[北京 9日 ロイター] - 中国税関総署が9日に公表した5月の貿易統計によると、ドル建て輸出は前年比16.9%増加し、伸び率はアナリスト予想を上回った。輸入も4.1%増加し、3カ月ぶりに拡大した。上海市の新型コロナウイルス規制の一部緩和に伴い生産活動が再開し、物流の停滞が解消されたことが背景にある。
ただ、原材料価格の高騰やウクライナ戦争を巡る不確実性などで先行きは見通せない。他国の景気回復も中国製品への需要を左右する。
5月の輸出の増加率は今年1月以来の高水準。予想は8.0%増、4月は3.9%増だった。
輸入は2.0%増の予想だった。前月は横ばいだった。
貿易黒字は787億6000万ドル。予想の580億ドルや4月の511億2000万ドルを上回った。
INGの大中華圏担当チーフエコノミスト、アイリス・パン氏は「これ以上のロックダウン(都市封鎖)がなければ、この回復は続くだろう」と指摘。5月最終週に上海の港が回復したことが主因だとした。
また、「世界の需要が2021年以降と同様に堅調に推移すれば、中国の輸出は少なくとも第3・四半期までは年平均15%の伸びを維持するはずだ」と述べた。
英大証券研究所の鄭後成所長は「5月は物流とサプライチェーンが修復された。供給の観点から見ると、4月の輸出の伸びを押し下げた好ましくない要因が大幅に後退し、5月の前年同月比での伸び加速につながった」と述べた。
一方、輸入については予想こそ上回ったものの、依然として脆弱な内需を反映していると指摘した。
中国の経済活動はコロナ規制の影響で4月に急激に冷え込んだ。厳格なロックダウンにより物流が停滞し、工場の稼働は停止した。
国務院は地方当局に対しサプライチェーン(供給網)の改善や景気支援、失業対策を要請。大手自動車メーカー各社は5月に生産を再開し、港湾や空港の貨物処理能力もロックダウン前の水準に戻りつつある。
植信投資研究院のシニアアナリスト、常冉氏は、最近の人民元安も輸出を後押しし、企業収益改善に寄与すると指摘。「しかし、5月と6月に回復した後はベース効果、世界的なインフレ高止まり、主要国の政策引き締めにより、輸出が直面する圧力は今年後半に強まるだろう」と述べた。
対ロシアでは、1─5月の輸出が前年同期比7.2%増。1─4月は同11.3%増だった。
1─5月の輸入は前年同期比46.5%増。1─4月は同37.8%増だった。
対米国の5月の貿易黒字は361億ドル、前月の322億ドルから増加した。1─5月の貿易黒字は1601億ドルだった。
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