June 5, 2019 / 2:27 AM / 6 months ago

コラム:ポスト天安門の若者世代、中国は再び服従強いるか

[香港 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 1989年に学生運動を武力制圧した後、中国共産党は、国民に服従の代償として繁栄を約束した。

当時と比べると賃金は40倍になったが、格差も劇的に広がった。 取り締まりも厳しくなった。そして今、習近平国家主席は再び、若者たちに要求を突き付けている。それは不良債権から貿易戦争まで、さまざまな経済的負担を背負うことだ。

30年前、人民解放軍は北京の紫禁城前で数週間続いた抗議活動を終わらせるために、天安門広場で非武装の市民たちに向けて発砲した。

抗議者たちの訴えは多岐にわたり、交渉を困難にしていた。すべての要望の背後には、経済不安があった。価格統制の緩和によって、1989年2月の消費者物価のインフレは28%に達した。この記録は現在も破られていない。

しかし、事態はさらに悪化した。天安門広場から戦車が退却した後、国際社会は対中制裁を発動。1988年から1990年にかけて、経済成長率は11.2%から3.9%にまで落ち込んだ。

その次に起きたことが鍵となった。政府は貿易と投資を開放し、市場改革を行い、政治的にも態度を軟化した。結果として国の経済規模は13兆ドル(1400兆円)に拡大し、天安門広場で何が起きたにせよ、貧困脱却プロセスを遅らせた可能性がある不安定な状態を防いでくれたのだろうと国民の多くを納得させた。

しかし、服従がより良い生活を保証するという社会契約は、成長が鈍化するにつれ、色あせてきた。政府は再び、若い労働者に対する監視を強めている。2018年には深センの機械メーカー、佳士科技(JASIC)の組合を支援しているとして、マルクス主義の大学生らが拘束され始めた。

ブルーカラーやホワイトカラーの労働者たちにとって、30年前に天安門広場に詰めかけた人々と同じように、憂慮すべき失望感が広がっている。彼らが好んで買う商品には、「全く何も達成してないブラックティー」など皮肉のきいたブランド名がつけられている。

彼らが抱えているのは経済的な不安と不信感だ。これは他の先進経済国にも広がっており、フランスでは「黄色いベスト運動」を巻き起こした。

彼らの不安はデータにも表れている。「世界不平等データベース」によると、中国人口のトップ1%の富裕層が国富の30%を所有しており、この割合は1995年から倍増した。さらに、下層にある人口の半分は、全体の6%強しか所有していない。

残念ながら中国には先進経済の皮肉を受け止める余裕はない。政府は20代の若者にモノを作り出し、消費し、たくさんの税金を払ってもらう必要がある。国の1人当たりの国内総生産(GDP)は約9000ドルとロシアより低いが、人口動態プロファイルは富裕国のようだ。

公式推計によると、2028年までに年金基金は赤字化し、2035年までに資金が枯渇する。それにも関わらず、2050年には人口の3分の1は60歳以上となり、年金受給者1人当たり1人の労働者しか支えになれない。さらに、少なくとも2兆元(約31兆円)の不良債権を処理する必要がある。

もし民間セクターが高報酬の仕事を提供しているならば対応可能だろう。しかしそのブームも行き詰っている。2018年下旬から、製造業、非製造業ともに景況指数が低下する一方で、これまでとは異なり、サービス業界もその減少分を補えていない。

大学のシステムも、卒業生を職に就かせることに苦戦している。これは天安門事件の当時も、デモ参加者が抱えていた問題だ。結果として、新卒の社会人は低い賃金で長時間働くことになる。

例えば、電子商取引大手アリババ・グループ(BABA.N)創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は、「朝9時から夜9時まで、週6日働く」という意味の「996労働」を奨励している。また、見当違いの労働保護法により、非正規雇用や不完全雇用が増えている。

一時は雇用を創出していたITブームも減速している。京東商城(JDドットコム)(JD.O)や騰訊控股(テンセント・ホールディングス)(0700.HK)といった、事業を広げすぎたインターネットのスター企業はリストラに着手した。

ギャブカル・ドラゴノミクスのデータによると、新卒の雇用の鍵となるスタートアップ企業への投資も、2018年以降、激減する傾向にあり、回復の兆しもない。

これらの経済的影響は、消費から起業に至るまで深刻さが広がっている恐れがある。

住宅価格の高騰によって可処分所得が削り取られ、若い人たちが化粧品を買ったり飛行機のチケットを買ったりできなくなっている。世帯の抱える負債額も大幅に増えた。多くは、若者によるクレジットカード発行と消費者ローンの激増によるものだ。すでに債務を抱えているミレニアル世代の若者は、ますます習主席の求める負担を背負うことが難しいだろう。

新世代の若者は、冷え込んだ経済状況でもやっていくことができるだろう。しかし、かろうじて生活できるというのでは、習氏がうたっていた豊かで若々しい「チャイナドリーム」とは違う。禁欲主義だけでも、経済は改善しない。

 6月4日、1989年に学生運動を武力制圧した後、中国共産党は、国民に服従の代償として繁栄を約束した。写真は1989年6月5日、北京で戦車の前に立ちはだかる男性(2019年 ロイター)

若者たちのチャイナドリームは、銃声ではなく、うめき声とともに終わりを迎えるのかもしれない。しかし、その行きつく先は同様に悲惨だ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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