参入し、環境推進派はその熱狂を、農民たちが競って自宅に鉄鋼精錬施設を作った1958年以降の「大躍進」政策になぞらえる。農村社会だった中国の産業化を目指すこの政策は、農民が食料ではなく鉄を作り出し、飢饉(ききん)を招いたためだ。

大渡河の名もない支流に作られた民間小規模ダムのコントロールルーム(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

政府はいまや方向転換を図っており、環境問題を意識した中国指導部は、小規模発電ダムをどの程度閉鎖するか決断を迫られている。同時に、国による巨額投資も守る必要もある。

「水力発電は、当時よい政策だった。中国ではよくあることだが、数が多くなりすぎて管理できなくなった」と、成都を拠点とする中国科学院の水力発電専門家、陳国階氏は言う。

四川省の状況が、この話を裏付けている。2017年の同省の水力発電は75ギガワット超に達した。これはほとんどのアジア諸国を上回る規模だ。だが同時に、これは省の送電網が処理可能な電力の倍以上であり、多くの電力が無駄になったことを意味している。

中国の水力発電の公式出力は、6月末時点で約340ギガワットを記録しており、その3分の1程度が出力50メガワット以下の小規模水力発電所によるものだ。火力発電や原子力も含めた中国全体の電力容量は1740ギガワットに達している。

周公河の水流を管理するプロジェクトに使われる管をカットする作業員(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

<規模の重み>

中国審計署(会計検査院に相当)は6月、長江流域の11地域にある小規模水力発電所2万4100件を特定し、その「歴史的な貢献」を評価する一方で、現在は環境コストが高すぎる状態だと指摘した。

その1カ月後、中国政府はこの地域での新規ダム建設を禁止し、違法なプロジェクトはそれを「正す」と表明。だが、何カ所のダムを閉鎖するかは、まだ明らかになっていない。

「統一基準がなく、いまだに、小規模発電所のどれを破壊し、どれを継続させるのか明確ではない」と、四川省の環境グループ「横断山脈研究会」の楊勇会長は言う。

周公河にあるダムの1つのそばに打ち捨てられた養魚場の看板(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

政府は、小規模ダムによって多くの希少な魚の生息地や繁殖パターンが破壊されたと指摘するが、環境団体などは、町やエコシステムを丸ごと水没させた巨大ダムのほうが与えた被害は大きく、地震や地すべり、さらには気候変動リスクまで増大させたと主張する。

長さ48キロ程度の周公河では、自然保護区に加え、国土面積の4分の1を開発から守るために新たに設定された「生態系保護レッドライン」に抵触する位置にある小規模ダムを、当局が撤去している。

周公河のつり橋を渡る住人(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

だがこの川には、中国国電集団や中国華電集団、国家電網など、中国有数の大企業が運営する大規模水力発電所10基が残されており、環境保護省は今年、この川の「過開発」について批判している。

こうした企業やその子会社は、いずれもコメントを避けた。

ダムを越える周公河の流れ(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

中央政府系の電力会社は、ずさんに計画された小規模ダムが自社の利益を損なっているとして、規制当局による取り締まりを求めていた。

前出の楊氏は、より大規模なダムによる送電網へのアクセスを容易にするために、小規模ダムが閉鎖されたのではないかと疑っている。

「こうした小規模な水力発電所は従来、送電網の合意があり、それらが合法であれば、接続できた」と楊氏は言う。「大規模な発電所が多すぎて、送電網に接続できないという事態は、公正ではない」

ジャンさん(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

農民のジャンさんにとってみれば、大規模ダムはすでに、住民が何十年も頼りにしてきた周公河から生き物を搾り取ってしまった。「何万人もの人がここで生計を立ててきたが、まもなくそれも無理になるだろう」と、彼は言った。

楽山近くの大渡河支流近くの山間の村で3日、食事を取る少女(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

(翻訳:山口香子、翻訳:下郡美紀)

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