March 20, 2019 / 1:55 AM / 7 months ago

焦点:中国「一帯一路」参加をめざすイタリアの前途多難

[ローマ 15日 ロイター] - 古代の「シルクロード」は中国からイタリアまで伸びる交易路のネットワークで、商品や技能、思想が地球半周分の距離を行き交っていた。

3月15日、古代の「シルクロード」は中国からイタリアまで伸びる交易路のネットワークで、商品や技能、思想が地球半周分の距離を行き交っていた。香港で2016年5月に開かれた一帯一路のシンポジウムで撮影(2019年 ロイター/Bobby Yip)

それから2000年の時を経て、イタリアは今、中国の習近平国家主席が生み出した「新シルクロード」において重要な役割を果たしたいと考えている。だが、「シルクロード復活」への参加については賛否が分かれており、現代におけるローマの政治指導者にとってリスクとなっている。

コンテ首相は、21日からの習近平氏のローマ訪問の際に暫定合意に調印する予定だ。これによってイタリアは、中国の通商網の改善を意図した数十億ドル規模の巨大プロジェクト「一帯一路」に参加することになる。

イタリアが主要7カ国(G7)の先頭を切ってこの野心的な事業への参加を推進していることは、米国政府を怒らせ、欧州連合(EU)本部も警戒心を示している。

欧州でも最も裕福な諸国の市場に容易にアクセスできる港湾を備えているイタリアを引き入れれば、中国にとって将来有望であり、プロジェクトの格も上がる。

イタリア政府が「一帯一路」支持の見返りとして期待しているのは、輸出と投資の加速により、停滞する自国経済を、この10年間で3回目となるリセッション(景気後退)から引っ張りあげることだ。

だが、イタリア政府は地政学的なリスクを考慮しておらず、西側諸国のパートナーと協議もせず、中国のグローバルな野心の台頭に対する懸念の高まりも過小評価している、と外交アナリストやコンテ首相の政敵らは指摘する。

「これまでのところ、『一帯一路』の扱いについては、実質的に何の調整もなく、あまりにも素人仕事だったのではないかと懸念している」と地政学を扱う有力誌「リメス」のディレクターを務めるルチオ・キャラッチオーロ氏は指摘。

「私が心配しているのは、結局イタリアがどちらの方面でも負けるのではないか、つまり中国からは実質的に何も得られず、一方で中国政府に近づきすぎたことで米国からは報復を受ける、ということだ」と同氏は語った。

<旧態依然>

中国寄りの政策のかじ取りをしてきたのは、ポピュリスト政党「五つ星運動」の党首であるディマイオ副首相である。彼は経済発展省内に中国担当タスクフォースを設立し、イタリアを「一帯一路」の「特別パートナー」にするという目標を公然と掲げている。

ディマイオ副首相はこの8カ月の間に中国を2回訪問し、現時点で最も慎重さを要する外交問題の1つであるにもかかわらず、実質的に外務省を脇役に押しやっている。

ディマイオ副首相のタスクフォースを率いるのはジェラーチ経済発展省次官で、2018年の入閣以前に10年にわたり中国で暮らしていた。ジェラーチ、ディマイオ、コンテ3氏とも、昨年以前には国際外交の経験は皆無だった。

中国語を話すジェラーチ氏は、中国政府との関係強化を熱心に支持しており、イタリアはパートナー諸国に後れをとっていると言う。

かつては経済学教授だったジェラーチ氏は先月、ロイターに対し「イタリアに帰国したら、旧態依然であることが分かった。追いつく必要がある」と語った。

「『一帯一路』には他国がすでに開拓しつつある、非常に大きなポテンシャルがある」とジェラーチ氏は言う。

だが、まさにイタリアが新しい立場をとろうとしている今、他の欧州諸国は考え直そうとしているように見える。

欧州委員会は12日、中国を「体系的なライバル」として位置付け、EU諸国の指導者らに、中国の国営企業に対する規制強化案を支持するよう呼びかけた。

欧州連合は中国の市場開放ペースの遅さや、EUの重要セクターにおける中国企業による買収急増に対する苛立ちを強めており、国内市場に歪みをもたらしていると批判している。

イタリア政府は、そのような懸念があるとしても中国の関係強化を止めるべきではないとして、ハンガリー、ポーランド、ギリシャ、ポルトガルを含む13のEU加盟国がすでに中国との覚書(MOU)に署名している点を指摘する。

だが、ベルリンのメルカトル中国研究所のルクレツィア・ポゲッティ研究員によれば、欧州最大の対中輸出国は中国とのMOUを結んでおらず、すでにMOUを締結した国も見るべき成果を挙げていないという。

「これらの国は、曖昧な表現で中国が約束した経済機会がほとんど実現していないことに苛立っている」とポゲッティ氏はロイターに語った。

「地政学的な要素を計算に入れず、また具体的な要求を行うことなく『一帯一路』に参加し、いつかは何かしら経済的な見返りが得られるだろうと期待するのは、あまりにもナイーブだ」と彼女は言う。

<米国の怒り>

「一帯一路」プロジェクトは中国の外交戦略の柱となっており、2017年には中国共産党規約にも盛り込まれた。中国がグローバル規模でリーダーシップを発揮することを望む習氏の意向を反映したものだ。

米国は、この習氏の取組みが中国の政治的・軍事的影響力を高めることを意図しており、西側諸国の権益を監視できるテクノロジーの拡散に使われるのではないかと懸念している。

「中国の国威発揚のためのインフラ整備プロジェクトにイタリア政府がお墨付きを与える必要はない」。ホワイトハウスの国家安全保障担当顧問の広報官は15日、こう述べた。最も安定した同盟国の1つを公然と批判するのは珍しい。

イタリア政府はMOU撤回は拒否しつつも、その原案を公表し、具体的なコミットメントは何も提示しておらず、米国政府が憂慮するような種類の技術移転には言及していないことを示し、米国を安心させようという姿勢を見せた。

その一方でイタリア政府は、中国寄りの政策が成果を挙げつつあることを示すことにも熱心で、3月21─23日に予定されている習氏のイタリア訪問のあいだに50件の合意文書が調印されるという報告をリークしている。そのなかには、エネルギー会社のENI (ENI.MI))、ガス関輸送スナム(SRG.MI)、造船会社フィンカンティエリ(FCT.MI)が参加する契約も含まれている。

またイタリアは、ジェノア、トリエステ、パレルモといった港湾経由での貿易を拡大するプロジェクトを発表したいとも考えている。 中国遠洋控股(チャイナCOSCOホールディングス)(601919.SS) (1919.HK)はギリシャ最大の港湾を買収したが、イタリアは、自国の港湾の方が欧州市場への玄関口として優れていると主張している。

好条件の契約を多数結べれば、ディマイオ副首相が切実に必要としている勝利になるだろう。米国の不機嫌をなだめるのに悪戦苦闘しているだけでなく、連立相手である極右政党「同盟」に親中政策を売り込むのも一苦労だからだ。

ジェラーチ氏は「同盟」の党員だが、中国との合意が間近であるというニュースが先週明らかになった時点では、「同盟」への根回しはなかったようだ。「同盟」党首のサルビーニ副首相は、中国によってイタリアが「植民地化」されると警告している。

ディマイオ氏と共に副首相の座にあるサルビーニ氏は、「いま検討しているところだ」と言う。「トリエステやジェノアといった港湾への外部からの投資を認める前に、今一度どころか、100回でも考え直したいところだ」

(翻訳:エァクレーレン)

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