September 13, 2019 / 10:24 PM / 3 months ago

コラム:欧州各国で極右が躍進、1930年代の教訓は生きているか

[ロンドン 10日 ロイター] - 第2次世界大戦の勃発からちょうど80年を迎えた先週、ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」がザクセン州の議会選で、若い有権者の支持を得て躍進した。

9月10日、第2次世界大戦の勃発からちょうど80年を迎えた先週、ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」がザクセン州の議会選で、若い有権者の支持を得て躍進した。写真は切り裂かれたAfDの選挙標識。ザクセン州で2日撮影(2019年 ロイター/Wolfgang Rattay)

AfDは同じ日に行われたブランデンブルク州の議会選でも強さを見せ、現代の欧州で極右勢力がいかに劇的に復活しているかを浮き彫りにした。

彼らは経済的な不満を移民流入への不安にすり替え、ハイテクやソーシャルメディア、国際的なつながり、そして政治の現状に対するいら立ちを勢力拡大のための武器にしている。

極右勢力は、目標達成のために必ずしも完全な形で政権を握らなくてもよい。それはイタリアで「同盟」を率いるマッテオ・サルビーニ氏が連立政権の内相になり、難民救助船の寄港を拒否したことなどで証明された。

もっともイタリアのケースは、極右側の直面する課題も示している。連立政権を崩壊させたサルビーニ氏は、次期首相になるとの見方が優勢だったが、結局より穏健な各政党からつまはじきにされてしまった。

とはいえ、今と同じように「断層」や「変化」「偏執症」といった言葉で象徴される1930年代から得られた教訓は、依然としてその価値を失っていない。アドルフ・ヒトラーのナチスは選挙で全体の3分の1の票しか獲得しなかったが、ドイツ憲法に定められた比例配分議席を土台に完全な権力を手にするには十分だった。

<若者を狙え>

オーストリアでは、極右「自由党」が5月、党首にロシア絡みの汚職疑惑が浮上して連立政権からの離脱を余儀なくされた。それでも、9月29日に投開票される総選挙で健闘が見込まれている。

同様にフランスの極右政党「国民連合」(国民戦線から改名)も底力を感じさせる。2017年の大統領選では党首のマリーヌ・ルペン氏がエマニュエル・マクロン氏に敗北したものの、今年5月の欧州議会選では23歳のジョルダン・バルデラ氏を比例名簿第1位に置く作戦で、見事勝利を飾った。ルペン氏にも、22年の次期大統領選に出馬して当選するチャンスは残されている。

ロンドンのシンクタンク、インスティテュート・フォー・ストラテジック・ダイアログで極右を専門に研究するジュリア・エブナー氏は「重要なのは国民連合が政治の主流勢力になろうとしている点だ。彼らは長期戦を戦っていて、次の世代に照準を合わせている」と指摘した。

20代後半の若者を前面に押し立てて選挙に臨む戦略は、スペインやデンマークなど他の欧州諸国の極右政党にも共通している。彼らの考えでは、特に若い白人男性有権者の取り込みが党勢拡大への道だからだ。ベルギーの「フラームス・ベランフ」は26歳のドリス・ファンランゲンホーベ氏を党の顔にしたことで、5月の地方選と国政選挙、欧州議会選挙で過去最高の成績を挙げた。

もちろんこうしたやり方にも限界はある。若い男性の間でさえ、極右の得票率はなかなか3分の1を大きく超えられない。主張が過激化するほど、穏健な支持者が離れていく可能性も出てくる。AfDにしても、経済的に疎外されてきた面が強いドイツ東部では勢力が伸びても、より豊かな西部では支持が弱まっているもようだ。とりわけ女性有権者は極右に対して懐疑的で、女性をどう取り込むかを巡って極右勢力の間でも議論が起きている。

<洗練化>

ファンランゲンホーベ氏やバルデラ氏などの登場は、欧州大陸全体に広がり洗練されつつある運動の一部と言える。ソーシャルメディアや街頭デモ、集会、政権獲得への断固たる決意をつなぎ合わせたものだ。

極右がしばしば、ナショナリスト的な政策を打ち出していることを踏まえれば、こうした国境を超えた協調が進んでいるというのは皮肉な状況だろう。

多くの極右支持者は、米国の白人至上主義のグループやロシアのプーチン大統領に鼓舞されている。プーチン氏は、冷酷非情で男性的、かつ人権や政治的な公正さなどにわずらわされず、一国の指導者のあるべき姿だと極右の間でみなされている。西側の極右勢力は、ロシアの仕業とみられるハッキングや偽アカウントを通じた政治工作などの恩恵も享受しており、プーチン氏としては西側諸国がより分断化され、極右に支配されるのが望ましいと考えていることをうかがわせる。

極右勢力が発するメッセージは非常に幅広い。中には極右との関係をはっきりさせない内容もある。ただイスラム原理主義との対決や女性の権利保護の訴え掛けの背後には、大量の移民と多文化を容認するリベラリズムこそが欧州を破壊しており、それを止められるのは極右だけだ、という主張が存在することに留意しなければならない。

またハンガリーやポーランドの極右政権は、こうした勢力が権力を持ったらどうなるのかを如実に物語っている。メディアの統制が強まり、移民や外国人だけでなく、性的少数者(LGBT)など他のマイノリティーへの反感があおられるのだ。極右支持者の間では、さらに過激な措置を望むのが多数意見で、単に新着の移民を本国に送還するだけでなく、何世代も前に外国からやってきて欧州で生活している家族までも送り返せ、といった議論がネット上で交わされている。

こうした主張は、欧州政治で常態化するどころか、何年もしくは何十年にもわたるテーマとして定着しかねない状況になりつつある。極めて恐ろしい未来図だが、1939年の教訓を実際に体験した人々が少なくなった今になってそれが現実のものとなる可能性が出てきたのは、決して偶然ではないだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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