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焦点:中国鉄鋼業に「逆転現象」、インフラ特需で高度化停滞
2017年6月19日 / 07:37 / 5ヶ月後

焦点:中国鉄鋼業に「逆転現象」、インフラ特需で高度化停滞

[マニラ/北京 15日 ロイター] - インフラ整備計画に後押しされた中国の建設用鉄鋼メーカーは、ここ数年における最高益を計上しており、より高度な製品を扱うライバルを圧倒する勢いだ。これは中国政府が長年推進してきた鉄鋼メーカーの高付加価値化に逆らう流れとなっている。

 6月15日、インフラ整備計画に後押しされた中国の建設用鉄鋼メーカーは、ここ数年における最高益を計上しており、より高度な製品を扱うライバルを圧倒する勢いだ。これは中国政府が長年推進してきた鉄鋼メーカーの高付加価値化に逆らう流れとなっている。写真は山西省の製鉄所に積み上げられた鉄筋。2016年4月撮影(2017年 ロイター/John Ruwitch)

製造部門が失速しつつある中国は、成長加速の原動力としてますますインフラ投資に依存するようになっている。建設用鉄鋼製品に対する需要は急増し、メーカーの利益率は過去最高に近い水準に上昇した。

「環境汚染との闘い」において質の低い鉄鋼生産設備が閉鎖されるなか、インフラ投資の牽引によって建設用鉄鋼を扱うメーカーに明るい展望が開けている。だが、その一方で、付加価値の高い鉄鋼を扱うメーカーは、自動車業界などの製造業からの需要低迷に苦しんでいる。

「生産設備の削減と、中国のインフラ投資拡充期待から、長尺鋼材の消費が力強く伸びており、今後数年にわたって、鉄筋メーカーの利益が増大する可能性がある」と語るのは、北京のコンサルタント会社CRUでアナリストを務めるリチャード・リュウ氏。

証券会社CLSAが追跡しているデータによれば、建設用鉄鋼製品である鉄筋(長尺鋼材とも呼ばれる)の利益率は、今年に入って800%以上も上昇し、6月初めの時点でトンあたり1100元(約1800円)前後に達した。

一方、自動車や家電に用いられる冷延コイル(CRC、冷延鋼板)の利益率は、同じ時期、47%低下して437元前後となっている。

CRCなどのハイエンド製品の利益率は、鉄筋よりも高いのが普通だ。CLSAのデータによれば、2012年から2016年にかけて、CRCの平均利益率はトンあたり341元、これに対して鉄筋は107元だった。

利益率の上昇を受けて、世界最大の鉄鋼生産国である中国では、価格上昇の恩恵を受けるべく、鉄鋼各社が一度は閉鎖した鉄筋の製造ラインの再開を急いでいる。

また好調な需要によって、鉄鋼商社の抱える鉄筋在庫は、4カ月も経たないうちに半分以下に減ってしまった。

中国東部・山東省の中規模鉄鋼メーカー、日照鋼鉄ホールディングの営業担当マネジャーは、「鉄筋の利益率が大きいと上司が判断し、2年間閉鎖されていたラインの再開が決まった」と語る。「建設用鉄鋼の展望が良好なあいだは、これらのラインを稼働させ続けることになるだろう」

<選択の余地無し>

中国の習近平国家主席は野心的な「一帯一路」プロジェクトを推進しており、インフラの改善を優先課題としている。「一帯一路」では、中央アジア、さらにはその先へと道路・鉄道網を延ばしていく予定だ。

一方で、製造業の不振は続いており、5月の中国における自動車販売台数は、2015年以来初めて2カ月連続で減少した。これに伴い、CRCなどの高付加価値鋼板製品の需要は抑制されている。

低価格・低グレードの建設用鉄鋼メーカーと高付加価値な鉄鋼メーカーとのあいだの「運命の逆転」の背景には、産業由来の環境汚染に対する中央政府の取締りもある。

大気汚染対策を進めるなかで、中国は、環境への影響が大きく、主として鉄筋の生産に用いられるプラントである「誘導炉」を今月末までに廃止すると宣言している。

 6月15日、インフラ整備計画に後押しされた中国の建設用鉄鋼メーカーは、ここ数年における最高益を計上しており、より高度な製品を扱うライバルを圧倒する勢いだ。これは中国政府が長年推進してきた鉄鋼メーカーの高付加価値化に逆らう流れとなっている。 写真は2006年、湖北省にある冷延鋼板の製造工場で働く男性(2107年 ロイター/Alfred Cheng Jin)

アナリストらの試算によれば、昨年、中国における鉄筋の総生産量の約4分の1にあたる約5000万トンが誘導炉によって生産されたという。

CLSAのデータによれば、鉄筋の平均利益率は、2016年通年でトンあたり91元だったのに対し、今年は現時点までで同572元となっている。

低価格・低グレードの鉄鋼メーカーによる予期せぬ復活は、主として先進的な大手鉄鋼メーカーによる規模の小さな競合他社の吸収を促し、非効率な企業を退場させることにより、国内の巨大な鉄鋼部門を近代化しようという中国の取り組みを後退させている。

昨年、中国で最も先進的なテクノロジーを持つ鉄鋼メーカーである宝鋼集団(600019.SS)は、ライバルの武漢鋼鉄集団を買収し、アルセロール・ミタルISPA.ASに次ぐ世界第2位の鉄鋼メーカーとなった。

長尺鋼材と鋼板の双方を生産している中国の一部の製鋼所は、利益率の大きさゆえに前者の比重が高まっている、とCLSAのアナリストとして香港で活動するダニエル・メン氏は指摘する。

「これは広く見られる現象だ」とメン氏は言う。「少数の製鋼所に限った話というより、多くの製鋼所でこうした転換が見られるはずだ」

だが、鋼板製品だけを生産している製鋼所では、プラントを閉鎖することもできなかった。

「鋼板メーカーは利益率が圧迫されているのを理解しているが、生産を続ける以外の選択肢がない。というのも、設備を停止させて、また利益率が改善したときに再稼動する方が高コストにつくからだ」と国有企業の山東鋼鉄集団のある部門長は語る。

CLSAのデータによれば、6月初めのCRC鋼板の利益率はトンあたり437元前後で、1月末の水準に比べて半分以下になっている。

コンサルタント会社スティールホームのデータによれば、中国の商社が保有する鉄筋・CRCの在庫は今年のピークに比べていずれも減少しているが、鉄筋の在庫が56%減少したのに対して、CRCの在庫は13%しか減っていないという。

<鋼板の輸出拡大はあるか>

国内の鋼板需要が減速するなかで、海外に輸出される中国産鋼板が増加している。1─4月は合計1485万トンで、鉄鋼輸出総額の55%に相当する。

2016年の鋼板輸出は4803万トンで、鉄鋼輸出総額の44%を占めた。今年になってハイエンド鉄鋼製品の輸出比率が増大したことで、中国が改めて国際市場における鉄鋼ダンピングの批判を受けやすくなるのではないかという懸念が再燃する可能性がある。

「(中国の鉄鋼メーカーは)以前、過剰供給分を処分するために原価割れの価格で鋼材を売っているという批判を受けていた」と英鉄鋼関連コンサルタント会社MEPSのジェレミー・プラット氏は語る。「国内の取引環境が振るわないなかで、中国の鉄鋼メーカーが今後数カ月、輸出量を増やすことに意欲的になる可能性がある」

(翻訳:エァクレーレン)

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