January 24, 2020 / 12:47 AM / 7 months ago

コラム:企業融資の決定権握る銀行、気候変動に大きな役割

[ダボス(スイス) 22日 ロイター Breakingviews] - 銀行業界は、世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で地球温暖化問題を巡って白熱した議論が行われている現実を肌で感じつつある。今年のダボス会議は、気候変動が支配的なテーマだ。資産運用で世界最大手の米ブラックロック(BLK.N)は、気候変動に十分な手を打たない企業の意思決定に株主総会で反対すると約束しており、一部企業の行動を変えられるかもしれない。ただし規制当局が銀行に、気候変動に付随するリスクを適切に管理せよと要求する方が効果はあるだろう。

1月22日、銀行業界は、ダボス会議で地球温暖化問題を巡って白熱した議論が行われている現実を肌で感じつつある。写真は19日、スイスのラントクワルトで、ダボス会議に合わせて環境問題への取り組みを求め行進する環境活動家ら(2020年 ロイター/Arnd Wiegmann)

今年ダボスに集まった政財界の要人の主たる話題は、やはり環境への懸念だ。会議が始まる前の時点でさえ、WEFが世界のリーダーを対象に行った調査で、異常気象や生物多様性の喪失といった問題が、地球が直面する最大のリスクとして挙げられた。それに比べれば、感染症や中東における武力紛争といった、より目先の脅威も、リスクの度合いは小さいとみられている。

21日にはスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが、行動しない世界の指導者たちを厳しく非難。化石燃料の熱心な提唱者であるトランプ米大統領すら、1兆本の植樹活動を米国が支持すると表明した。

資産運用会社も取り組みを加速。ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は先週公表した企業首脳宛の年次書簡で、気候変動対策の進ちょくが不十分とみなした企業の取締役会の議決には反対票を投じるかもしれないと通知した。

<リスク測定に向けた動き>

そこで、より大きな疑問として、銀行は気候変動リスクを与信決定にどう織り込んでいるのかが浮上してくる。大半の大手企業は増資をほとんど必要としていない半面、依然として定期的な銀行からの借り入れには依存している。スタンダード・チャータード(STAN.L)など一部の銀行は既に、新たな石炭プロジェクト向け融資を打ち切ったものの、多くの銀行の経営陣はまだ、気候変動は自分たちが主体となって物事を変えていく問題ではないとの公式見解を打ち出している。シティグループ(C.N)のコルバットCEOは21日のBreakingviewsのインタビューで、行動を強制するために銀行業界が「鋭い槍の穂先」として使われるのはご免被ると言い切った。

だがそうした姿勢は、次第に正当化が難しくなってきた。規制当局は、気候変動によって生じた脅威を「大規模かつ定量化が困難な金融リスク」として扱うよう求める態度を強めている。イングランド銀行(英中央銀行、BOE)に至っては、銀行と保険会社に一連の地球温暖化シナリオで事業が受ける痛手を定量化させるストレステスト(健全性評価)を計画中だ。ある英大手ノンバンクの幹部はBreakingviewsに、同じような点検の仕組みを稼働させるつもりだと打ち明けた。

金融ポートフォリオに付随する気候変動のリスクを測定する上では、幾つかの課題が出てくる。まず金融機関は、現代世界がかつて経験したことがない破滅的シナリオを想定しなければならない。次に、温暖化が人々や企業に及ぼす物理的な影響はゆっくりと顕現化してくるとはいえ、金融市場は特に政府が突如政策を変更した場合、暴力的な形の軌道修正で応じてもおかしくない。

物言う株主でいわゆるESG分野の投資会社ジェネレーション・インベストメント・マネジメントを共同で立ち上げたジェフ・アッベン、デービッド・ブラッド両氏は、投資家が想定するよりもずっと早く、米国が炭素税を導入すると予想した。

<解決すべき課題>

もっとも個別の銀行や資産運用会社が問題含みの投資案件を敬遠できたとしても、炭素集約的な資産が消えてしまうわけではない。BOE幹部のサラ・ブリーデン氏は先週、「金融システムは実体経済の鏡であり、そのリスクを反映する」と語った。中央銀行には誰も保有したくない資産を買わなければならない羽目に陥るのではないかとの心配もある。これを国際決済銀行(BIS)は今週、「気候変動問題における最後の資金の出し手」と称した。

複数の銀行幹部は今週の顧客との話し合いで、気候変動リスクが新たに注目されるようになったことに関して幾つかの懸念を示した。1つ目は、石炭セクター向け与信エクスポージャーの指標があまりに大雑把過ぎて、企業による脱化石燃料対策の進展を正確に把握できていないということ。2つ目は、西側諸国でいくら銀行と資産運用会社が企業の気候変動対策の監視を強化しても、国際金融資本市場の範囲外にある大きな世界、とりわけ中国の企業の振る舞いには影響力が乏しいこと。最後は、エネルギーの再生可能性を実現する資金手当てを促進する必要について、金融界が強くストレスを感じていることだ。

過去のダボス会議で主要テーマとなった問題と同じく、気候変動を巡る不安も企業が行動を迫られる前に、最優先課題の地位を他のリスクに明け渡してしまう恐れもある。それでも大きな変化は、銀行と保険会社、資産運用会社が地球温暖化を管理すべき金融リスクとして取り扱う傾向が強まっているということだ。そうした流れは、恒久的なものだと今後証明される公算が大きい。

●背景となるニュース

*ダボス会議に先立つ調査によると、世界のリーダーが挙げたさまざまなリスクの中で最上位を占めたのが気候変動と環境破壊だった。

*世界経済フォーラム(WEF)は15日に年次リスク報告書を公表。今回初めてトップ5のリスクが全て環境問題となった。具体的には異常気象や生物多様性の喪失、原油流出や放射能汚染などだ。

*国際決済銀行(BIS)は20日発表した書籍で、中央銀行に世界を気候変動から救う役割を期待してはならないと警告した。

*この書籍のタイトルは「グリーンスワン」。予測不能なイベントを「ブラックスワン」と呼ぶのになぞらえ、気候変動が世界の金融システムに劇的な影響をもたらしかねないと警戒感を示した。

*主な著者の1人であるルイス・アワス・ペレイラ・ダシルバ氏は記者団に「われわれは、背後に次のシステミックな金融危機が控えているかもしれないような事態を、目にしようとしているのではないかと思う」と述べた。

*ただシティグループのコルバット最高経営責任者(CEO)はBreakingviewsのインタビューで気候変動問題について、当局が何かの行動を強制するために、同行や銀行業界が「鋭い槍の穂先」として使われるのは望ましくないと主張した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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