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コラム

コラム:荒れる市場、逆境に立つアベノミクス

[香港 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 荒れる市場が、アベノミクスに最も厳しいストレステストを仕掛けている。安倍晋三首相の3年にわたるデフレ根絶キャンペーンは、最も顕著な成果が円安と株高だった。

 2月12日、荒れる市場が、アベノミクスに最も厳しいストレステストを仕掛けている。安倍晋三首相(写真)の3年にわたるデフレ根絶キャンペーンは、最も顕著な成果が円安と株高だった。都内で1月28日撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

しかし、世界的な市場下落、加えて日銀のサプライズではあったが、効果がみられないマイナス金利導入で、逆の状況になった。

最近まで、市場心理は、アベノミクスの最も効果的な武器だった。円相場下落で、日銀は輸出拡大に寄与し、さらには賃上げの動きにもつながった。こうした中、政策責任者らは、株高が、リスクをとることに慎重な日本の投資家をより大胆にすることを期待した。

しかしいまや、こうした武器が直面する状況は様変わりした。世界的な質への逃避の動きで、円が上昇、株は下落。資金フローの変化を狙った日銀のマイナス金利導入も裏目に出た。マイナス金利が発表されて2週間で、円の対ドル相場は7%上昇、東京株式市場の日経平均は15%以上下げた。

もし投資家が、借り入れコストがマイナスということを恐れているならば、過剰反応というものだ。日銀が新たに打ち出した政策は、銀行が中銀に大規模な準備金を置いておくための負担から守る設計になっている。野村の試算では、マイナス金利が大半の銀行の利益に及ぼす打撃は1─3%程度。にもかかわらず、三菱UFJフィナンシャル・グループ8306.T株は20%を超す下落率となっている。

投資家は、自分たちが日銀のデフレと戦うための武器の限界を見てしまった、と考えている、というのが、より適切な説明と言える。日銀は、金利をさらに下げたり、債券買い入れ規模を現行の年80兆円(7140億ドル)からさらに拡大することも可能だ。しかし、市場へのインパクトという点で効果は薄らいだようにみえる。

最近は、安倍政権が財政支出拡大や労働市場改革で進展を図れないことを象徴する失点もみられる。夏の参院選を前に、安倍首相は後退している場合ではない。市場混乱は、安倍首相の経済政策全体を揺るがすリスクをはらんでいる。

●背景となるニュース

・円相場、日本が祝日の11日に海外市場で1ドル=110円台に突入。

・麻生太郎財務相、12日の衆院財務金融委員会で、為替市場の動向を注視し、適切に対応していくとの見解示す。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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