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フォトログ:豪「パイロット牧師」、奥地にXマスの祝福届ける

[ブロークンヒル(オーストラリア) 21日 ロイター] - 夏を迎えたオーストラリアの奥地にやってくるサンタクロースの移動手段は、トナカイが引く橇(そり)ではない。単発機「セスナ182」だ。

夏を迎えたオーストラリアの奥地にやってくるサンタクロースの移動手段は、トナカイが引く橇(そり)ではない。単発機「セスナ182」だ。写真はブロークンヒルからプンカリーへ飛行するデービッド・シュリンプトン牧師。15日撮影(2021年 ロイター/Loren Elliott)

少なくとも、操縦士免許を持つデービッド・シュリンプトン牧師(57)は、そうやって信徒たちにクリスマスの祝福を与えに行く。数千人の信徒が散在する牧場や農場の広がる地域は、アイルランドの3倍近い面積がある。オーストラリア合同教会に所属するシュリンプトン牧師は、2003年以来、国内でも最も交通の不便なコミュニティーのいくつかを飛び回り、「迷える仔羊たち」に語りかけ、彼らの声に耳を傾ける。

航空機を給油ポンプに引き寄せるシュリンプトン牧師。

しかし、オーストラリアが世界で最も厳格な水準の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を導入した昨年は、それもほとんど休止した。「パードレ・デーブ」としては、エッセンシャルワーカー扱いを要求し、22万5000平方キロメートルにわたる地域で年4回実施している訪問スケジュールを維持することもできた。だが彼は、ウイルスを拡散させるリスクを最小限に抑えるため、電話で信徒たちの様子を尋ねる方法を選んだ。

行動制限が緩和される中で、シュリンプトン牧師はいま再び操縦桿を握ろうとしている。ニューサウスウェールズ州西部の広大な地域が何年にもわたり経験してきた「いつものクリスマス」にできるだけ近い形で信徒たちと交流したいというのが彼の願いだ。牧場主や農場主、学校の生徒、教会に通う真面目な信徒、いや信仰のない人でも、シュリンプトン牧師は誰に対しても心を寄せている。

サンタクロースの格好をするシュリンプトン牧師。

「再び出かけていって、また皆に会えるのは素晴らしい。また学校を訪れて子どもたちの顔を見て、人里離れた土地に暮らす大人たちに再会して、彼らは忘れられていないのだと伝えるのは大きな喜びだ」。ブロークンヒルの自宅に近い小さな空港でロイターの取材に応じたシュリンプトン牧師は、そう語った。

「私が引退して、どこかよそに行ってしまったと思った人もいたが、そうではない。私はまだここにいるし、彼らに会いに出かけるつもりだ」

それぞれパブ1軒しかない数々の町、羊や牛を飼育する牧場、先住民コミュニティー、少数の生徒しかいない学校で構成された緩やかなネットワークにとっては、パンデミックもまた、5年近くにわたる干ばつに続く、相次ぐ逆境の1つにすぎない。

学校を訪れ児童たちの前で話すシュリンプトン牧師。

「このあたりの人間の多くは頑健でタフだが、弱いところもある。何人かは干ばつで打ちのめされてしまった」と語るのは、プンカリーの町で何年もシュリンプトン牧師に宿を提供してきた元パブ店主のジョシュ・シアードさん。町の外に立つ看板には「人口84人」とある。だが地元の人は「今はずっと少ない」と教えてくれるだろう。

ゴム製クーラーに入ったビールが並ぶテーブルの上でハエを追い払いながら、シアードさんは「デーブと話ができるのは、彼らにとってとてもいいことだった。お互いの間では、稼いでいる時だけ、何をやっているか話すだけだから」と話した。

サラ・キャリーさんは、メリノ種の羊を飼育する「ネトリー・ステーション」という名の牧場をパートナーのトニーさんと共に経営しており、この6年間、シュリンプトン牧師の訪問を受けてきた。キャリーさんによると、シュリンプトン牧師は「(男たちとの)茶飲み話の中で、(略)本人がそれと気づかないうちに答えを引き出す」コツを身につけているという。

増水した川の前に立つシュリンプトン牧師とジョシュ・シアードさん。

プンカリーの公立学校の生徒は5人。自宅のインターネット接続環境は芳しくなく、ロックダウン中はオンラインでの学習や友達付き合いに不自由していた。彼らが年末の表彰式の日をワクワクしながら待っているのは、もっぱら出席する人物ゆえだ。

「ディスコミュージックをかけて皆で踊る、賞をもらう、お芝居を演じる、といったことは分かっていても、あと数日というときに彼らが口にするのは、『パードレ・デーブはいつ来るの?』という言葉だ」とこの学校のアリソン・キング教頭は語った。

茂みの中で腐敗するカンガルーの死骸。

「要するに、誰か共に時を過ごす人がいるということ。何か打ち明けたい悩みがあれば、彼に話せばいい。たとえ話すだけでも、誰か耳を傾けてくれる人がいるということ。彼はここにやってきて、話を聞いてくれる」

シュリンプトン牧師が「空飛ぶ牧師」という天職を得たのは、神の思し召しが2つ重なったことによる。子どもの頃から空を飛ぶことに興味があったと彼は言うが、実際に就いた職業は、不動産関係、児童保育、そしてタクシー運転手だった。その後、妻の勧めもあって牧師になるための勉強を始めた。

ブロークンヒルの教会で日曜礼拝を行うシュリンプトン牧師。

ある空港に近い教会の牧師だった頃、偶然、操縦士になるための講座の広告が目に入り、気まぐれで登録してみた。そして、次の任地はオーストラリア北部、やはり離れた場所にあるダーウィンだった。そこで、20年近くにわたる「空飛ぶ牧師」生活が始まった。ブロークンヒルに移ったのは2014年のことだ。

シュリンプトン牧師は、この2年間、社会的な交流に課せられた制限によって影響を受けたという点では、自分も信徒たちと同じだと述べ、今回の訪問は「よりよい時代、もっと明るい未来」の始まりになるだろうと語った。

航空機をひもで固定するシュリンプトン牧師。

「祝福すべき時だ。(略)誰かと一緒にいることを楽しみ、都会を遠く離れた土地に住む人からは、昨年のクリスマスとは違って家族と再会できることを心待ちにしている、という声が届いている」

(翻訳:エァクレーレン)

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