[香港 25日 ロイター] - 中国が本土企業の海外上場に対する監視を強化する計画は、今年の金融市場を混乱させ、海外での上場を停滞させた規制上の不透明感を和らげる可能性が高い──。複数の銀行関係者やアナリストがこうした見解を示した。
ただ、かつては自由だった中国企業の米国市場などでの上場を抑制するために設計された、今回の新しい申請ベースの制度については、規則の施行とコンプライアンス基準に未解決の問題を残している、という。
投資銀行の中金公司(CICC)はノートで、「新規則は包括的で体系的かつ市場志向の規制へのアップグレードとなっている」としながらも、「さらなる観察と明確化が必要ないくつかの項目」があると指摘した。
中国証券監督管理委員会(CSRC、証監会)は24日、海外で上場する国内企業を対象とした規則の強化案を公表。海外上場を目指す企業に中国の法律と規制を遵守しているかどうかを確認する枠組みの下での届け出を義務付けた。
いわゆる「変動持ち分事業体(VIE)」構造を採用している企業は、法律・規制を遵守している限り海外上場が認められることになり、中国当局がそうした上場を阻止するのではないかと懸念していた投資家にとっては不透明感が解消された。
新規則への反応は、クリスマスのため24日は休場だった米国の株式市場では取引が再開する27日に判明する。香港株式市場は28日に取引を再開する。
また、今回の新規制案では証券規制当局とサイバースペース監視当局などさまざまな業界規制当局との間で緊密な連携が求められている。
中国のブティック型投資銀行、高鵠資本(シグナス・エクイティ)のマネージングパートナーである金明氏は「規則案の公表は、異なる規制機関の間で大きなコミュニケーション上の障害が取り除かれたことを示している」と語る。
一方、CICCは、特に外資規制を回避するためにVIE構造が用いられている場合、規則がどのように施行され、コンプライアンスがどのように判断されるかはまだ不明だと指摘。たとえ国家安全保障上のリスクがない香港での上場を計画している企業であっても、証券規制当局に申請する前に「発行体は自発的に国家インターネット情報弁公室(CAC)に接触して、その同意を得ることを勧める」と付け加えた。
新規則は、新規株式公開、セカンダリー上場、裏口上場、特別買収目的会社(SPAC)を通じた上場など、あらゆる種類の海外上場を対象としている。
NYUロースクールの非常勤教授であるウィンストン・マ氏は、グローバルなデジタル経済においてクロスボーダーのデータセキュリティーが重要になっていることが今回の動きの主な背景だと強調。「そのため、新規則案では(証券規制当局の)認可手続きの前に、サイバーセキュリティー上の審査が完了していなければならない」と語った。
今回の規則案について、来年1月23日まで意見募集がされる。
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