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コラム

コラム:米銃撃事件が迫る上院「フィリバスター」改革

[ニューヨーク 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国人にとって銃を買うのはあまりにたやすく、法律を通すのはあまりに難しい。米国では最近、わずか1週間のうちにジョージア州アトランタとコロラド州ボールダーで銃乱射事件が起きて、少なくとも18人の命が奪われた。だが、連邦議会は大半の市民が支持する銃規制強化法を可決できていない。

 3月23日、米国では最近、わずか1週間のうちにジョージア州アトランタとコロラド州ボールダーで銃乱射事件が起きて、少なくとも18人の命が奪われた。だが、連邦議会は大半の市民が支持する銃規制強化法を可決できておらず、この問題の中心にあるのが、議事妨害(フィリバスター)ができる制度だ。ボールダーの事件現場近くで22日撮影(2021年 ロイター/Alyson McClaran)

問題の中心にあるのが、議事妨害(フィリバスター)ができる制度だ。この民主主義の欠陥は銃規制のみならず、インフラ整備など喫緊の財政出動法案にも影響を及ぼす。制度を修復することも可能なはずだが、そうすると米国の分断が一段と深まりかねない。

銃規制問題は、米民主主義が抱えるジレンマの縮図だ。現行の連邦法では銃購入者の身元調査が義務付けられているが、これには誰にも分かる抜け穴がある。この抜け穴をふさげば、銃撃による米国での死者数は年間4万人前後減る可能性がある。

ギャロップの調査によると、大半の市民は身元調査の厳格化を一貫して支持している。しかし、上院はコネティカット州のサンディフック小学校での銃乱射事件を受けて、翌年2013年にこの問題を取り上げたきり、棚上げしている。当時の審議では、フィリバスターを無効にするのに必要な60%の賛成票が得られなかった。フィリバスターは上院の慣習であり、法律ではない。

議会少数派を助けるこの議事進行ルールは、銃規制以外の法律の可決も阻む。仮にバイデン大統領が掲げる3兆ドルのインフラ投資計画を通すのに上院で賛成60票を必要とする通常審議の方法を取れば、票を確保する過程で法案は、ほぼ確実に骨抜きにされるだろう。

このほか、上院で審議が中断している民主党支持の政策には、反差別法の対象にLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の人々を加える法案や、投票抑圧および、自党に有利になるような選挙区の区割り「ゲリマンダー」を阻止する法案がある。

この障害を解消する手だてはある。上院がフィリバスターを廃止すればよい。廃止決定は単純過半数が賛成するだけで可能だ。もっとも過半数に達するには、廃止反対派の民主党中道派のジョー・マンチン議員、カーステン・シネマ議員などの翻意が必要になるだろう。

もっと過激でない方法もある。理論上は上院の過半数の賛成があれば、銃規制など特定の施策だけを分離することが可能だ。この手続きは「リフォーム・バイ・ルーリング」と呼ばれ、共和党が既に最高裁判事指名承認で実行した。この方法ならパット・トゥーミー議員など共和党議員1、2人も賛成に回るかもしれない。

銃による暴力を減らしたり、今より多様な人々を包括したり、インフラを強化したりすれば、米国は良くなるはずだ。しかし、一方でフィリバスターの撤廃や全面回避が、民主主義のドミノ倒しを引き起こすリスクもあるのだ。マコネル共和党上院院内総務は、フィリバスター改革が実行されれば「核の冬」が訪れると警告した。

つまり、報復合戦がエスカレートする事態が起き得る。民主党側は首都ワシントンと自治領プエルトリコを州に転換することで、左派寄りの上院議員を増やそうとする。すると共和党寄りのテキサス州は自ら分解して複数州となり、自党議員を増やすという巻き返しに出る。報復の応酬が起きる。とはいえ、今行動を起こさなければ、「犠牲」も増えるばかりだ。

●背景となるニュース

*米西部コロラド州ボールダーのスーパーマーケットで22日、銃撃があり、警官1人を含む10人が死亡した。その6日前には、ジョージア州アトランタ周辺で男がマッサージ3店を銃撃し8人が死亡した。

*連邦下院は11日、銃購入者の身元調査の対象を広げ、あらゆる種類の購入の前に調査を終えることを義務付ける2つの法案を可決した。

*現行法では、身元調査が3日以内に完了しなければ、そのまま購入を進めることが可能。また、オンラインや展示会での購入を通じるなど、無認可の売り手から購入する場合は身元調査の義務づけをすり抜けられる。

*連邦法案の成立には上院を通過する必要があるが、大半の法案は議員定数100人のうち60人が、採決に進むことに同意しなければならない実態がある。実質51議席を握る民主党は、「フィリバスター」と呼ばれるこの手続きの改革もしくは廃止を公言している。

*マコネル共和党上院院内総務は23日、フィリバスターを改革することは上院を「核の冬のような状態」に陥れる恐れがあると述べた。同改革自体は51議員の賛成だけで可能。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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