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コラム

コラム:中国企業の米上場、投資家には「中国の規制」がリスクに

[香港 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国当局が米国に上場する中国企業への「調査」に乗り出した。投資家にとっては、株式公開の目論見書に小さく書かれるリスク項目が今や、はっきりくっきりと迫ってきた形だ。

7月5日、 中国当局が米国に上場する中国企業への「調査」に乗り出した。写真は6月、ニューヨーク証券取引所のモニターに表示された滴滴出行のロゴ(2021年 ロイター/Brendan McDermid)

中国国家インターネット情報弁公室(CAC)は、配車サービス国内最大手、滴滴出行(ディディ)が6月末にニューヨークに上場した数日後に同社調査を開始。これに続き、同じく6月にニューヨーク上場していたトラック配車の満幇集団(フル・トラック・アライアンス)と、求人アプリ「BOSS直聘」運営の看准についても調査を始めている。

滴滴の取り締まりは、タイミングこそ劇的だったが、手法はおなじみのものだ。すぐに中国当局の調査対象になりかねない同国企業の上場を巡って、米国の投資家はこれまで幾度もやけどを負ってきた。

2019年、中国当局は個人間で資金を融通する「ピア・ツー・ピア(P2P)融資」業界への規制を強化した。これは同業界の一部が米上場を果たした直後だった。最近では個人学習指導サービスの取り締まりにも着手。いずれも余波で株式時価総額数十億ドルが吹き飛ぶ結果になった。

今回は新たに2つの要素が加わった。1つは、影響力を誇示したいと考える情報弁公室の台頭だ。国内企業による米国上場意欲をそぐため、中国政府がひそかに広範な対応を推進している可能性もある。

ロイターの報道によると、ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)が支援するオンライン保険企業、水滴公司(ウォータードロップ)は、保険当局の阻止を押し切って米上場を果たしたが、その後は株価が低迷している。音声プラットフォームの喜馬拉雅(シマラヤ)の米上場計画も、当局から撤回の圧力がかかっていたという。

リフィニティブのデータを用いたBreakingviewsの分析によると、ニューヨークに今年上場した中国企業25社のうち17社で、その後の株価は上場時を下回って推移。リターンの中央値はマイナス22%だ。MSCI中国IT株指数は今年は8%下落している。

滴滴の新規株式公開(IPO)を巡り、弁護士らは集団訴訟をまとめる準備をしているだろう。ただ、投資家にとっては不意打ちだったわけではないのだ。中国政府が電子商取引大手アリババグループや傘下金融会社アント・グループのようなIT大手の取り締まりに乗り出していたのは公然の事実だった。独占的な行動や金融リスク、個人情報の乱用を抑制するというお題目は十分に明確だ。実際、滴滴は今年6月に成立したデータ保護法をリスク要因として公開目論見書に記載していた。

中国の規制を巡る関連リスクは今からさらに増えそうだ。中国当局によるIT企業への取り締まりの一方で、米議会では米国流の監査に従わない中国企業を24年までに上場廃止にする法律が通過している。

中国当局の動きによってウォール街の中国IPO株人気がいやおうなく鎮静化させられるとしたら、恐らくその方が投資家のためにはなることだ。

●背景となるニュース

*中国国家インターネット情報弁公室(CAC)は7月4日、滴滴出行(ディディ)のアプリをスマートフォンのアプリストアから削除するよう命じた。不当な利用者情報収集を理由に挙げた。

*滴滴がニューヨーク証券取引所に上場した3日後の今月2日、CACは同社に対する調査開始を発表。株価は5%下がった。

*CACは5日、満幇集団(フル・トラック・アライアンス)と、求人アプリ「BOSS直聘」を運営する看准の調査も開始したと発表した。満幇集団は6月23日にニューヨーク証取に、看准は同11日にナスダックに上場したばかり。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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