April 29, 2018 / 11:26 PM / 3 months ago

焦点:チョコ原料の甘くない現実、認証制度はカカオ農家救うか

Ana Ionova

4月19日、世界のチョコレート会社は、貧困撲滅に向けて導入された認証制度を通じたカカオ豆の調達を増やしており、2020年までにより倫理的なサプライチェーンを構築するという自ら掲げた目標の達成を急いでいる。写真は2月コートジボワールのドゥエクエで、カカオ豆を袋に詰める男性(2018年 ロイター/Luc Gnago)

[ロンドン 19日 ロイター] - 世界のチョコレート会社は、貧困撲滅に向けて導入された認証制度を通じたカカオ豆の調達を増やしており、2020年までにより倫理的なサプライチェーンを構築するという自ら掲げた目標の達成を急いでいる。

しかし、カカオ農家を悩ませているのは、こうした倫理的で持続可能な生産支援制度下で支払われるプレミアムが低下していることだ。

森林破壊や児童労働、低賃金に対する業界の取り組みが不十分だとの強い批判を受け、米マースからハーシー(HSY.N)、伊フェレロに至る大手チョコレート会社は、2020年までに倫理的かつ持続可能な原料調達へ完全に切り替えると表明している。

こうした企業による買い付け増加で、フェアトレードやレインフォレスト・アライアンス、UTZ認証などの団体から持続可能との認証を受けた農家によるカカオ豆供給は、ここ数年で急増している。

これら主要3認証を通じたカカオ豆の売上げは、2013年の56万4769トンから、2016年は95万3458トンに増えた。これは、世界全体のカカオ供給の20%を占める。

だが、業界最大の認証スキームで、世界の独立系認証カカオ豆の半分以上を取り扱っているUTZ認証のデータによると、農家がこうした認証を得たカカオ豆から受け取るプレミアムは、この5年間で約3分の2に減少した。

「現在の状況は、バリューチェーンの長期的な持続可能性を損なうと考えている」。メーカー100社以上が加盟する世界カカオ基金(WCF)のティム・マッコイ氏はそう語る。

UTZ認証が今週公表したデータによると、同認証を得たカカオ豆の販売で農家が受け取るプレミアムは、2013年の1トン当たり122ユーロ(約1万5000円)から、昨年は83ユーロにまで減少している。

認証農家は、生産した全てのカカオ豆をUTZ認証制度を通じて販売するわけではない。その他のカカオ豆がプレミアム抜きの一般市場価格で販売されると想定したロイターの試算によれば、2017年の平均プレミアムは、1トン当たり67ユーロにとどまる。

「UTZは、取引者数が多いが、その影響力は低下している」と、カカオ農家の収入向上に取り組む団体、カカオ・フォア・チェンジの創設者フェルナンド・モラレスデラクルス氏は言う。

<貧困ライン>

プレミアム下落の一因は、カカオ豆の供給過剰によって国際価格が、過去9年で最低の水準に下落したことにある。それでも、こうした認証スキームは、農家の手取りを増やすことで、農家が貧困を脱し、ショックにも耐えられるようにすることを目的の1つとしている。

西アフリカの農家は、世界のカカオ豆の3分の2を生産しているが、そのほとんどが世界銀行が定める国際貧困ラインである1日2ドルを下回る水準で生活している。

UTZは、チョコレート会社が、カカオ豆生産者を搾取して貧困を強いていないことを消費者に示すために利用できる認証制度の1つに過ぎない。だがその人気はうなぎ上りで、同認証を受けたカカオ豆は、2013年の約69万トンから、2017年は145万トンへ急増した。

成功の背景には、UTZが農家に支払われる価格に基準を設定していないことがあると、関係者は指摘する。対照的に、フェアトレードは、最低価格と固定プレミアムを唯一設定している認証制度だ。

「買う側の立場からすれば、同じ豆に支払う価格が単純に安くすむということだ」と、民間団体バイオダイバーシティ・インターナショナルのバリューチェーン専門家、ディートマル・ストヤン氏は言う。「(企業の)コスト構成にとっては素晴らしいが、カカオ農家にはそうではない」

レインフォレスト・アライアンスのアレックス・モーガン氏は、プレミアム下落が、必ずしも農家の状況悪化を意味しないと語る。農家が、カカオ豆をより多く販売していたり、経営基盤を強化している可能性があるからだ。

ハーシーは、プレミアム下落についてはコメントしなかったが、生産農家に対し、生産性を向上する機材や技術の提供など、貧困からの脱出に向けた包括的な支援活動を行っているとロイターに回答した。

マースは、農家の低収入は問題であり、改善を促す方法を検討していると回答。戦略の一環として、より病気に強く、生産性が高いカカオ豆のゲノム解析に投資していると述べた。

「カカオ豆の健全性や生産性、品質向上に科学を役立てることが有益だと考えている」と、同社の広報担当者はメールで回答した。

伊フェレロは、農家の収入についての質問に返答しなかった。

<人気急落>

独立認証団体は、カカオ豆を公正な方法で生産している農家に対して認証を与えている。その豆を調達したチョコレート会社は、製品に認証マークをつけて、倫理的に生産された商品であることを消費者にアピールできる。

 フェアトレード認証マークが付けられたチョコレート。ロンドンで2017年4月撮影(2018年 ロイター/Neil Hall)

だが、生産者の生活賃金改善を認証モデルの中心に据えるフェアトレードは、利用企業の拡大に苦戦している。UTZの市場シェアが2013年の48%から2016年は60%に拡大したのに対し、フェアトレードは、シェア12%から15%への増加にとどまった。

「フェアトレードの基準は、価格急騰の際にはうまく機能する。だが、ビジネス合理性が低いと考える企業も多い」と、英シンクタンク、オーバーシーズ・デベロップメント研究所のアートリ・クリシャン氏は語る。

フェアトレードは、カカオ豆1トンあたり2000ドルの最低価格と、200ドルの固定プレミアムをそれぞれ義務付けている。

世界2大生産地のコートジボワールとガーナでも、最低価格が設定されているが、世界市場を考慮して毎年調整されている。昨年の価格崩壊を受け、コートジボワールは最低価格を3分の1以上引き下げ、1トン1290ドルとした。

フェアトレードは、最低価格と固定プレミアムの設定により、世界的な価格急落に対する極めて重要なセーフティネットを提供し、農場に長期投資を行うために必要な安定性を農家が確保できると胸を張る。

だがそのモデルは、2020年までに野心的な自己目標達成を目論むチョコレート会社にとって、魅力に欠けるようだと専門家は指摘する。

「(目標期限は)すぐそこに迫っている。チョコレート会社は、認証カカオの調達を大幅に増やさなくてはならない」と、前出のストヤン氏は言う。「だがフェアトレード認証を通じたカカオ豆の販売拡大は、難航している」

フェアトレード認証を受けた農家が生産したカカオ豆は、2016年は約30万トンと、世界生産の6%程度だった。だがフェアトレードのデータによると、同認証のラベルを付けて販売された量は、その半分でしかない。

余った認証カカオ豆は、より安い一般市場での売却を余儀なくされることが多い。このため、ロイターの試算では、フェアトレードの生産者が受け取る認証カカオ豆1トンあたりのプレミアムは、1トンあたり平均94ドルになる。

なかには、複数の認証を取得している生産者もあり、余剰分はUTZやレインフォレスト・アライアンスの認証分として販売することもある。

<市場戦略>

UTZ認証システムでは、プレミアムは上乗せされるが、その額はバイヤーが交渉可能だ。昨年UTZと合併したレインフォレスト・アライアンスは、正式なプレミアムの仕組みを持たないが、一般市場価格より高い代金が農家に支払われているという。

2016年には、UTZ認証を受けたカカオ豆120万トンのうち、54%が同認証豆として販売された。2017年には、この割合が80%に増加した。

フェアトレードの市場シェアは伸び悩んでいるが、これまで最低価格や固定プレミアムが減額されたことはなく、今年もそれを見直す計画はないという。フェアトレードは、これが生産者の生活を守り、持続可能なビジネスモデルを築くための鍵とみているためだ。

「価格低迷が、農家を苦しめている」と、フェアトレード・インターナショナルのジョン・ウォーカー氏は言う。「だが、それがなぜフェアトレードの価格設定を下げるべきだということになるのか、私には理解できない」

しかし、ライバルのUTZとレインフォレスト・アライアンスは、カカオ農家を貧困から脱出させるには、固定プレミアムなどによる人工的な保護戦略よりも、農作業の内容を改善し、農家がより多くのカカオ豆を生産できるような支援を行うべきだと主張している。

こうした姿勢は、生産者の収入向上を目指すチョコレート業界の方針とも一致する。前出のレインフォレスト・アライアンスのモーガン氏は。戦略の整合性が、企業がプレミアム低下よりも、市場価格ベースのスキームを支持する理由だと指摘する。

年間売上高が75億ドル超のハーシーは今月、西アフリカを重点に、農家の生産性や収入を向上し、児童労働や森林破壊を撲滅するため、2030年までに5億ドルを投入する計画を発表した。

ハーシーは、持続可能性に向けた自社の取り組みによって、すでに農業者の生産性が20%向上したと指摘。今後はスマートフォンを使って農作業のヒントなどをビデオやテキストで農家に送るなどの手段を通して、その取り組みを拡充する方針だと述べた。

「生活向上という同じ結果に導くために、さまざまなアプローチがある」と、ハーシーで調達を担当するスザンナ・チュー氏は話した。

スイスの食品大手ネスレは、100%の認証カカオ豆調達をコミットしていないが、生産性の高い種子を提供したり、農家への研修実施によって、カカオ豆生産体制の強化に努めていると述べる。

だが、多くの生産農家は、融資を得る手段もなく、新しい農業手法や研修の実施にも苦労していると、独シンクタンク、Sudwind研究所のFriedel Hutz-Adams氏は反論する。

仮に農家が生産量の増加に成功しても、それにより価格はさらに下落する可能性が高い。コートジボワールは、まさにこれを理由に、今季は収穫量の多いカカオ種子の流通をやめる方針だ。

「もしたくさんの農家が生産性を向上すれば、膨大な過剰生産を招き、市場が崩壊してしまう」と、Hutz-Adams氏は指摘した。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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