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コラム

コラム:ゼロコロナと抗議デモ、中国当局が招いた「三重の危機」

[香港 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国は新型コロナウイルス感染者急増に対する当局の対応が混乱し、感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策に抗議する行動が、地域的にも社会階層的にも拡大している。政府はパンデミックを封じ込めたと早合点して2年間を無駄にし、自らの過信が招いた経済、医療、政治という「三つ巴」(みつどもえ)の危機に対処する準備が整っていない。

 11月28日、 中国は新型コロナウイルス感染者急増に対する当局の対応が混乱し、感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策に抗議する行動が、地域的にも社会階層的にも拡大している。写真は28日、上海の新型コロナウイルス感染症検査場で撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

今回の抗議行動は、習近平体制にとって最大の試練になり得る。数字で示すのは難しいが、これまでのところ1989年の天安門事件に比べればデモの規模は小さいようだ。天安門事件では政府が戦車を投入し、汚職や賃金低迷、18%にも上ったインフレに怒る大学生や工場労働者による大規模な抗議運動を鎮圧した。ただ、今回は習氏の辞任を求める声も聞かれる。

あるいは天安門事件に比べると、地域的な集中度が低いだけかもしれない。混乱は全国に広がり、厳しいコロナ対策が生活やビジネスを圧迫し、終わりが見えないことに不満を持つ人々が街頭に押し寄せている。

天安門事件の場合と同じように、問題は経済や政治に及び、規模は全国的だ。今回も中流階級の学生と、米アップルのサプライヤーである鴻海精密工業の組み立てラインにいるようなブルーカラーの労働者が、共通の理由で抗議している。

さらにインターネットがデモ参加者の連携を促すという、まさに治安機関が何十年も防ごうとしてきたことが可能になっている。

この不安定な状況によって、投資家の楽観的な見方は一変するだろう。11月に入って政府がやっと習政権の看板政策である「ゼロコロナ」の部分的な緩和に乗り出すことを示唆したため、トレーダーはたたき売っていた中国株に再び資金を注ぎ込んだ。

だが、この軌道修正はタイミングが悪かった。主要株価指数のハンセン指数が11日間で27%上昇する一方、コロナは新たな変異株が生まれ、27日には新規感染者数が爆発的に増えて4万人を超えた。

各都市は行動規制の緩和から厳重警戒へと転じた。しかし、高齢者の多くがワクチン接種を拒否しているため、このままでは死者の急増はほぼ確実。また、ロックダウン(都市封鎖)への不満を訴えるデモ参加者がいる一方で、コロナ感染を恐れている市民がいることも当局は認識している。例えば、河北省の石家荘市でロックダウンが緩和された際には、多くの住民が買い物に行かず、アパートにこもった。

住民のこうした行動を考えると、ゼロコロナ政策を放棄すれば即座に経済活動が活性化するという主張は成り立たない。死亡率が上昇するリスクと、貧しい地域の公的医療制度が依然としてぜい弱なことを考えると、政府が譲歩するのは難しい。「アメとムチ」を組み合わせればデモ隊を消すことはできるかもしれないが、当局は新型コロナウイルスを脅すことも、なだめることもできない。

不満の波が膨れれば膨れるほど、当局の中の強硬派は暴力的な攻撃の導入や厳格な隔離政策の復活を主張するかもしれない。だが、こうした対応もリスクを伴う。

天安門事件があったからこそ、その後に富創出の時代を迎えることができたと政府を擁護する人々もいる。しかし、中国の経済成長率は1989年に3分の2近くまで減速して4%となり、翌年もその水準にとどまった。

今年は不動産が暴落、小売支出が低迷、輸出は減少しており、さらなる経済悪化を容認する余地は政府にない。国際通貨基金(IMF)は今回の混乱に対する政府対応を考慮に入れる前でも、中国の今年のGDP成長率をわずか3.2%と予想している。

中国政府がこのような窮地に陥ったのは自業自得であり、政府関係者が抜け出すのに苦労しているとしても、同情には値しない。

●背景となるニュース

*中国では27日も政府の厳格な新型コロナウイルス規制に抗議する行動が続き、全国各地に拡大した。

*中国は大型連休後の11月初旬にコロナ感染者数が急増し始めた。政府が28日に発表した27日の新規感染者数(改定後)は4万0347人。

*政府は11日、海外からの入国者に対する隔離期間の短縮など、コロナ感染対策の一部緩和を発表した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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