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アングル:海外勢の中国投資、習氏の次の任期へ入念な戦略を

[シドニー 10日 ロイター] - 来年の中国投資戦略を練りつつある世界的な大手銀行や資産運用会社の担当者にとって、非常に重要ながらも計量モデルでは捉え切れない1つの要素がある。それは、習近平国家主席の次の5年の任期における政策の動きだ。

12月10日、来年の中国投資戦略を練りつつある世界的な大手銀行や資産運用会社の担当者にとって、非常に重要ながらも計量モデルでは捉え切れない1つの要素がある。写真は2019年10月、北京で行われた建国70周年 の式典で、スクリーンい映し出された習氏(2021年 ロイター/Jason Lee)

習氏は2018年、それまで2期10年と定められていた国家主席の任期制限を撤廃し、毛沢東以来の最も強力な指導者として中国を本来の社会主義に戻す取り組みを進めており、これが金融市場の動揺を誘っている。

特に大手ITや不動産開発会社、教育産業に対する締め付けを受け、MSCI中国株指数は今年になって世界全体の株価指数が15%上昇したのと対照的に、20%も下落。かつて人気を集めた中国の高利回り債も価格が急落した。

こうした売りは、行き過ぎとの合意が形成されつつある。とは言え来年、習氏が国家主席に正式に再任されるのはほぼ確実で、同氏の政策運営を明確に把握するのが難しい以上、それに備えるポジション構築には、単純に割安な資産を物色するというだけにとどまらない微妙なさじ加減が必要だ、と投資家は話している。

BNPパリバ・アセット・マネジメント(香港)のシニアストラテジスト、チー・ロー氏は「現在、および将来買う資産と、昨年、5年前もしくは10年前に購入した資産は中身がかなり違ってくる」と話す。その上で「習氏の新体制は、よりきっちりした監督と厳しい規制が導入される。『企業』の事業モデルは変わらざるを得ない。中国政府が発展を望む先が、あなたのポートフォリオの構成を決める鍵になるだろう」と述べた。

ロー氏が推奨したのは、石炭や鉄鋼といった「斜陽」セクターを避け、ハイテク製造業ないし温室効果ガス排出削減プロジェクトなど明らかに政策の優先度が高い分野を重視する投資手法だ。

他の大手行も、似たような考えを打ち出している。

ゴールドマン・サックスは、再生可能エネルギーや一部の消費関連、ハイテク、国有企業など50銘柄を「共同富裕ポートフォリオ」としてまとめ上げ、調査の重点を置く対象にした。

JPモルガンは、比亜迪(BYD)などの電気自動車(EV)や先端技術メーカーが「新たなヒーロー」になる可能性を強調しつつ、不動産セクターにおける「昔のヒーロー」は姿を消していくとみている。

クレディ・スイスの広域中華圏最高投資責任者、ジャック・シュー氏は、来年の中国企業利益が上方修正される可能性をにらむ。習氏の再任を正式に決める秋の共産党大会を前に、財政政策が幾分景気を後押しする形になり、金融政策は引き締め度がやや和らぐ公算が大きいと想定されるためだ。

モルガン・スタンレーも、政策が緩和方向になることを理由に来年の中国の成長率をコンセンサスより高い5.5%と見込んでいる。

アジアでは来年、中国経済に最も上振れ余地があるとみなすソシエテ・ジェネラルは、生活必需品、第5世代(5G)移動通信システム、高付加価値製品関連の銘柄をオーバーウエートとしている。

また、政策の優先度が高い分野により適切に連動しているのは、上海と深センの有力上場企業で構成するCSI300指数で、MSCI中国株指数は当局の「寵愛」が薄れた幾つかのインターネット関連銘柄の比重が大きいという。

<政策リスク再認識>

中国で共同富裕という概念自体は新しいわけではなく、1950年代に毛沢東が初めて口にした。ただ、習氏の下で格差是正や、より社会全体を包摂する成長を目指す新たな取り組みの政治的なキャッチフレーズとして存在感が強まっている。

習氏は、不動産セクターの債務圧縮や、大手ITによる個人データと電子商取引市場に対する影響力の抑制にも努め、2060年までに中国の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにすると約束した。

そこで市場を打ちのめし、投資家に警戒姿勢をもたらしているのは、こうした政府の取り組みの方向性というより、特に習氏が権力基盤を固めるとともに鮮明になってきた実行面での予測不可能さだ。

中国において「政策リスク」が常にあるのは間違いない。だが、国有メディアを通じた戒めるような規制コメントや、相矛盾する内容のリークという形でしばしば予告されてきた1年間にわたる劇的な方針転換を経て、投資家の脳裏にこの「政策リスク」という言葉が真っ先に浮かんでくるようになった。

ハイペリオン・アセット・マネジメントの最高投資責任者、マーク・アーノルド氏は「これはわれわれにとって大きな不安の種だ。なぜなら中国共産党が実際にどう考えているかは分かりっこない。全権力を持つ政府、一党独裁国家は、1人の人物が掌握する国家に変わりつつあるので、大衆の意見を吸い上げて政策に反映させる仕組みや、民主主義が提供してくれるような保護は得られない」と指摘した。

それでもBNYメロンのデータで中国市場の資金フローを見ると、外国人投資家はまだ、中国株を敬遠してはいない様子がうかがえる。今年は不動産開発会社の借り入れを締め付ける動きが中国の債券売りをもたらしたが、中国株はずっと資金流入が続いている。年初から9月までの中国株の外国人買い越し額は2410億元(400億ドル)だった。

一部の投資家には、中国投資で痛手を受ける危険よりも、中国投資がもたらす機会を逃すリスクの方が大きいと受け止められている。

ノムラ(香港)のアジア株調査共同責任者、ジム・マカファーティー氏は「もし、あなたが世界的な年金基金で全資産を米国に投じ、中国には一切振り向けていないとすれば、かなり偏ったポートフォリオだ。米国株のアンダーパフォームが始まり、あらゆるバリュエーション指標で割安なのが明白な中国株がアウトパフォーム局面に入ればすぐに、投資家たちが浮足立つ時期が訪れると思う」と述べた。

( Tom Westbrook 記者)

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