November 14, 2014 / 4:48 AM / 6 years ago

コラム:世界を悩ますドル高、流動性低下が中国直撃も

[13日 ロイター] - 今回の米ドル高は、米国と世界各国の双方に問題をもたらす可能性がある。ドル高は世界の流動性を低下させ、資金調達を困難にして調達コストを引き上げ、市場の不安定性、とりわけ新興国市場のリスクを高めるからだ。

 11月13日、今回の米ドル高は、米国と世界各国の双方に問題をもたらす可能性がある。ソウルで2011年9月撮影(2014年 ロイター/Lee Jae-Won)

1971年、ドル安に不満を唱える欧州勢に対してコナリー元米財務長官が「ドルはわが国の通貨かもしれないが、問題はあなた方のものだ」と言い放ったのは有名だ。

ドルをめぐる当時の問題は、金本位制から変動相場制への移行に伴ってドルがあふれ、相場が急落したというものだった。それに対して今日の問題は、少なくともグローバルな見地では、ドル相場が急上昇するとドルの入手が困難になるかもしれない、という点にある。

コンサルタント会社クロスボーダー・キャピタル(ロンドン)のマイケル・ハウエル氏は、米国経済の重要性が低下した中で、ドル高が進むことが問題だと論じる。米国の経済規模は世界全体の約20%に低下した一方で、ドルは国境を超えた取引の75%程度に利用されいる。

ハウエル氏は顧客向けノートで「米ドルの上昇が進むほど、米国以外の国々が借金によるファイナンスを維持するのに必要な資金は入手困難になる」と指摘。「このことは翻って、米ドルが自律的にオーバーシュートし、世界の流動性がスパイラル的に低下するリスクをもたらす。資金調達の道が閉ざされ、キャリートレードが解消を余儀なくされるからだ」と続けた。

真っ先に影響を受けるのは新興国市場とアジアかもしれない。しかし、縮小した米国経済という土台の上で危うい均衡を保つシステムは、どこでも誰にでも問題を引き起こしかねない。

クロスボーダー社によると、世界の流動性、つまり投資と支出に回せる資金は、ドル高を原因として今後1年間に約10兆ドル、10%縮小する見通しだ。この流動性見通しは半年から1年後の経済活動を占う先行指標として有効であり、市場活動の先行指標としてはもっとタイムラグが短いという。

流動性が既に縮小の領域に入っており、今後さらに減少するとの見通しを踏まえれば、向こう1年間で市場のボラティリティは一段と高まると見た方がよさそうだ。

<中国が鍵>

2011年にはドルの実効レート.DXYが数十年ぶりの安値を付けた。その水準からドルは15%程度上昇したが、まだ上昇の余地はある。

しかも世界の流動性に対する米国の寄与は、主に金融政策によって決まるわけではない。つまり米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切れないとしても、世界の流動性は自ずと縮小する可能性がある。米国は多額の経常収支赤字を出すことによって世界にドルを供給することが容易になり、そのドルがリサイクルされている。しかし米国産シェールオイルの生産拡大が経常赤字に歯止めをかける可能性があるとともに、米国の個人と企業も債務積み増しを控えるかもしれない。

もう1つの問題は中国だ。中国は世界の流動性に貢献すると同時にその消費国であり、ボラティリティを高めるような政治問題を提供する国でもある。データによると、最近は中国本土と香港から多額の資金が流出している。人民元が米ドルに追随して上昇するなら、折しも景気減速という厄介な時期にある中国において、流動性が急減する恐れがある。

その場合には中国からさらに多額の資金流出が起こり、銀行借り入れやシャドーバンキングの形で借金に大きく依存する中国経済への悪影響に拍車がかかりかねない。要するに悪循環だ。

そうなれば中国はドルに対して人民元CNY=を切り下げる誘惑に駆られ、その度合いいかんによっては果てしない問題と衝突の繰り返しを引き起こしそうだ。そうした事態は世界中にデフレ的影響を及ぼし、日銀と欧州中央銀行(ECB)の仕事をずっと難しくするだけでなく、多くの金融市場を混乱に陥れるだろう。

中国を通貨切り下げへと向かわせるそうした状況が表れた場合、他の新興国市場に及ぶ影響を想像してみてほしい。

過去のドル高局面が長期にわたり、同時にオーバーシュートしやすかったことも肝に銘じるべきだ。ドルの上昇はまだ終わっておらず、それが流動性に及ぼす影響は低く見積もられ過ぎているかもしれない。

「1987年と2008年の金融危機は先進国市場が舞台で、94年と97年の危機は新興市場を襲ったが、共通しているのは、米ドルの国内および国際的役割の間に横たわる緊張に根差していることだ」とハウエル氏は論じる。

ドルが国際的な決済通貨として支配的地位を維持する限り、ドルは「みんなの問題」でもあり続けるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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