May 16, 2018 / 4:53 AM / 4 months ago

焦点:「豚ホテル」は中国養豚業界に革命もたらすか

Dominique Patton

[Yaji山(中国)11日 ロイター] - 中国南部の広西チワン族自治区Yaji山にある高層の「豚ホテル」では、1フロア当たり約1000頭の雌豚が飼育されている。

民間農業企業「広西陽翔」は、ここで7階建ての雌豚繁殖施設2棟を運営しており、さらに4棟を建設中だ。そのうち1つは、この種の施設としては世界で最も高い13階建てになる。

数階建ての養豚施設は、欧州でも建てられた例がある。その一部は現在も稼働しているが、廃棄されたものもある。運営の難しさや、巨大な過密牧場への世論の反対もあり、近年ではほとんど新規建設がない。

農業の近代化と地方の活性化に取り組む中国政府の30年計画の一貫で、世界最大の養豚業界にも産業化の号令がかかり、高コストにもかかわらず一部の関連企業は施設の高層化に取り組んでいる。こうした「豚ホテル」は、中国が農業モデルの刷新を図る中で、一部の企業がどこまで極端な試みに出るかという一例を示している。

「高層施設には、大きな利点がある。エネルギーと資源を節約できる。土地はそれほど必要としないが、多くの豚を飼育できる」と、山頂にある同施設のXu Jiajing施設長は言う。

広西陽翔のような企業は、中国で豚の価格がこの8年ぶりの安値にある中でも、平屋建て施設に比べ3割増しの費用がかかる、こうした高層施設に対する投資を増やしている。

だが、こうした投資はリスクが高すぎると警戒する関係者もいる。より小規模な養豚業者を、豚の殺処分や事業拡張の見直しに追い込んでいる価格低下に加えて、このような密度の高い施設には病気がまん延する心配もあるからだ。

だが、こうした高層の養豚施設が中国で成功すれば、人口密度が高く、土地が少ないアジアで大きな意味を持つだろう。設備業者にとっても同様だ。

「2階建てや3階建ての施設への需要が高まっている」と、広西陽翔の空調設備を設計したオランダの空調会社マイクロファンのペーター・ファンイスム氏は言う。

マイクロファンは、韓国の3階建て施設にも空調設備を供給した。

「さらに高層の施設はまだ例外的だが、将来は急速に変わるかもしれない」と同氏は語った。

<高層の豚たち>

Yaji山は、巨大な生産牧場を建設しそうもない場所に見える。細い道路を上った、人里離れた山の上に、巨大なコンクリートの養豚施設が建つ。広西陽翔は、眼下の深い森を観光施設として開発する計画だ。

だがこの施設は、世界で最も人口密度が高い地域の1つである珠江デルタに水路で繋がる貴港の町から比較的近いロケーションにある。

中国政府は、北東部の穀倉地帯での畜産増加を奨励しているが、遠く離れた大都市圏に新鮮な豚肉を安全に届けることは農家には難しいとの懸念も出ている。

そこで、丘陵地は多いが、より大都市に近い広西チワン族自治区や福建省といった南部向けの農業投資が増加している。

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広西陽翔は、11ヘクタールの敷地で、年末までに飼育する雌豚の数を3万頭に増やし、年間84万頭の子豚を繁殖させる計画だ。そうなれば、ここは世界最大で最も過密な養豚施設となる。

中国北東部の典型的な大規模養豚施設が飼育する頭数は、13ヘクタールの敷地で8000頭程度にとどまる。

福建省南平では、深セン市金新農科技(002548.SZ)が、1億5000万元(約26億円)を投じて5階建ての飼育施設2棟を建てる計画だ。ある設備投資会社によると、ほかに2社が福建省で高層の養豚施設を計画している。

タイの複合食品大手チャロン・ポカパン・フーズ(CPF.BK)も、浙江華統肉製品(002840.SZ)と合弁で、上海周辺の大都市圏に近い義烏に6階建て養豚施設4棟を建設中だ。

<ハイテクビル>

広西陽翔が計画する新施設投資は、雌豚1頭あたり1万6000元(約28万円)で、総額5億元に上る。これには、豚の価格は含まれていない。

施設を高層化すること、エサを供給する設備などが複雑になり、コストが上昇すると、米畜産会社パイプストーンの中国コンサルティング子会社のXue Shiwei副執行責任者は言う。

「土地は節約できるが、構造が複雑になるし、コンクリートや鉄鋼のコストも上がる」と、Xue氏は話す。

衛生面での懸念も高まる。中国の畜産業界を悩ませる病気のリスクは、家畜の密度が高まれば増加するからだ。

欧州の2階建て施設でさえ、豚に十分なケアができなくなるのではないかとの懸念を呼んだと、動物福祉を専門とし、中国企業と仕事をした経験のあるウィーン獣医科大のイレーヌ・カメルリンク氏は言う。

病気がまん延すれば、大規模な殺処分が必要になることもあると、カメルリンク氏は言う。

広西陽翔のXu施設長は、フロアごとに担当スタッフを固定し、フロア別に管理を行うことで、病気のリスクを軽減していると話す。新しく施設に入る雌豚は最上階から建物に入れられ、エレベーターで特定のフロアに移されると、そこにとどめられるという。

空調システムも、他のフロアや建物に空気が移動しないよう設計されている。空気は地上の吸気口から取り入れられ、フロアごとの空調ダクトを通って供給される。ダクトは屋上の中央排気設備につながれており、強力な排気ファンがフィルターを通じて空気を吸い上げ、高さ15メートルの煙突から排気する。

施設から出る糞尿を処理する廃棄物処理施設も、現在Yaji山に建設中だ。処理後、液体は周囲の森林にまかれ、固体は近隣の農家に堆肥として販売される予定だ。

病気や環境への影響、労働コストなどを抑えるための設備の多くは輸入品で、これにより広西陽翔の投資額は大きく押し上げられたと同社はいう。

だが他のモデルを試してみて、広西陽翔は複数階のビル形式が最善だとの結論に達したという。だが、そうは考えない人もいる。

「このモデルでやっていけるかどうかが分かるには時間が必要だ」と、前出のコンサルティング会社のXue氏は言い、クライアントには「豚ホテル」は推奨しないと述べた。

「(中国の養豚産業には、養豚ビルも含めた)様々な競合するアイデアが出てくるだろう。その中からいずれ、最適なモデルがはっきりしてくるだろう」と、Xue氏は話した。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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