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コラム:中国の対外投資規制、裏目に出る可能性
2017年8月22日 / 07:02 / 1ヶ月前

コラム:中国の対外投資規制、裏目に出る可能性

8月21日、中国政府による新たな対外投資の規制強化は、根本的な問題を見失っている。中国での利益率低迷を、より活気のある海外企業の買収によって補うよう企業に迫る国内の「歪み」の問題だ。写真は2016年10月、ロンドン証券取引所で撮影(2017年 ロイター/Peter Nicholls)

[香港 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国政府は、国内企業による海外のホテルやスポーツクラブなどの買収のうち、「非合理的」とみなした案件に対して強硬的な態度を取ることを正式に表明した。

思慮の浅い取引によって不良債権が積み上がることへの懸念が、この引き金になったとの見方が出ている。その可能性はあるだろう。だが今回の規制強化は、根本的な問題を見失っている。それは、中国での利益率低迷を、より活気のある海外企業の買収によって補うよう企業に迫る国内の「歪み」の問題だ。

18日に発表された投資抑制策は、熱心な海外買収で知られる安邦保険集団や大連万達集団(ワンダ・グループ)、復星国際(0656.HK)、海航集団(HNAグループ)などの企業に対して圧力を強めてきた、中国政府のこの数カ月の動きを、政策として明確にしたものだ。

今回の規制強化により、従前からの保守的なポジションに戻ることになる。中国企業による海外買収は、大きなニュースとなったり突飛な買収で注目されてはいるものの、国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2016年の対外投資はストックベースで1兆3000億ドル(142兆円)に過ぎない。

対外投資額は同年、過去最高の1830億ドルに達したが、国内総生産(GDP)の2%以下にとどまっている。国内金融システムは7月だけでほぼ同額の信用供与を生み出している。負債への懸念が取りざたされることが多いが、中国企業による合併と買収(M&A)は、システミック・リスクをもたらしていない。

中国の対外投資が過少にとどまる背景には、2つの歴史的理由がある。まず、資本規制により、企業は契約締結前に多数のハードルを乗り越える必要があった。次に、急速な経済成長により、国内投資の方が利益率が高かった。

だが、直接投資は外交の強力な道具になるため、中国政府がこの状況に満足せず、規制当局は認可要件を大幅に緩和。対外投資が活発化した。

しかし、これにはリベラルではない要因もあった。国内で資金調達が容易であることの副作用の1つは、過剰な投資余力だ。国営関連企業が安く資金を調達して手当たり次第に新市場に参入し、利益率の低下を招いた。中核事業で利益を上げられなくなった多くの中国企業幹部は、他の分野で利益を稼ごうとするようになった。投機に走った企業経営者もおり、政府高官は「本物を捨てて虚構に走った」と評した。

他の経営者は、賢明なことに、国内の価格競争を逃れて海外で事業拡大を図ろうとした。

例えば、自転車シェアリングのスタートアップ企業、共享単車(ofo)や摩拝単車(Mobike)は、中国の市街地が模倣ビジネスで一杯になるのを見て、より高い価格設定ができる欧州や米国の都市で急速に足場を築いている。

これは、安邦保険による米ニューヨークの高級ホテル「ウォルドーフ・アストリア」の買収にもあてはまると見て間違いないだろう。中国の宿泊業界は、生き馬の目を抜くような競争にさらされている。

海外投資に、成功の保証はない。だが、やめさせるのは不健康だ。企業から国外で資金を生かす成長機会を奪えば、中国政府は競争力を損なうことになる。それは最終的に、債務問題を改善するのではなく、悪化させる結果になるだろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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