November 9, 2018 / 5:50 AM / 3 days ago

コラム:中国の景気刺激策は本当に必要か

[香港 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の景気刺激策は、額面通りに受け止められない。金融緩和や減税、約2000億ドル(約22.8兆円)規模のインフラ債発行によって、減速しつつある同国経済を再び活性化させようとしている。

 11月5日、中国の景気刺激策は、額面通りに受け止められない。写真は2016年9月、上海で撮影(2018年 ロイター/Aly Song)

だが、前回の建設ブームから積み残した累積債務のせいで、新たな投資のインパクトは薄れている。

この資金はどこに向かうのか、そしてこうした大盤振る舞いが国内外でどのような意味を持つかを整理してみた。

●景気刺激策は必要なのか

中国経済は苦境に陥っているわけではない。実際、第3・四半期の成長率6.5%は世界金融危機以降で最低水準だが、12兆ドルという巨大な経済に当てはめてみれば、絶対的な水準としてはやはり非常に活気に溢れている。

それでも、中国は動揺しているようだ。株価は下落し、個人消費も民間企業投資も減少している。

トランプ米大統領による報復関税が原因だと見る向きも一部にあるが、そこまで壊滅的な打撃を与えるはずはない。中国が経済システムに6000億ドル近くをつぎ込んだ2008年当時の状況とは異なり、中国経済はもはや輸出主導型ではない。国内消費が成長の8割近くを支えているのである。

だが、米国政府の攻撃は相手の弱みを突いた。中国は難しい曲がり角に差し掛かっているからだ。中国政府は、行き過ぎた輸出依存からの脱却をめざすだけでなく、債務依存の体質を改善し、抱え込んでいる累積債務も処理しようとしているところなのだ。

これはつまり、成長を支えるために融資の流れを維持する必要があるが、一方で、生き残る能力のある企業へと資金を振り向けなければならない。さもなければ、切実に求められている広範なレバレッジ解消努力も、頓挫するか、逆戻りしてしまう。

●中国はこれまで何をやってきたのか

まず、中国政府は金融緩和政策を続けている。米国の利上げにもかかわらず、中国はベンチマーク金利を据え置いており、より多くの融資を促すために銀行の預金準備率を引き下げている。

さらに、財政面でもカードを切っており、1兆3000億元(21.3兆円)規模の減税などの政策を実施した。

最後に、地方政府が債務縮小を目指す中で停滞していた国内インフラへの投資にも積極的だ。政府当局者は現在、地方政府によるインフラ整備を促すため、2000億ドルの特別債発行を急いでいる。国内でも最も貧しい地方である南西部の貴州省は先週、債券市場を利用して病院建設資金を調達する計画を発表した。

前回同様、リスクは累積債務だ。スペイン大手銀行BBVAのアナリストは、中国の地方政府が抱える債務はすでに7兆ドルに達し、国内総生産(GDP)の半分以上に相当すると試算する。

これまでのところ、直接影響が出ているのは為替相場だ。中国人民銀行(中央銀行)が流動性を供給し金利を低く抑える中で、人民元は1ドル=6.9元以下まで弱含み、2008年のリーマン破綻以前よりも低水準となっている。人民元安は、速度はコントロールされるだろうが、この先さらに進行する可能性は高い。

 11月5日、中国の景気刺激策は、額面通りに受け止められない。写真は6日、北京で撮影(2018年 ロイター/Thomas Peter)

●中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」との関連は

習近平国家主席の看板政策である総額1兆ドル規模に上る海外インフラ整備プラン「一帯一路」構想は、鉄鋼、セメントその他の建設関連部門における過剰な生産能力を吸収すると同時に、関連サービス、労働力への需要を牽引してきた。

だがこの構想は、2018年に大きな批判に直面した。

貧困国に対する中国の融資が「債務の罠」となり、スリランカのハンバントタ港のように、海外資産を中国政府が手中に収めることを可能としている、と非難を浴びたためだ。

中国の銀行も世界のハイリスク地域に対する融資について懸念しており、中国自身も中所得国でしかないのになぜ対外援助に手を出すのかという疑問が国民の一部からも提起されている。

中国政府は、一帯一路構想は「質の高い」プロジェクトに注力することになる、と最近説明しており、これは関連投資のペースが鈍化することを意味するのかもしれない。

●景気刺激策で利益を得るのは誰か

今回の景気刺激策は、コモディティー市場にとってプラスに働くだろう。世界最大の工業用金属消費国である中国からの支出が需要を維持するからだ。たとえば、銅の価格はこのところ低迷しているが、電力網の刷新と発電所の新設によって息を吹き返すはずだ。

新たな財政出動を狙うことのできる個別企業も恩恵を受けるだろう。たとえば米建設機械大手キャタピラー(CAT.N)は今月、掘削機械販売を今年牽引してきた中国が、今後も堅調な需要を生み出すものと期待している、と述べている。

不振に悩む中国自動車市場についても同じことが言えるかもしれない。政府は自動車購入税の減税という形で小型車に対する補助金を復活させることを考えているからだ。

●景気刺激に成功するのか

そのポイントは「成功」をどう定義するかだ。中国内陸部の貧しい省では、依然として明らかに過少投資の状況がある。アジア開発銀行によれば、中国は依然として2016年から2020年にかけて年間約7500億ドルのインフラ投資を必要としているという。

さらに、今回の景気刺激策は、資産価格の上昇を狙ったものというより、むしろ不安を鎮めることを意図している。すでにかなりのインフラが建設済みであるため、新たに資金を投入しても従来のように活性化につながらないのは確かだ。

市場もこうした事情を反映している。

MSCIのグローバル・チャイナ・インフラストラクチャー指数は、今年12%下落した。コモディティー価格の低迷と併せて考えると、このことは、今回の景気刺激策の大半を投資家は織り込み済みであり、むしろ、消費減速のさらなる拡大を懸念していることを示唆している。一方で、減税などの改革が経済活動に勢いを与えるには、しばらくの期間を要するだろう。

中国政府による昔ながらの景気刺激戦略の復活により、市場の下落は底を打つかもしれないが、これまでのところ、その他に投資家が歓迎すべき要素は驚くほど乏しい。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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