October 26, 2019 / 11:11 PM / 17 days ago

アングル:海運業界、CO2半減に向け苦闘 高まる社会的責任

[ロンドン 23日 ロイター] - 高機能の塗装から最先端技術を駆使したスクリューまで、海運会社は二酸化炭素(CO2)排出量を削減するため、あらゆる細部にまで工夫を凝らしている。投資家や環境保護団体からのプレッシャーが高まっているためだ。国連機関である国際海事機関(IMO)は、2050年までに温室効果ガスの排出量を2008年水準の半分に削減する目標を掲げている。

10月23日、高機能の塗装から最先端技術を駆使したスクリューまで、海運会社は二酸化炭素(CO2)排出量を削減するため、あらゆる細部にまで工夫を凝らしている。写真はロシアのドン川を航行するタンカー。2016年9月撮影(2019年 ロイター/Maxim Zmeyev)

航空会社や海運会社は石油資源に依存しており、二酸化炭素排出量の削減を求める声に直面している。欧州環境機関によれば、何の対策も行われなければ、両部門は2050年までに世界の二酸化炭素排出量の40%を占めることになる。

IMOによれば、世界の二酸化炭素排出量に国際海運が占めるシェアは現在2.2%で、航空輸送の2%を上回っている。

オランダの銀行INGでグローバル海運部門を率いるスティーブン・ヒュースター氏はロイターに対し、「船舶は最長25年にもわたる長寿命の資産だ。海運産業がIMOによる目標の達成をめざすなら、より環境負荷の小さな船舶に切り替えるペースを加速する必要がある」と語った。

今年開始された民間のイニシアチブでも、燃料効率の良い船舶への融資に対する見解が示された。海運セクターは少なくとも200億ドル規模の資金不足にある。

環境負荷の小さいタイプの利用可能な燃料やインフラに関する全面的な見直しがなければ、海運産業が2050年までの目標を達成できるかどうかは疑わしい。一方、海運各社は現在、数十億ドルはかかるとみられる改革努力を続けている。

乾貨物(ドライカーゴ)船舶のチャーター規模で世界最大の顧客の1つである米国の農産企業グループ、カーギルでは、2020年までに貨物1トンマイルあたりの二酸化炭素排出量を、2016年水準に比べ15%削減する目標を掲げており、すでに12%以上もの削減に成功している。

削減策の1つが、高機能塗装の採用である。これによって船体外殻が滑らかになり、航海中に消費するエネルギーが少なくなる。

カーギルの海上輸送事業部門のジャン・ディールマン社長はロイターに対し、「業界全体が他のイニシアチブと合わせて通常の塗装から先進的な塗装へと移行していけば、排出量の削減という点でかなりの効果が期待できる」と語った。

イタリアの海運企業グリマルディ・グループで社長兼マネージング・ディレクターを務めるエマヌエーレ・グリマルディ氏は、塗装変更に加え、保有船舶30隻のスクリュープロペラを改良したと話す。

また燃料節約のため、グリマルディでは夜間に港湾水域に入る際の速度を落とし、各船舶がより多くの貨物を積めるよう、一部の積載容量を拡大したという。

「こうした小さな努力をたくさん積み重ねることが、変化につながる」とグリマルディ氏は語る。グループ全体では年間の二酸化炭素排出量を30万トン減らした、という。

<高まるプレッシャー>

IMOでは、船舶エンジンから二酸化炭素排出量を削減する方法として燃費を改善するため、新造船については強制的なルールを採用。

9月には、ゼロ・エミッション(二酸化炭素排出量ゼロ)の船舶・燃料を2030年までに実用化することをめざしたイニシアチブが開始された。

非営利団体CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は6月に発表した報告書のなかで、上場している海運会社上位18社のうち、低炭素化への対応が最も進んでいる海運会社として、日本郵船、マースク、商船三井の3社を選んだ。

世界最大のコンテナ海運会社であるマースクは、2050年までに、事業活動からの二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「カーボン・ニュートラル」を達成する目標を掲げており、保有船舶のうち約150隻の改造に過去4年間で10億ドルを投じている。

CDPの広報担当者は「こうした措置は、IMOの目標を達成するために必要な設備投資全体のごく一部にすぎない」と語る。

世界各国の専門家による委員会であるエナジー・トランジション・コミッションによる昨年の報告書によると、海運産業の全面的な脱炭素化に要するコストは2050年のGDP合計の0.2%以下、年間6000億ドル以下だ。これに対して、航空産業の完全な脱炭素化のコストはGDPの0.13%以下、年間5000億ドル以下という。

シンクタンクのロッキーマウンテン研究所のマネージング・ディレクターを務めるネッド・ハーベイ氏は、「マースクが掲げた目標は意義が大きい。世界の航空会社でも、これほどのコミットメントを示した企業はない」と語る。「金融業界は気候変動対策を真剣に考えており、対策の実現に動きつつあるし、顧客もサプライチェーンの低炭素化を求めている」という。

コンテナ海運会社として世界第2位につけるスイスのMSCは、2015年から18年にかけて、輸送トンマイルあたりの二酸化炭素排出量を13%削減した。

同社は、保有する250隻以上の船舶を改造し、スクリュープロペラや球状船首、高性能エンジンなど最新の設計を採用した。

また、二酸化炭素排出量を最小限に抑えるよう設計された世界最大のコンテナ船「MSCガルサン」など巨大新造船11隻を配備している。

「2030年以降について、この業界のコンテナ船団や海運セクター全体を見渡した場合、二酸化炭素その他の温室効果ガスに関する将来的な目標を達成するには、燃料及び推進技術において何らかの技術革新が必要になるだろう」とMSCグループのバド・ダール執行副社長は言う。

環境負荷の小さい燃料として液化天然ガス(LNG)利用への関心が高まってはいるものの、採用ペースは遅い。複数の専門家・海運関係者は、水素やアンモニアなど他の選択肢についても普及には時間がかかるし、コストも高いと話している。

ノルウェーの海運会社トルバルド・クラブネスのラッセ・クリストファーセン社長兼CEOは、先月開催された海運関係のカンファレンスで、「状況はますます厳しく、残された時間は少なくなっている。今後10年間でゼロ・エミッション船舶を建造する必要がある。LNGに関わって時間を浪費する必要はない」と述べた。

<「ポセイドン原則」>

このセクターには、資金の貸し手からのプレッシャーもかかっている。銀行は徐々に、融資ポートフォリオのなかにどのような船舶が含まれるか、選別するようになっている。6月に開始された「ポセイドン原則」と呼ばれるイニシアチブを受けた動きだ。

このイニシアチブに参加しているのは銀行11行で、海運産業向けの融資ポートフォリオは世界全体で1000億ドルに達する。海運会社に融資を提供する際の銀行の意思決定に、二酸化炭素排出量削減の努力を盛り込もうという初めての試みだ。

ソシエテジェネラルCIBで海運&オフショア部門グローバルヘッドを務めるポール・テイラー氏によれば、海運産業に融資している世界各国の銀行及び中国の機関が、海運セクター及び約7万隻の商用船舶に与えている優先債務は、約4500億ドル。

市場関係者によれば、INGは、海運セクターへの融資ポートフォリオが推定100億ドルに達すると言われるが、やはり「ポセイドン原則」イニシアチブに参加しており、最新設計の船舶を対象とした融資を行っている。

INGのヒュースター氏は、「INGをはじめ、船舶ファイナンスを行っている銀行は、より環境負荷の小さい船舶に対する融資への選好が強い。それがひいては、造船会社に効率改善の継続を促すことにつながるはずだ」と話している。

(翻訳:エァクレーレン)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below