January 20, 2020 / 7:30 AM / a month ago

焦点:中国から感染拡大、アフリカ豚コレラが世界の脅威に

[シカゴ 16日 ロイター] - 米税関・国境警備局で働く探知犬、ビーグルの「ベティ」は、中国からシカゴのオヘア国際空港に到着した女性から、豚肉の匂いを嗅ぎ取った。

1月16日、アフリカ豚コレラはすでに東南アジア・欧州に拡大しており、症例はベトナム、カンボジア、ラオス、韓国、ミャンマー、フィリピン、ポーランド、ベルギー、ブルガリアで見つかっている。写真は2019年11月、中国・上海で開かれた輸入展示会で撮影(2020年 ロイター/Aly Song)

まもなく、探知犬担当者がハンドバッグのなかにハムサンドイッチが入っているのを発見し、押収した。女性は上海発の中国東方航空機の乗客だった。

なぜハムサンドイッチが危険視されたのか。ハムに用いられた豚肉がアフリカ豚コレラ(ASF)に感染しており、米国内に感染が拡がる可能性があるからだ。中国はこの伝染病の流行により何百万頭もの豚を失っており、豚肉価格は記録的な水準に高騰した。中国は割高な輸入肉を購入せざるをえず、グローバルな食肉市場を混乱させている。

「もっと警戒を強めないと、米国にも感染が広がる可能性は非常に高い」。税関・国境警備局の農業専門家で、豚肉探知犬を担当するジェシカ・アンダーソン氏は言う。

「ベティ」は、米国の空港で専門的な訓練を受けた拡大チームの一員で、230億ドル規模の米国豚肉産業をASFから守るという大規模な取り組みの一翼を担っている。この疾病は世界最大の中国養豚産業に大打撃を与えており、ロイターによる9カ国からの報道によれば、感染が中国国外へと広がるなかで、世界各国の政府は防御強化を急ぎつつある。

ASFはすでに東南アジア・欧州に拡大しており、症例はベトナム、カンボジア、ラオス、韓国、ミャンマー、フィリピン、ポーランド、ベルギー、ブルガリアで見つかっている。こうした諸国はもとより、今のところ感染を免れている世界各国も、荷物検査の強化や肉類の持ち込み禁止など、旅行客に対する取り締まりを進めている。

豚肉生産国は、もしこの疾病が国内で広がった場合には数十億ドルの損失を被りかねない。感染は畜産農家を壊滅させ、輸出市場を閉ざしてしまうからだ。ASFは人間にとっては脅威ではないが、感染豚のためのワクチンや治療法は存在しない。

9月に行われた4日間にわたる防疫訓練の参加者がロイターに語ったところでは、7730万頭の豚を飼養するトップクラスの豚肉輸出国である米国にこの疾病が持ち込まれれば、政府は養豚産業の保護に苦心することになろう。

全米養豚協会のデイブ・パイバーン上級副会長(科学・テクノロジー担当)は、「この病気が入ってきたら、我々が知るような豚肉産業は壊滅するだろう」と語る。

米農務省は、ミシシッピ州でASFが発生し、ノースカロライナ、アイオワ、ミネソタなど主要な養豚州に拡大したというシミュレーションを行った。獣医師、養豚農家、政府当局者は対策センターに集まり、感染発生後、どれだけ迅速に診断、感染防止、洗浄を行えるかを試した。

訓練に参加したパイバーン氏によれば、この訓練の経験から分かったのは、米国は、ASF検査を迅速に行い、感染を拡大させずに当該個体を殺処分する能力を高める必要がある、ということだという。

世界で最も豚肉消費量が多い中国では、この疾病の影響は壊滅的である。死亡した豚の正確な頭数は分からない。ラボバンクでは、中国は昨年中に飼養していた豚の最大55%を失ったと推測している。だが、2018年8月に最初の症例が発見されて以来、1兆ドル規模の国内養豚セクターに関して中国政府が明らかにしたのは、より小さな損失だ。

<グローバルな対応>

米政府は空港や港湾に探知犬を配備し、感染対応訓練を実施、豚の検査体制を強化した。フランス、ドイツでは感染を媒介する可能性のある数十万頭のイノシシを殺処分した。またフランスはイノシシの侵入を防ぐために全長132キロ(82マイル)にわたるフェンスを建設した他、豚の輸送に用いるトラックについて消毒を義務づけるなど、養豚農業の衛生規則を厳格化することを計画している。

タイでは、感染が確認されているミャンマーに近い県の豚を殺処分した。韓国は北朝鮮との境界線に配備している兵士にイノシシの捕獲を命じ、ベトナムは感染した豚を確実に殺処分するために軍を動員している。

オーストラリアは、豚肉を密輸入した容疑でベトナムからの旅行者を強制送還し、豚肉製品の輸入を禁止した。また、近隣国をASFから守るため、太平洋島しょ諸国にアドバイザーを派遣している。業界団体の豪州豚肉公社によれば、こうした取り組みが失敗すれば、同国は5年間で20億豪ドル(14億米ドル)以上の損失が出る可能性があるという。

オーストラリアのマーク・シップ首席獣医官(CVO)は、「商業養豚にとって、これまで見られたなかで最大の脅威であることは確かであり、あらゆる商業用家畜を含めても過去最大の脅威と言えるかもしれない」と語っている。

米当局者は、仮にASFが検出された場合、農場間の移動や農場から食肉処理場への豚の国内輸送を停止することを計画している。農務省と各州は、疾病を封じ込める手段として、一部地域の家畜の移動を停止する命令を出すことになるかもしれない。

農務省はロイターへの文書で、9月の訓練では、豚の移動を制限するタイミングと方法に関して、農務省から各州への詳細な指導が不足していることが浮き彫りになったと述べている。政府は、ASFを検査できる研究施設の数を増やしつつある。

9月の訓練に参加した、ミネソタ州の豚肉生産者クリステンセン・ファームの動物福祉監査員アマンダ・ルイチェンス氏は、「不十分な点がいくつか確認できた」と話す。「感染が米国内に及ぶことを考えるだけでゾッとする」

<「残飯給餌」を禁止>

パイバーン氏によれば、ASFの米国内への感染拡大に関して、最大のリスクとなるのは、食肉を持ち込む旅行者である。病原体は、豚肉製品に加工されても数週間は生き延びるからだ。

汚染された食品は、いわゆる「残飯給餌」と呼ばれる慣行により、野生化した豚や家畜の口に入る可能性がある。農務省によれば、世界各地で、これが豚の疾病の発生原因になっているという。米国の農家は、肉類を含む残飯を餌として豚に与える場合はライセンスを取得し、病原体を殺すために調理することになっている。

ASFは豚から豚への感染で、感染したダニに噛まれる、ウィルスに触れたトラックや衣類・靴などからの感染によって拡大する可能性がある。

中国は感染が見られた省や近隣地域からの生きた豚の輸送を禁止したが、感染拡大を防ぐ試みとしては失敗に終わった。また、豚の殺処分や、残飯を豚の餌として与えることも非合法化されている。

ASFは、韓国、日本、オーストラリア、フィリピン、北アイルランドの空港で押収された食品からも検出されている。

フィリピンには、中国から密輸入された汚染豚肉を経由してASFが入り込んだと考えられている。フィリピンは現在、発生国から渡航した乗客の機内持ち込み手荷物の強制検査を行っている。

フィリピン中部のセブ州政府は、ASFを回避するため、輸入及びルソン島からの豚肉製品の持ち込みを禁止している。ルソン島では、ASFのために6万頭以上の豚が死亡または殺処分となっている。またフィリピン農務省では、空港、航空会社、港湾からの残飯を含む残飯給餌を禁止している。

米農務省は、ASFによるリスクに関する評価報告書のなかで、米国では通関手続地での検査率が低いため、違法な豚肉が検知されずに国内に入り込む可能性が増している、と述べている。農務省は税関・国境警備局と協力し、新たにASF発生が確認された国が出るたびに、米国のすべての港湾・空港に警告を発し、旅行者や貨物の検査を強化するよう要請している。

だが税関・国境警備局では、空港などの入国地点に配置する農産物検査専門家が3148人必要であると試算しているものの、現実には約2500人しかいない。

米上院は昨年、要員不足が解消されるまでは、年240人の農業専門家を採用し、新たな探知犬チームを年20チーム訓練・配備することを承認した。農務省によれば、連邦政府は昨年、空港や港湾で働くビーグル犬チームを新たに60チーム承認したという。

他の議員とともに法案を提出したゲイリー・ピーターズ上院議員(ミネソタ州選出、民主党)によれば、こうしたチームは大きな課題に直bojj面しているという。

「日々、何百万人もの旅行者、何万個もの貨物コンテナが食品を伴って我が国の国境を越えている」とピーターズ氏は言う。「どの1人、どの1個をとっても、米国の食品供給と農業に大きな損害を与える可能性がある」

(翻訳:エァクレーレン)

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