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情報BOX:中国の不動産税、予想される仕組みと影響

[北京/上海 19日 ロイター] - 中国で不動産税(日本の固定資産税に相当)導入の動きが勢いを増そうとしている。導入案が最初に浮上したのは2003年だが、不動産市況の悪化、家計資産圧迫や不動産開発プロジェクトの不振、土地売却収入に依存する地方政府の財政危機などを引き起こす恐れがあるとして、計画が着手されることはなかった。

 10月19日、中国で不動産税(日本の固定資産税に相当)導入の動きが勢いを増そうとしている。写真は北京の住宅街付近を自転車で通行する男性。1月13日撮影(2021年 ロイター/Tingshu Wang)

しかし故毛沢東主席以来最も強力な指導者である習近平国家主席は「共同富裕」のスローガンの下、貧富格差の是正に取り組んでおり、これが全国規模の不動産税導入に欠かせない政治的な推進力になるかもしれない。中国政府は25年までの5カ年計画に不動産税の立法化を盛り込んでいる。

ANZ(香港)のシニア中国エコノミスト、ベティ・ワン氏は「中国の不動産開発の歴史で極めて大きな政策転換になるだろう。政策の中長期的な変更だ」と指摘した。

不動産税が導入された場合に予想される仕組みや影響をまとめた。

<導入する理由>

不動産税の導入で、高騰する住宅価格をついに抑え込めるかもしれない。

急速に都市化が進む中国は、1990年代の住宅市場民営化以降、平均住宅価格が2000%余りも上昇し、近年は特にミレニアル世代で手ごろな物件がほとんど見当たらないという危機的な状況になっている。

無限に続くとも見える価格高騰が投機目的の購入にも火をつけ、住宅の建設ラッシュが発生。建設資金は多額の借り入れで賄われるケースが多く、膨大な負債を抱えた中国恒大など不動産開発業者が窮地に追い込まれ、国内経済にリスクが広がるとの懸念が高まっている。

<全国規模になるのか>

2011年に開始された試験導入では、大都市の上海と重慶で高級住宅やセカンドハウスの所有者を対象に0.4-1.2%の税率を課した。しかしこの試験導入は他の都市には広げられていない。

最初に導入されるのは富裕な地域になると予想されており、専門家からはこの数週間、富裕層の多い浙江省をはじめ、南部の新興都市である深圳、島しょ部の海南省などが候補地として挙がっている。

<税率>

キャピタル・エコノミクスのシニア中国エコノミスト、ジュリアン・エバンスプリチャード氏は税率について「0.7%が妥当だが、実際には都市によって税率を変える多層的なアプローチが取られるだろう」とみている。

「米国は裕福な郡では不動産税の実効税率が2-3%を超えるところもあれば、もっと低いところもある。しかし実効税率の全国平均は1.1%だから、中国の都市部で0.7%とすることは可能なはずだ」と話した。

税率を0.7%と仮定すると、2020年の税収は1兆8000億元(約32兆1700億円)で、昨年の地方政府の土地純売却額を上回る計算。この税収はフィンランドの国内総生産(GDP)に匹敵する。

<地方政府への影響>

不動産税は地方政府に新たな財源をもたらし、公共サービスやインフラ整備への再投資が可能だ。

不動産会社センタリンの首席アナリスト、ルー・ウェンシ氏によると、地方政府は土地販売収入の7-8割相当の財政収入が得られる可能性がある。制度が根付けば、地方政府が土地売却への依存を少しずつ下げていくのに役立ちそうだという。

一方、国海証券のエコノミスト、ロッキー・ファン氏は、地方政府が必ずしも新しい収入を手に入れるとは限らず、徴税の意欲が低下する可能性があると指摘する。

地方政府が不動産税の税収を地元に還元すれば、中央政府の再分配メカニズムが欠かせない「共同富裕」の思想に反してしまうという。

<開発業者への影響>

不動産税を導入すると投資家の不動産資産保有コストが上昇する。すると、住宅在庫の一部が住宅所有者から市場へと流れ込み、供給が増える。

そのため不動産開発業者は在庫消化率と現金回収のペースが鈍り、キャッシュフローが一段と圧迫されて流動性が損なわれる――。中国東部に拠点を置く中規模の開発業者はこう説明する。

<中国の資本市場への影響>

国海証券のファン氏は、不動産税は不動産の保有コストを押し上げ、金融資本市場への資産再配分が起きると見ている。

人民銀行(中央銀行)によると、中国の都市部の家計は資産の60%近くを不動産が占め、株式や債券など金融資産の比率は20.4%。一方、米国の家計では金融資産の割合が40%を超えている。

ファン氏は「(不動産税の)導入で人々が財産を溜め込むことはない。むしろ資本市場に資金を配分し、企業に利益をもたらすだろう」と述べた。

ただファン氏は、不動産税は長期的に見れば中国の肥大化した不動産市場の金融リスクを薄めるものだとはいえ、短期的な痛みを緩和するために慎重な実施が必要だと考えている。

「市場が政策を理解し、対応するための時間的余裕を与えなければならない。一気に動けば、不動産価格の暴落を招き、財務の健全性が損なわれる」とくぎを刺した。

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