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焦点:中国が注力する貧困撲滅、取り残される都市移住者たち
2017年10月16日 / 23:04 / 1ヶ月後

焦点:中国が注力する貧困撲滅、取り残される都市移住者たち

[北京 15日 ロイター] - 中国の北京郊外にある廃墟と化した住宅地区で、59歳のWang Qinさんはスクラップを回収している。1日15時間働いているが、自身の稼ぎだけで孫娘の教育費を支払うのにも苦労している。

 10月15日、中国の習近平国家主席は、2020年までに極度の貧困を解消するというキャンペーンを実施しているが、都市移住者たちは取り残されている。写真は、北京に移り住み、スクラップ回収で生計を立てている59歳のWang Qinさん。自宅で1日撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

違法に建てた小さな小屋に孫娘と精神病を患っている夫と3人で暮らすWangさんだが、その家も地元当局によって取り壊されてしまうかもしれないと心配している。

Wangさんがスクラップを売って得る毎月の稼ぎ1500元(約2万5500円)で一家は生計を立てており、中央政府からの援助は全く受けていない。

2014年から首都北京で暮らしているが、一家は他省からの移住者であるため、住民として認められていない。住民登録されていないため、Wangさんは学校や医療といった費用を多く負担しなくてはならない。住宅費などのコストも地方よりはるかに高く、都市部に暮らす移住者に耐えがたい苦痛を与えている。

「毎月生きていかねばならないが、私は孫の学費や日々の食費を支払わなければならない」と、過酷な貧困を逃れようとして、中部河南省の村から北京に移住したWangさんは話す。「もう耐えられない。体中が痛い。もう働いて稼ぐことなどできない」

Wangさんの苦境は、中国の地方だけでなく、地方から大勢が移住してくる大都市に暮らす数多くの貧しい移住者にとって珍しいことではない。このことは、2020年までに極度の貧困を解消するという政府が掲げたキャンペーンの難しさを浮き彫りにしている。

習近平国家主席は2015年、7000万人の貧困者を2020年までにゼロにすると約束。同キャンペーンは習氏が掲げる主要政策の1つとなっている。

中国共産党が18日から5年に1度の党大会を開催するのを控え、貧困撲滅キャンペーンは加速している。

「政府は貧困緩和にかつてないほど取り組んでいる」と、国務院の下で貧困問題に取り組む部門責任者であるLiu Yongfu氏は10日、北京で行われた記者会見でこう語った。「習近平国家主席が自ら指揮を執っており、全ての貧困集中地域を訪問している」

「社会のあらゆる層が積極的に参加しており、貧困との闘いは大きな成果を得ていると言える」とLiu氏は付け加えた。

スクラップ回収で生計を立てているWangさんのような人たちについてロイターが質問したところ、Liu氏は、移住者は出身地で給付金を受けることが可能であり、都市居住者は都市部の社会保障制度でカバーされていると答えた。

中国財政省によると、政府は今年、貧困緩和策に昨年比30%増の860億元を充てている。2013─17年の中央・地方政府による対策費は計4612億元に上り、他のさまざまな財政支出も効果があった、とLiu氏は語った。

資金はインフラ整備のほか、教育や医療、地方農村部への補助金に充てられる。

<貧困逆戻りのリスクも>

政府の貧困ラインは年間所得2300元(約4万円)だが、2016年末時点でなお4335万人がそれを下回っていた。1000万人を貧困から脱却させるのが今年の政府目標であり、そのペースで行けば、少なくとも公式的には2020年までに深刻な貧困は解消されるはずである。

 10月15日、中国の習近平国家主席は、2020年までに極度の貧困を解消するというキャンペーンを実施しているが、都市移住者たちは取り残されている。写真は、北京に移り住み、スクラップ回収で生計を立てている59歳のWang Qinさん。北京郊外で1日撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

同対策によって、地方への注目が高まり、インフラなどが改善されるとみられている。

世界銀行のジム・ヨン・キム総裁は12日、中国が1990年以降に8億人を貧困から脱却させた功績は「人類史における素晴らしいストーリーの1つだ」と語った。

だが多くの研究者やソーシャルワーカーは、中国の貧困撲滅キャンペーンについて、同国の貧困者が直面している最も深刻な問題に対処していないと口をそろえる。

「個人的には、2020年までに貧困を緩和するという政府目標には全く賛同しかねる」と、北京の中国人民大学で同問題を研究するYang Lixiong教授は言う。「支援策によって貧困は短期的に緩和するかもしれないが、長期的な観点から見ると、また貧困に陥りやすいと言える」

一部の西部地域で貧困から抜け出した住民の最大で半数が、もし政府が支援をやめた場合、貧困ラインを再び下回ってしまうだろうと、Yang教授は予想する。

 10月15日、中国の習近平国家主席は、2020年までに極度の貧困を解消するというキャンペーンを実施しているが、都市移住者たちは取り残されている。写真は、北京に移り住み、スクラップ回収で生計を立てている59歳のWang Qinさんと10歳の孫娘。自宅で1日撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

同教授はまた、学校や医療へのアクセスといった長期的な問題への配慮が十分ではないと指摘。

「非常に長い期間で見なければ、貧困を減らすことはできない。貧困がなくなるとは決して言えない。撲滅するなど不可能だ」

中央政府当局者は、地方レベルでの政策実行が不十分であることや資金乱用といった問題を認識している。

彼らはまた、地方の最貧困層が抱える最も差し迫った問題に対処するため、政策の焦点がかなり絞られていることを認めたうえで、医療や教育の向上に向けて多くの努力がなされていると強調した。

「われわれは、まずはこの闘いに勝利し、現在ある問題を解決しなくてはならない」と、2020年以降も政策を継続するかどうかについて、ロイターが投げかけた質問にLiu氏はこう答えた。

仕事や環境破壊や資本不足が原因で人々が都市部へ移動するなか、地方の発展は過疎化のような問題に直面していると、河北省の大嶺溝村で調査を行う社会資源研究所の創設者Wu Chen氏は指摘する。

貧困との闘いに勝つよう自治体に求めるスローガンが、大嶺溝村のそこかしこに貼られている。その目標を念頭に、地方政府は村に通じる舗装道路を新たに建設し、先月には太陽光発電の街灯も設置した。

地方のインフラは大いに改善したが、情報と文化における地方貧困層と都市生活者の大きな格差は、今なお主要な課題であり続けているとWu氏は言う。

「こうした村人たちは所得の面で貧困から脱却するだけでなく、情報や能力の貧困からも抜け出すことができるだろうか」

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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