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アングル:コロンビア国境が麻薬「震源地」に、軍増派も制圧難航

[ノルテ・デ・サンタンデール(コロンビア) 16日 ロイター] - 銃を抱え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)防止のマスクを着用した迷彩服姿のコロンビア軍部隊が、息の詰まるような暑さの中、密生した植物の間をほふく前進で進んでいく。警戒すべき相手は、対ベネズエラ国境地帯を跳梁する多くの敵だ。

コロンビア北東部ノルテ・デ・サンタンデール県では、増加しつつある流血事態を食い止めるために総勢1万4千人の部隊が先月創設された。この地域は、コカイン生産の増大を背景に、衝突の新たな中心地となっている。写真は10月、ベネズエラとの国境にあるコロンビアのククタで撮影(2021年 ロイター/Luis Jaime Acosta)

この兵士たちは、コロンビア北東部ノルテ・デ・サンタンデール県で増加しつつある流血事態を食い止めるために先月創設された、総勢1万4千人の部隊の一部である。この地域は、コカイン生産の増大を背景に、衝突の新たな中心地となっている。

「麻薬密売に関与するこの地域には非合法の武装グループが複数ある。どこが我々を攻撃してくるか分からない」──コロンビアとベネズエラを隔てる河川に近い木陰で、軍歴20年の古参陸軍軍曹は語った。

ノルテ・デ・サンタンデール県では今年に入って約30回の攻撃が発生。地雷や狙撃、待ち伏せ攻撃により、すでに16人の兵士が命を落としている。

国防省の統計によれば、非合法武装グループ側でも19人が死亡したほか、数十人の兵士、反政府組織・犯罪組織メンバーが負傷している。

だが、部隊の増派と犠牲の増大は正しい方策ではないかもしれない。コカインの原料となるコカの葉を根絶しようとしても、実際には現地住民の抵抗に直面している。他に生計手段となる選択肢がほとんどない、というのが彼らの主張だ。

また、コロンビア軍の過去も手放しで誉められるものではない。半世紀以上にわたり反政府組織や麻薬密売業者、犯罪組織と対峙(たいじ)する一方で、時には人権侵害を行ってきた。

イバン・ドゥケ大統領率いるコロンビア政府の怒りの矛先は隣国ベネズエラに向かっており、ニコラス・マドゥロ大統領が自国側に犯罪組織にとって安全な避難場所を提供し、利益の一部を上納させるのと引き換えに、欧米への麻薬密輸するのを黙認している、と非難している。

コロンビア当局者によれば、ベネズエラの経済崩壊と同国内での犯罪のまん延も国境周辺での暴力事態をあおっているという。ロイターによる最近の調査では、ベネズエラの複数の町において、コロンビアの反政府勢力である民族解放軍(ELN)が事実上の行政主体として、また主要な雇用主としての役割を果たしていることが明らかになっている。

ベネズエラ政府は責任の所在を強く否定している。コロンビアの右派「寡頭政権」が、左派政権を擁するベネズエラを不安定化させる戦略として武装グループの解体を怠っている、というのがベネズエラ側の主張だ。

<「不安定要因の合流」>

コロンビア政府が期待するのは、ノルテ・デ・サンタンデール県への部隊増強が国内他地域での和平への道筋を描くことだ。コロンビアで長年続いた内戦は、現在では国境をまたいだ反政府勢力や犯罪組織との地域的な戦闘へと分散化している。

コロンビア軍トップのルイス・フェルナンド・ナバロ将軍は、首都ボゴタの執務室でロイターの取材に応じ、「ノルテ・デ・サンタンデール県では、さまざまな不安定要因が合流している」と語った。

国境管理が甘く、ベネズエラの法執行当局が脆弱(ぜいじゃく)なせいもあって、ELNや、2016年の和平合意を破棄したコロンビア革命軍(FARC)反主流派のゲリラは、攻撃の後でベネズエラ側に逃げ込むことが可能になっている、とナバロ将軍は説明した。ELNの戦闘員の約半数とFARC反主流派の30%が、コロンビア軍による空爆を受ける心配のないベネズエラ領内を作戦拠点にしている、と付け加えた。

コロンビア領内では、増大するコカ生産を手中に収めようとする組織同士の戦闘が発生している。そうした地域の1つであるカタトゥンボではコカインの生産能力は年間312トンに上り、国連のデータによれば、これはコロンビア国内のコカイン生産量の4分の1に相当する。

ノルテ・デ・サンタンデール県における殺人事件は、2019年の539件から、昨年は576件に増加した。国防省によれば、2021年は9月末までで436人が殺害された。

活動家団体は、2020年の年初以来、暗殺された人権活動家は22人に上り、戦闘のために強制退去させられた人は約6500人だと明らかにした。

人権擁護団体フンダシオン・プログレサルのウィルフレド・カニサレス代表は、「これほど暴力が横行する背後には、犯罪を生み出す力関係がある」と語る。

6月に発生した2件の大胆な攻撃では、元FARCの容疑者が県の中心地であるククタの軍兵舎を自動車爆弾で攻撃し、狙撃手がドゥケ大統領をはじめとする政府関係者が乗ったヘリコプターの撃墜を試みた。

FARC反主流派の司令官は犯行声明を出し、米国の軍事顧問を標的とした攻撃だと述べた。

<軍事力頼みは「悪手」>

主要犯罪組織「クラン・デル・ゴルフォ」のリーダーである「オトニエル」は先日逮捕されたが、それでも同組織による暴力は根絶されない可能性がある。警察によると、同組織は20数カ国の犯罪組織と連携している。またリーダーの逮捕は、治安部隊の報復や組織内部の主導権争いにより、むしろ抗争の激化につながるかもしれない、とアナリストらは指摘する。

コロンビア軍の退役大佐で現在は治安コンサルタントのジョン・マルランダ氏は、犯罪組織は要人を攻撃対象とすることで、麻薬生産地帯とベネズエラ国内の秘密飛行場へのルートに当局の手が回らないようにしているとの見方を示した。

コロンビア軍で新たに編成されたノルテ・デ・サンタンデール特別部隊(CENOR)は、これまで別組織だった4つの部隊を統合するもので、軍は兵站・情報収集の調整が改善・迅速化し、偵察・攻撃作戦・航空支援も増強されるとしている。

軍によれば、米国からの複数の軍事顧問も現地で関与する部隊増強と並行して、道路、学校、その他の計画への投資が進められるという。

だが、批判の声もある。

活動家らは、貧困対策やコカから代替作物への自発的な転換に対する支援強化がなければ、現地への部隊派遣はほとんど意味がないと指摘する。「この地域での軍事作戦にこだわるのが誤りであるのは分かりきっている」とフンダシオン・プログレサルのカニサレス氏は語る。

県内で長期にわたり大規模な軍部隊が駐留しているにもかかわらず、殺人事件や大量殺害、強制退去、麻薬密売が続くのでは正当化の余地がない、と同氏は付け加えた。

先日、コロンビア最大のコカ栽培農園が存在するティブ郊外の農民が、コカ根絶の任務に就いていた兵士180人を数時間にわたって拘束した。数少ない生計維持の手段の1つであるコカが取り除かれてしまったことへの抗議である。

ノルテ・デ・サンタンデール県全体では、コカ根絶の取り組みは難航している。作付面積の削減は、2020年には95平方キロメートルだったが、今年はこれまでで約30平方キロしか進んでいない。主な理由は地元住民の抵抗だ。

軍及び国防省のデータでは、2021年1─9月に破壊された秘密のコカイン精製施設──多くは密林の奥に設けられている──は、2020年同時期の694カ所に対し、458カ所にとどまっている。

ノルテ・デ・サンタンデール県における2021年のコカイン押収量は24.8トンで、2020年の16.6トン、2019年の22.4トンをすでに上回っている。しかし当局者によれば、押収量が増加したのは、米国が提供する衛星データが改善されたこともあるが、そもそも生産量が増加しているという要因もあるという。

現地住民が土地の所有権、作物転換のための融資、公共事業の拡大を要求する中で、当局は、今後は治安戦略を支える社会的投資が行われると主張している。

(Luis Jaime Acosta記者)

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