September 20, 2018 / 10:55 AM / 3 months ago

コラム:安倍政権と物価2%、社会変化への「おびえ」が高い壁に

[東京 20日 ロイター] - 安倍晋三首相が20日、自民党総裁選に勝利して、歴代1位の長期政権が視野に入った。その一方、アベノミクスの果実として約束してきた物価2%は達成できないままだ。その大きな要因は、社会に内在する変化に対する「おびえ」ではないか。

 9月20日、歴代1位の長期政権が視野に入った一方で、アベノミクスの果実として約束してきた物価2%は達成できないままだ。その大きな要因は、社会に内在する変化に対する「おびえ」ではないか。都内で7月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

特に賃上げを渋る経営者が、経済拡大の起爆剤を不発のままとし、デフレと決別する力を弱めていると考える。

<多くの経済データ塗り替えた安倍政権、クリアできない物価目標>

2021年9月まで安倍氏が首相を務めれば、日露戦争を勝利に導いた同じ長州出身の桂太郎元首相の在任期間を2019年11月に突破。歴代最長記録を更新する。

経済面では、株価を押し上げ、過去最高益の企業が相次ぎ、失業率や有効求人倍率などの労働関連データも軒並み大幅に改善している。

ただ、クリアできない指標もある。過去5年間のアベノミクスの1丁目1番地と位置づけた金融政策において、政府・日銀がともに目指すとしてきた物価2%の達成だ。

日銀の黒田東彦総裁は19日の会見で、物価上昇が当初の想定よりも下ぶれてきた要因として、複数の現象を挙げた。1つは原油価格が大幅に下がり、物価自体を押し下げ、それが期待インフレ率を抑制した点。

また、長く続いたデフレ的環境の中で、企業経営者や個人がデフレ的なマインドに慣れ親しんでしまったことにも触れた。

最近では、主婦や高齢者などの労働参加が予想よりも多く、労働力が相応に確保されていることや、企業の省力化投資が活発化し、労働生産性が上がり、賃金上昇の圧力が想定よりも弱くなったことなども挙げた。

さらに企業と労組との間で、雇用の安定に重きを置く慣行が根強く、企業収益の増加テンポに比べ、地銀の上昇が鈍いことにも言及した。

ただ、原油価格下落の影響は、米国や欧州にも及んでおり、日本だけが特筆して大きく影響を受けたわけではない。

にもかかわらず、米国が利上げ局面に移行し、欧州では資産買入が年内で終了するのに、日本は物価上昇率の鈍さを背景に、緩和の長期化に備え、副作用をより小さくする政策調整を開始した。

米欧に比べ、物価上昇の基調が弱いことは明らかだ。この差は、どこに起因しているのか──。

<大幅賃上げ後の変化恐れる経営者>

黒田総裁は婉曲に触れたが、私はもっと「過激」に表現したい。それは、経営者の「消極性」ないし「変化への恐れ」の強さではないかと考える。

世界的な経済の好環境や円高圧力が顕在化しない市場環境の下で、過去最高益を稼ぎ出しているにもかかわらず、企業経営者は大幅な賃上げを渋った。

その結果、今年の春闘が終わっても、消費者心理が企業収益並みに拡大方向にシフトすることはなく、個人消費は落ち込まないまでも小幅な動きに終始している。

もし、政府が要望している3%の賃上げを大企業ベースに限定しても、実行していれば、消費を起点に久しぶりに日本経済の大きな歯車が回りだした可能性がある。

企業経営者の心理を類推してみると、海外経済の減速リスクや円高、新たに目立ち出した貿易戦争の影響など、いつ顕在化するかもしれない懸念材料を考えると「大幅な賃上げは無理」ということになるのだろう。

しかし、この心理は言い換えれば、海外経済の好調さや円安がなくなれば、自分の企業は持ちこたえることが難しく、実は自社の本当の実力は「下駄を脱ぐと大したことがない」と自覚していることと同じではないか。

<思い切った人的投資、生き残りに不可欠>

一方で高い給与を提示しないと、これからの設備投資競争の中で欠かせないIT知識を豊富に備えた理系人材を確保できないと言う現実も、目の前に広がり出した。その意味で一律の賃上げシステムを主体にした現在の「春闘」方式自体も、時代の波にさらされている。

人材と設備への投資を不連続と思えるほど、思い切って実行していく経営者に率いられた企業が、この先の市場で高い評価を受けることになるだろう。

こうした変化を促すような政策を政府は、積極的に打っていくべきではないか。変化を恐れずにリスクを取っていく企業の背中を後押しする政策メニューを並べて欲しい。

マインドの変化を端緒として、低い賃金上昇率と低い物価上昇率のリンクが外れたとき、安倍首相が目指してきたデフレ脱却と経済成長が実現する道筋が見えてくる。

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