[ロンドン 23日 ロイター] - 英国の4つの大学が23日公表した報告書は、生物多様性の甚大な損失に伴う経済的な打撃でソブリン格付けに多大な影響が及ぶと警告した。中国を含めた市場全体で2030年までに、58%のソブリン格付けが少なくとも1段階の格下げに遭うとしている。
イースト・アングリア大とケンブリッジ大、シェフィールド・ハラム大、ロンドン大東洋アフリカ研究院が合同で26カ国を調査した。さまざまなシナリオに基づく試算の結果、重要な生態系の一部が壊れた場合でも、幾つかの国では基幹産業の農業や漁業が大きな被害を受けることが数値化されたという。これがソブリン債の格下げにつながることで、合計で年280億─530億ドルの追加利払い負担が生じる。債務コスト増大で各政府の財政支出余地が縮小し、たとえば住宅ローン金利上昇などにもつながると警告した。
こうした打撃が最も深刻と見込まれるのが中国とマレーシアで、部分的な生態系崩壊シナリオに基づくと格付けが6段階超下がる。ソブリン信用力低下で中国政府が負担を迫られる追加利払いは年120億─180億ドルとし、企業セクターにも200億─300億ドルの追加コストがのしかかると試算。マレーシアでは政府の利払いは10億─26億ドル増え、同国企業も10億─23億ドルの負担増になるとみている。
報告書は「この2カ国のソブリン格付けが投資適格級から投機的水準になってしまう点が何より重大だ」と指摘した。
報告書はインドやバングラデシュ、インドネシア、エチオピアでは4段階前後の格下げになるとみている。
報告書は「たとえばある国で漁業が壊滅すれば、サプライチェーンの流れに沿う形で他のいくつもの産業に経済的ショックが波及していく」と強調した。
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