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コラム:討論会でのクリントン勝利は何を意味するか
2016年9月28日 / 07:31 / 1年後

コラム:討論会でのクリントン勝利は何を意味するか

[27日 ロイター] - 26日に行われた米大統領選の第1回テレビ討論会では、民主党候補のヒラリー・クリントン氏が完璧な仕事ぶりを見せたと多くの政治アナリストやコメンテーターが称賛している。

 9月27日、米大統領選の第1回テレビ討論会では、民主党候補のヒラリー・クリントン氏が完璧な仕事ぶりを見せたと多くの政治アナリストやコメンテーターが称賛している。写真はテレビ討論会後、支持者と会うクリントン氏。ニューヨーク州ウエストベリーで26日撮影(2016年 ロイター/Carlos Barria)

大多数の視聴者もその見方に賛同している。討論会後に集計されたCNNの世論調査によると、62%の視聴者がクリントン氏が勝利したと回答。共和党のドナルド・トランプ候補が勝ったとの回答は27%にとどまった。

そこには35ポイントの開きがある。米統計学者ネイト・シルバー氏が運営するニュースサイト「538」のデータによれば、これは、ミット・ロムニー候補とバラク・オバマ候補による第1回討論会、1992年のビル・クリントン候補とジョージ・H・W・ブッシュ候補の討論会に続く、過去3番目に大きな開きだという。

それでも、トランプ氏は選挙戦を通じて常識を覆してきた。ほとんどの候補者を沈めかねない発言や提案を行うなか、支持基盤に支えられている。

それは当初から明白だった。トランプ氏は少数派や女性、復員軍人を糾弾してきた。金星章を受けた兵士の両親さえもだ。「5番街の真ん中に立ち、誰かを撃ったとしても、有権者を失わないだろう」と同氏は明言している。

共和党の指導者層は、目まいを感じたかもしれないが、同氏への支持は強固だった。

トランプ支持を揺るがすものは何もない。米国の職場で女性や少数派が、白人男性に十分太刀打ちできなかった時代について、同氏が語るときの自信たっぷりの態度は共感を呼んでいる。彼らの力の喪失や沸き上がる怒りについて、国家は忘れたように見えても、トランプ氏は認識している。

ただ、この時点の選挙戦においては、候補者は、依然態度を決めかねている有権者に対して話しかけている。支持層に対してではない。視聴者の一部は、トランプ氏が大統領としてふさわしいかを確認しようと討論会を観ていた。また、クリントン氏がようやく自分たちとつながりを持てるようになったかを確かめていた視聴者もいた。

そのため、今回の討論会は、他の多くと異なり、重要だったかもしれない。

コラムニストのビル・シュナイダー氏が27日、ロイターに執筆しているように、トランプ氏の言動は多くの女性に、彼女らの「怒れる夫」を連想させたようだ。

トランプ氏は討論中、55回もクリントン氏の話に割って入った、とニュースサイトのVoxが解説する。これは、既婚、あるいは離婚を経験した女性有権者にとって身近に感じられることだろう。クリントン氏が見せた毅然たる冷静さにも親しみを覚えたかもしれない。

トランプ氏が呆れ顔で目をむいても、クリントン氏をひるませることができなかっとFOXニュースのエミリー・ジェーン氏は米ヴァニティ・フェア誌で指摘している。

エミリー・クロケット氏とサラ・フロステンソン氏がVoxで解説するように、割り込みの一部は「短気な脱線」だった。しかし、多くは、トランプ氏が「気候変動が中国の陰謀だったと言ったことは決してない」と断言するなど、「明白な嘘」だった。ほぼ半分の割り込みが、最初の30分に行われたと両氏は指摘している。

最初の30分が大変重要なのは、政治討論における自明の理だ。多くの視聴者が、その後チャンネルを変えるからだ。トランプ氏は、最初の30分間をもっとも効果的に使ったとアナリストは言う。クリントン氏に対し、その時間帯に彼の最高の攻撃を繰り出している。特に彼女が支持する貿易協定について、トランプ氏は中産階級を搾取する原因になっていると指摘した。

しかしそれは、トランプ氏が約25回もクリントン氏を妨害した時間帯でもある。

トランプ氏はその後、クリントン氏には大統領になるだけのスタミナがないと指摘した。しかし、クリントン氏が最後の1時間、強烈な攻撃に回る一方で、トランプ氏はやや、じたばたしているようにみえた。

クリントン氏は事実上、トランプ氏が国への所得税を払っていないことを認めさせた。また、自ら雇った契約業者を大事にしていないことも認めさせた。トランプ氏の政治集会では、こうした点は支持者から喝采を受けている。

しかし、クリントン氏は、厳しいビジネス環境に押しつぶされている多くの小規模事業主や労働者の苦境を強調した。

「トランプ氏は自らに与えている害について、気付いていないようだ」とジョン・キャシディ氏はニューヨーカー誌で指摘する。「その代わりに、同氏はほとんど大いに楽しんでいるように見える」

クリントン氏は明らかによく準備し、それが奏功した。「ヒラリー・クリントン氏は米国人に対し、彼らが嫌悪感を抱くことに慣れてしまったトランプ氏について改めて思い出させようとした」と、E・J・ディオンヌ氏はワシントンポスト紙のコラム欄で述べた。「女性や少数派、移民を傷付ける男。トランプ氏はクリントン氏を助けた」

クリントン氏に対するハードルは高く設定されていた。しかし、同氏は十分な調査と準備をすることで知られている。

「ドナルドは単に、私がこの討論会に向けて準備してきたことを批判している」。クリントン氏は、効果的なやり取りのなかで、そう語った。「その通り、私は準備してきた。私は他に何を準備してきただろうか。大統領になるための準備だ。それは良いことだと思う」

クリントン氏は恐らく、あくまで恐らく、多くの有権者がそれに賛同するだろうということに賭けている。

*筆者はロイター・オピニオンのエグゼクティブ・エディタ―。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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