[上海 16日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)が2012年以来初の利下げに踏み切り、緩和サイクルの始まりを示唆してから5カ月近くがたち、実質借入金利がようやく低下してきた。
セントラル・セキュリティーズ(上海)のアナリストは「マネーは再び安価になった」と指摘。大手国有銀のあるトレーダーも同じ見方を示す。
過去の緩和サイクルとは異なり、今回はインターバンク市場がネックだった。インターバンク市場では第1・四半期、利下げや預金準備率引き下げにもかかわらず、流動性がタイトな状態が解消されなかった。
人民銀行は3月と4月、指標となる7日物リバースレポでガイダンス金利を引き下げ、インターバンク金利を強引に押し下げた。その結果、金利は30日間で200ベーシスポイント(bp)低下した。
当局が貸出金利の押し下げに苦労していることは、現在の環境下でマネーサプライをコントロールするのがいかに難しいかを示している。
現在はドルが比較的強いため、人民銀がドル買い・人民元売りの為替介入を行う必要性が薄れ、その結果、人民元の流動性が低下している。
中国の銀行の主要融資先は国有企業だが、国有企業は生産性が低下している上、過剰生産能力を抱えており、銀行も積極的な融資は手控えざるを得ない。一方、民間企業への貸し出しはためらう銀行が多い。
<株式市場の過熱リスクも>
トレーダーは、人民銀行の政策方針を踏まえると、現在2.8%の短期金融市場の7日物レポ金利は今後、2%を割り込むと見ている。
HSBCのアナリスト、アンドレ・デ・シルバ氏とサイモン・ファング氏は「短期金利を妥当な範囲にコントロールするため、人民銀は7日物リバースレポ金利をさらに押し下げるだろう」との見方を示した。
デフレの回避とリファイナンスコストの引き下げを目指している中国の政策当局者にとって、インターバンク金利の大幅な低下は朗報だ。
一方、人民銀行が直接介入して短期金利を押し下げると、株式市場が高騰するというリスクも生じる。実際、人民銀行がインターバンク金利の押し下げ措置を取るのと歩調を合わせるかのように、中国の株式市場はここ1カ月、大幅な上昇が続いている。
セントラル・セキュリティーズのアナリストは、実体経済が回復して流動性を吸収できるようになるまでには、時間がかかると指摘する。半面、安いコストで調達した資金は「少なくとも今年下半期、もしくは来年までは株式市場に流入し続けるだろう」との見方を示した。
人民銀行は3月3日、期間7日のリバースレポでガイダンス金利を10bp引き下げた。引き下げは1年ぶり。その後もほぼ10日に1度のペースでさらに4回引き下げ、株式市場はそのたびに上昇した。
Lu Jianxin記者、Nathaniel Taplin記者 翻訳:吉川彩 編集:橋本俊樹
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