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コラム

コラム:中国の銀行、金利上昇通じた業績改善期待は裏目に出る恐れ

[香港 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の銀行は、長い目で見ると割に合わない支援策を当てにしようとしている。大手行は第2・四半期に手ひどい打撃を受けた。例えば資産規模で世界最大の中国工商銀行601398.SS1398.HKは、Breakingviewsの計算で利益が25%減少した。一方、中国人民銀行(中央銀行)は、投機抑制のために金利上昇を容認しており、これは銀行の痛みを和らげてくれるのは間違いない。ただし経済的な苦境が続く民間セクターがその犠牲になる。当局が政策正常化を急げば、かえって好ましくない結果をもたらす恐れがある。

 9月3日、中国の銀行は、長い目で見ると割に合わない支援策を当てにしようとしている。写真は7月16日、北京の商業地区を背景に写真撮影をする人たち(2020年 ロイター/Tingshu Wang)

今から振り返れば、工商銀行、農業銀行601288.SS1288.HK、建設銀行601939.SS0939.HK、中国銀行601988.SS3988.HKという大手国有4行にとって第1・四半期は、新型コロナウイルスの感染が広がっていたにもかかわらず、あまりにも快適な環境だった。しかし第2・四半期は状況が一変し、中国国際金融(中金公司)によると、4行は不良債権増加に備えて貸倒引当金を61%も積み増した。このため収益力が圧迫され、純利ざやは縮小している。

人民銀行のおかげで今後の見通しは改善してもおかしくない。4月以降、人民銀行は緩和姿勢をいったん保留し、金融商品の指標金利がじりじりと上昇する状況を演出している。これは当然、銀行の利益率に追い風となる。だが依然として内需の回復を待ち望む民間の借り手は痛手を受ける。

S&Pグローバルは、金融緩和の投機促進効果の表れとも言える不動産販売の回復と、景気刺激策がまだ消費者心理改善につながっていないことを示す小売売上高の根強い不振という対照的な2つの事象を指摘する。インターネットにおける食品購入の堅調さは、総じて害虫や洪水に起因する価格の上昇を反映しているにすぎない。投資の持ち直しは圧倒的に国有企業セクターが主導、7月の前年比増加率は14%に達したが、民間投資は3%増にとどまっている。

人民銀行が提案しているのは、「望む先に正確に行き渡る灌漑(かんがい)水」にたとえた窓口指導を通じて、与信コストの増大リスクを管理する方針だ。狙いは低利の資金を投機的な不動産融資ではなく、製造業や中小企業に振り向けることにある。実際、ガベカル・ドラゴノミクスの報告書に基づけば、銀行融資の構造調整はある程度進展している。

しかし、それが与信コストの増大を相殺できるかどうかは分からない。もしできなければ、銀行にとって目先のプラス要素は、経済が低迷を抜け出せない中で回り回って弊害になるだろう。

●背景となるニュース

*中国の5大国有銀行は、いずれも第2・四半期の減益幅が少なくとも過去10年で最悪を記録。不良債権の増加と利ざや縮小が響いた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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